第11話 川に水汲みに。
「喉が渇かないかい? 近くに綺麗な川があるんだよ!」
食事を終えるとハイテンションでそう言い出したカワセミに連れられて、旅人たちは近くにあるという川を見に行く事になった。
森の木陰を歩く分には涼しいが、一歩日向に出ると強い日差しが肌を照りつけて痛いほどの快晴だった。
「今日は絶好の水浴び日和だね!」
上機嫌のカワセミは鼻歌を口ずさみながら軽やかに先を行く。
初めて会った時はなんだかちょっと近寄り難い感じの人だったけど段々砕けたキャラになってきたなあと旅人は思う。
昨日毟ってしまった青い羽のマントは今は丈の短いチャイナドレスのような形状をしていて涼しげだった。
「カワセミさんは水浴びが大好きなのです」
「へぇ……」
まあそうなんだろうなと旅人は思う。
殺生厳禁と言ってたけど魚を採ったりはしないのだろうか、などとぼんやり考えながらミノスケと共にカワセミの後を着いていく。
しばらく進んで行くといつしか森は途切れ、白くて丸っこい岩と呼んだ方がいいような大きな石ばかりが広範囲に転がっている場所に出た。
見渡す限り石だらけで旅人はまるで石の砂漠のようだと感じた。
事実太陽の熱を反射させる石の大地からはゆらゆらと陽炎がゆらめき立って遠方の景色を歪めていた。
歪む視界の20メートルほど先には前を進んでいたカワセミの姿があった。
平べったい石の上に立ち、腕を組んだ姿勢で青い髪を風になびかせている。
「ごらんよ。美しいとは思わないかい?」
やっとの思いでそこまでたどり着いた旅人が膝に手をついて荒い息を整えているとカワセミがそう声をかけてきた。
旅人の首筋からぽたりと石の上に落ちた汗は一瞬で蒸発しているというのに実に涼しげな表情だった。
隣を見れば一緒に歩いてきたミノスケも汗一つかいていない。
ここの人たちはずいぶんと暑さに強いんだなと旅人は思いながらカワセミの視線の先を追う。
旅人たちの立っている平べったい石の先は緩やかな下り坂になっておりキラキラと日差しを受けて輝く水面へと繋がっていた。
「これ、川なのか……?」
旅人は誰にともなく呟く。
見渡す限りの広大な水面の先には水平線が広がっており、そこから入道雲がもくもくと大きな手を伸ばすように立ち昇ってきている。
カワセミは答える事なくそのまま走り出すと大きく飛翔して頭から垂直に水の中へと飛び込んでいった。
「これって川なの?」
旅人は改めて隣にいたミノスケに問いかける。
「はいです! お水さん飲み放題なのです!」
ミノスケはそう言って旅人の手を取ると水面に向かって駆け出した。
半ば引きずられるようにして水の中へと飛び込まされた旅人は水がしょっぱくなかった事から改めて、これって本当に川なんだと水平線を見つめた。




