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七夜 

作者: 翡翠 白亞

はじめまして、翡翠ヒスイ 白亞ハクアです。

この小説を開いてくださり、とてもとても感謝しております。

ありがとうございます!

夢で女性に惚れたら貴方はどうする?

もし、その女性が現実にいたら

どれほど幸福だろうか・・・



―七夜―



ジメジメする7月の夜。

ただの学生である以上何もない少年[能美亞(のみあ) 有羽(ありは)]は夢を見た。そして、夢の中で目が覚めた。

夢の中で目を覚ますというのは、とても現実のように生々しかった。


でも、それは、ただの夢。


夢の中は、半月よりやや満月よりの夜だった。

綺麗な空と月の下、綺麗な黒髪をわずかな月明かりの中、照らしながら風に揺らめく。そして、黒のようなドレスも同じ風に揺られる。顔は見えないが体のラインが月明かりでわずかに分かる。 

女性の体・顔だと。 その女性が、なんとも美しい。



―俺は・・・


夢の中で、その女性に惚れた。

現実にその女性がいたらどれだけ幸福だろうか。


俺はそう思った。


そう思っていると、その女性がこちらを見ないで美しい声で言った。


「坊や・・・夢を強く思ってはなりません。

そして、夢で幸せに思ってはなりません。」


女性の言った言葉の意味は分からなかった。


その直後。


夢で目覚めた能美亞は、夢で眠りについた。 いや・・・意識を現実へとその女性によって戻せれた。


そして、現実という、人が生きる世界のほんのちっぽけな自分の部屋で目を覚ました。



今日は、7月6日。

ジメジメするようなしないようなぱっとしない7月の日中の外。 校内や建物の中は人の活気で暑い。黙っているとジメジメしてうっとおしく、授業は一段と静かであってさわがしくだるい様子が見られた。



時は進み、放課後。

学校は北側。南向きの正門には、帰宅する生徒であふれていた。

能美亞も、ほかの生徒と混ざり校門を出た。


「少年・・・」


すると、どこからか女性の優しくも淡い声が聞こえた。

そして、声は近づいてくる。能美亞は見えぬ声に学校の正門からまっすぐ。南に。声から逃げる。周りの景色が見えないほど、がむしゃらに逃げた。



「追いついた」



女性の声が響く。 能美亞が気付くとそこは、暗い路地裏の行き止まり。

【ああ、俺・・・知らないうちにここに・・・】と息を切らしながら思いつつ、女性を見上げる。女性はスラっとしていて、黒いストレートロングの髪。 黒い服をまとっていた。 それは、いつしかの女性そのものだった。 そう、美しかった。 そして、女性はスーと息を吸いはあと吐くとこう言った。


「少年。 えらいわね」


学校からここまで、車で10分の所をダッシュしてきたのにもかかわらず一回の深呼吸で落ち着く。 さらには、のんきなことまで言った。

「な・・・なんだ」

「少年。 夢を見ましたか?」

「夢は誰でも見るだろう」

その答えに女性は少し笑い言う。

「まあそうでしょう。

そういうって事は、図星なのね・・・。 はあ、困ったわね」

とやれやれそうに腕を組む女性。 

「何がだ?」

「いつか分かるわ。 それまではお互いの名前も秘密にしていましょう」

女性は能美亞に背を向け、顔だけこっち向けて去り言葉を言った。

「夢の中で『おやすみ』が出来なくなったら[今宵の織姫よ、我が守護に]と言いなさい。 そして、七の夜に・・・いい夢を・・・」

それだけ言うと女性は静かな足取りで去っていった。 能美亞はただその背中を見ているだけだった。そしてつぶやいた。

「変な女・・・。 だけど、夢の女性と似ている」

その場にそれだけ言い残すと、能美亞もこの場を去っていく。



♢7月7日


能美亞は、昨晩、いつも見ている夢を珍しく見なかった。いつも見ている夢こそが幸福であった能美亞に対して、それはストレスであった。

軽く苛立ちながら学校に行き、一時間目・・・二時間目・・・と平穏に授業は過ぎていく。


そして、昼休み。

校内にある中庭の木陰で、能美亞は昼寝をしてしまった。



そして、夢を見た・・・というよりも[堕ちた]に近かった。

そして、夢の中も昼だった。



見慣れた女性は、半月より満月よりだった夜と同じ場所で空を眺めている。 少し、能美亞は安心した。  そして、女性は能美亞に気付いた。

「また・・・来たのね」

そう女性は、能美亞に振り向かずに言った。

「ここは、私一人の世界。 何故、貴方がいる」

女性は能美亞の事を前は『坊や』と呼んでいたが『貴方』変えたらしい。気まぐれか憂鬱か分からないが。 ていうか、何故この世界にいるかも能美亞自身も分からない。 返答に戸惑ったのを気付いて女性は振り向かず言った。

「そう、無意識ね。 いいわ。

この世界はとある魔術師の過去。 その魔術師は私自身。 今、言っても分からないと思いますが、七夜になれば分かります。 それまで・・・おやすみ坊や」

能美亞は『坊や』と優しさと冷たさと最後のような感じが交わったような声で言われた後、立ちくらみがした。




パチン・・・


「あ・・・」

能美亞は現実で目を覚ました。

夢の世界では、ほんの10分程度だったのに、現実では放課後になっていた。 

「ありえない・・・」

もう教室に戻ることもないと中庭を出て裏門へと向かい、家と学校の真ん中あたりにある[笹夜神社(さよじんじゃ)]へ寄ることにした。




*笹夜神社


竹林の中に鳥居が立ち、幻想的だと有名な笹夜の道を歩んでいくと神社はあった。


「ようこそきましたね。 能美亞さん」

「ああ」


竹林を抜けると、広々した敷地が現れた。

境内では竹箒を持って夕方の掃除をしている黒髪が綺麗な巫女さんが一人いたのだが能美亞とは付き合いが長く仲がいい。

「お茶でも飲みますか?」

「いやいい。 ありがとう、(しろ)

「はい」

軽く挨拶を交わした。

「今宵は七夕ですから、この大きな笹に願いをかけに参拝客様はきていらしれたのよ。

 その笹の葉を落ちてきますから、夜に備え掃除していたのです。 夜は、この神社伝統の[願いかけ]をするのです。 って・・・うかないお顔をなさいますね・・・どうしましたか?」

「いいやなんでもない。 ただ、君が【今日は珍しくよくしゃべるんだな】と思って」

「そうですか・・・。 あ・・・願い、かけていきませんか?」

「そうだな。 そうさせていただく」

「少々お待ちください」

白はその場を離れて、お守りなど売っている売店に走っていき、さっさと戻ってきて、能美亞に短冊とペンと下敷きを渡してくれる。 

「はい、どうぞ。 書き終わりましたら、僕に渡してくださいまし。 あ、ちゃんと本名を書くのですよ」

「ありがとう。 すぐに書く」

と言い、手を机に下敷きを敷いてサラサラと書き始めると巫女さんが「行事用の机、直しちゃったのですよ。 ごめんなさい」と言うと能美亞は「いいよ」と答えると「ありがとうございます」と礼をひとつ。 その間に能美亞は書き終わり、巫女さんに「はい」と渡した。 巫女さんは素早く、西向きの方に大量に飾ってある竹に移動して笹の葉に能美亞のたんざくを飾り、またもやささっと戻ってくる。

「ありがとうな。 今日はもう帰るよ」

「そうですか。 では、良い七夕を。 そして、願いが届きますように・・・」

と巫女さんは背を向けた能美亞に手を合わし、一礼をして掃除を再開する。


そしてそのまま、自宅である家へ歩いていく。

そこからさほど遠くないのですぐに辿り着いた。

誰もいないのに「ただいま」と無駄に大きな門を開き家へ入る。 そして、門から南向きにある、はなれに足を運ばせる。 そして、能美亞はそこに入り、電気を着けてPCをつけてネットを開き、調べものをする。昼間に見た夢の中の女性が言っていた[魔術師]と言う単語だった。

能美亞はなんなのか分からないので、調べてみるだけ調べてみようということで調べていた。

「あ・・・」

乃実亞は[魔術協会]と言うものを見つけた。 そこにクリックすると、辞典のようなページだったがこう記されていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魔術師


不可能を可能にする絶対者


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


たった一言であった。 これがどういうことか能美亞には察しがついたその時だった・・・


「それは、偽ね・・・魔術と言うのはね・・・」


能美亞が7/6に出会った女性がいた。 


「なんで、ここにいる?」


能美亞は冷や汗をかいた。 




「さあ、なんででしょう?」


「夢だ!」


能美亞は女性がいることを構わずその場で眠った。


そして、また夢を見た・・・ではなく、夢に堕ちた。

それは、寝落ちするような感覚だった。


しかし、今日は夢に堕ちる寸前で聞こえた。



「堕ちなさい。 永遠に・・・」


と言う女性の声が・・・。





目を覚ました。

景色は満月の夜だった。そこに、ドレスの女性はいる。 そして、こちらに振り向かず言う。

「また、来たのね」

その言葉に殺気を感じた。

「今宵は7月7日。 そうね・・・[七夜]と言うべきかしら」

能美亞の背筋が凍った。

女性の、あまりに強い殺気に・・・

そして女性は言う。

両手を高らかに開いて。


「貴方はもう、この夢から出られない。

永遠に、夢に堕ちたままです・・・」


能美亞の体は一瞬にして全身が凍った。

「どうしたら・・・現実に戻れる?」

女性はフフと笑った。

「『出られない』と言っています」

「・・・」

「怖いの?今更。

夢を思いすぎて、ここに堕ちた。 そしてここに毎日のように堕ちた。

それは自分の願いでしょう?私に会うための。

最終的に・・・7月7日。今日は私が願いをかなえるために強制的に夢を与えて堕して差し上げました。フフフ・・・」

女性は嘲笑った。能美亞は現実から逃げようとする。

「嘘だ・・・絶対嘘だ・・・」

女性は能美亞に刃を挿す様に言う。

「嘘じゃありませんよ」

能美亞は女性の発言に頭が痛い。


もう一生このままなんだ。


そう、諦めかけた時。


いつしか出会った女性の言葉を思い出した。


「〔今宵の織姫よ守護に〕」



能美亞は半信半疑に叫んでみた。

もし、助かるならと信じて・・・。



「何を言ったかは知りませんけどね、とにかく出られませんよ」



その時だった。


「そこにいる少年。 魔術とは神秘が創り出した奇跡であって殺人道具。

つまりは、[奇跡のようであって本来は神秘。 その神秘から生まれた殺人道具]

そして・・・その殺人道具を扱う者こそが魔術師。 

そこの女性がこれから言うのは嘘ですよ・・・」


ドレスの女性の話に割り込んだ冷たい声。

能美亞は聞き覚えのある、女性の冷たい声の方に向いた。

「魔術?殺人?なんのことか分からない・・・けど、貴方は・・・」

いつしか出会った女性は、能美亞の言い分に無視した。



「少年は僕の後ろに。

この世界は夢。 しかも殺人的に作られた夢。

貴方・・・いえ、私! 何をしているのですか?」


やってきた女性は、ドレスの女性に人差し指をビシっと指す。

能美亞は、やってきた女性の後ろに言われるがまま隠れるように下がるが、話がなんのことかさっぱり分かんない。 けど、あやふやする能美亞に無視してドレスの女性はやってきた女性と語り合う。


「私は私と言う貴方の夢を叶えようとしている」

「[恋をして、我が物にして永遠に鏡の中に閉じ込めて永遠に愛し合う]っていう夢か?」

「ええ」

「フッ・・・。 そのときは未熟だったからそう思ったのだろう。 今の生活を始めて気付いたさ。 [恋愛は、永遠に結ばれる。 いずれかの運命が来ても愛は永久]ってことに。 だからどうでもいい。 そんな、儚い、夢・・・」

ドレスの女性は笑いながら言う。

「フフ・・・愚かな」

ドレスの女性は軽く笑い、何もないところから石を出現させた。

「〔我が契約の神。 オーディンに従い、我と共に契約した者よ・・・〕」

「な!」

やってきた女性は驚き、それまた何もない場所から石を同じように出現させて言う。

「〔我に従えし、名誉あるオーディンに従う魔・・・〕」

そして、女性と女性。 声が重なる。

「〔勝利を栄光に(ティール)〕!」

「〔第25ルーン、消失破壊(ウィアド)〕!]

ドレスの女性には、赤い血が滴るような赤い色の大きな魔方陣がバックに一つ。

やってきた女性には、星のようにポツポツと赤く小さな魔方陣が回りに数個。

そして、やってきた女性が言う。

「これが魔術師。 戦闘および殺人目的に使うものこそが本物。

ちなみに魔術師の目的はそれぞれだ。

そして私という僕。  僕は現在に残る魔術師の[古風 (ふるかぜ)]。

ルーンと呼ばれる25の文字が石に書かれた魔術と我が魔術・・・簡単に言えば自分で生み出したオリジナル魔術とルーンの術を扱います。

そして、そこにいるドレス女も僕ですが過去の僕です」

と言うと、現代の魔術師の古風は呪文を唱える。

「〔破壊せよ〕!」

ドンドンドン!

古風のかかげた石から小さな魔方陣から銃弾のようなものが飛んでくる。 その銃弾は、ぶち当たった所を破壊して、その物を消失させた。 過去の古風は銃弾をよけた。

「勝利を約束されたルーンには敵わなくてよ。

ティール・ティール(勝利を歌え)---ッ!」

魔方陣から矢がジェット機のようにして飛ぶ。 それを、能美亞はただ呆然と見るだけだ。

現実にいる古風は、飛んでくる矢を四角い盾のような魔方陣を一瞬で出して魔術戦をしながら平気口で能美亞にこう語る。

「そこの少年。 なぜ、現実にいるはずの僕がここにいるか教えてあげよう。

7月6日。 つまり、7月7日(七夜)になるまえに少年と出会い、鍵を教えただろう。[今宵の織姫よ守護に]ってやつ。  そして、この今宵に少年がその言葉を言った。 だから僕がいる。 それは、僕を呼ぶ召喚言葉なんだ。 少年は魔術は使えないが助けを呼ぶことはできる。 つまりな簡単に言えば[叫び]なんだ。 [叫ぶだけのただの鍵]だ。 

そして、少年が夢に堕ち、夢で覚めてしまった最大の理由は・・・[本に選ばれし者]。・・・・って〔~~~~~〕!」

話の途中で、ドレスの古風から大きな攻撃がきたので話を切り、現代の古風邪は呪文を素早くいい、小さな魔方陣から白い羽根が現れ、ドレスの古風に襲い掛かり刺さる。

「クッ・・・ やっぱり幻想の姿では・・・」

とぼやくドレスの古風。 能美亞は現代の魔術師の古風に問おうとしたとき、現代の魔術師の古風邪から「分かっている」と言われ語られる。

「この夢は僕が今の自宅にある過去の僕自身を描いた魔導書が引き起こしたもの。 日記みたいなものだけど違うの。本が勝手にカメラとなり僕を写し記憶するの。 その本は中が生きているの。 危険だから封印してのだけど・・・本の中身・・・過去の僕が勝手に暴走したってことね。 本に記憶されていた[夢を叶える]って言うのは何年間の時を過ごし中身が[叶えてやる]と思ったのでしょうね。 それが暴走してこういう結果に。 本に記憶された少年像がたまたま君で少年を夢に引き込み、一目ぼれさせた。それで過去の僕は恋をかなえようとした。そこにいる過去の僕は、その本に写された僕でこの夢は当時の世界。 当時は僕は・・・一人で屋敷で住んでいた」

と最後は寂しそうに語るが、現在の古風はすぐに強気に戻って・・・


「最後よ。

崩壊された堕天使の儚き叫びよ!」


その瞬間。

赤かった魔方陣が、空をそのまま映した淡い蒼になって魔方陣からは無数の白い羽のような物の先に弾丸のような物が、魔方陣からドレスの古風に向かって勢いよく飛んでくる。


「ぐあああああああああああああああああッ!」


呪文を唱えるより早くドレスの古風にその弾丸が全身に突き刺さる。苦痛を叫んでその場に倒れる。  現代の古風は、ドレスの古風に駆け寄り、冷たく言う。

「永遠に消えればいい」

ドレスの古風はすぐさま粉のようになって音も無く消えた。

そして、その場から本が現れた。

現代の古風は、その場にしゃがみ込みこんで手を添えた。

「哀しき者の剣」

そう呟くと古風の周りに浮かんでいる小さな魔方陣が一つになり剣が現れる。 そして、それを古風が握り本に本に刺す。 本から叫び声のような音が響き、そして、消えた。 消えたのを見届け、剣を消した。


そして古風は後ろでずっと呆然としていた能美亞に振り向いた。

「さて、帰ろうか」

古風は空に指を差し「〔空の扉よ開け〕」と命令すると、ビシっと言う音とともに空が割れ、元の世界。能美亞の部屋に戻された。

「あ・・・戻った」

能美亞は声を取り戻したかのように声を発した。

「やっと喋ったね」

と古風はやれやれそうに言う。

「ありがとう!」

「いいえ。僕も過去と決着つけてよかったよ。あの本、どうにかしようと思ってたからね。

で、話は聞いていた?」

「ああ。 なんとなくだが理解した」

「そうか・・・。いい子だ」

古風は能美亞に微笑み、ふうとため息のような深呼吸をもらす。

「あの本を書いたのちょうど7年前の7月7日。 だからこの日に見る夢を[七夜]と呼んでいたのよ。 それと、謝るわ。

力を持たぬ貴方を巻き込んで・・・ごめんなさい。じゃあもう姿を消すね」

古風はそういい、部屋を出て行こうとする。どこか寂しそうに。 



「待って!」


外へ出て行った白を能美亞は呼び止めた。 古風は再び能美亞に振り返り、足を止める。 

「なあに?」

振り返るその行動自体が美しかった。 


【やばい・・・これ、俺本気で惚れた】


能美亞は確信した。



「なあに?」

「そういや、名を言ってなかったですね」

「そうね~。まあ、もうお別れだしいいじゃないかな」

「だめです!名前は大事だ。 俺は[能美亞 有羽]って言う」

「有羽君か・・・。

誇りを持て、そして、僕はこの名を覚えておく。

だから・・・さようなら」

と、再び能美亞にさみしそうな顔で背を向けようとしたとき、能美亞は古風の腕をにぎる。

「あ・・・何でしょう?」

「古風!」

古風を振り返らせた。

「過去も現代もとても綺麗だ。 戦っている姿も全て・・・」

「はあ…何を?」

「俺は・・・古風に心を奪われたんだ。 はじめてあった時は驚きと恐怖があったが、綺麗な姿に。 そして過去も今も綺麗で・・・だから、好きなんだ!」

古風は能美亞の頭をポンポンと優しく叩きながら冷たい声で言う。

「僕は、魔術師。 だから、一人でいいんだ」

強く能美亞を振り払うと背を向ける。 背を向ける一瞬、涙が見えた。

それに対し能美亞は、古風を背後から抱きしめた。

「いいさ、それでも。 好きなのは古風だから。魔術師でもなんでもいいんだ」


「有羽・・・僕・・・そんなの言われたのはじめてだ。

そこまで神経になられてしまったら僕も惚れるじゃないか。

・・・こんな、穢れた者ですが・・・よろしくおねがいします」


古風は壊れそうなか細い声で能美亞の腕の中で応えた。


「綺麗だよ、古風。大丈夫だ」


「有羽・・・。 ん・・・」


と二人は、七夕の夜空の下、二人は唇と唇を重ねた。



天の川に永遠の愛を願うように深く、深く、キスを交わした。

そして、何もかも忘れてこれからを生きようと思う古風。



今宵、七夜の恋に・・・堕ちて・・・二人は永遠を誓う。

そしてはじまる[これから]の事。                              

                    

                   ―終―


最後まで読んでいただきありがとうございます。

そして、お疲れ様でした。

この小説を開いてくれた一人一人に感謝いたします。 翡翠 白亞


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