第一話【初めまして】
ここは、緑と水が溢れる泉町と言われる街。
この泉町は、他の街とは違う『特別な学校』が存在する。
何が特別なのかって?
それは――お金持ち学校は仮初めで、真実は、物語の生まれ変わりである生徒が通っている……ということである。
そして、私は、ひょんな事からこの学校に通うことになった。
勿論、お金持ちでも、生まれ変わりでもない。
一般人である私が、学校に馴染めるのか……それはわからない。
これは、私のそんな学校生活の活動記録である。
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(う、うぅ……緊張するよぉ……)
教室の前で、私はカチコチになって固まっていた。
今から、この教室に入り人前で自己紹介すると考えるだけで胃がキリキリと痛くなっていた。
私は、掌に『人』という文字を三回書いて飲み込む。
「効かない!効いてる感じしないよ、おまじない!!」
私は頭を押さえ「うぁぁぁ!」と叫ぶと、頭の中で自己紹介の失敗例をシミュレーションした。
『は、初めましゅてっ!!』
(はぁー!!噛んじゃったー!!)
噛んだ事に、教室にいる生徒全員が笑い、私は俯きながら赤面する――というのを想像して、私は既にかなり落ち込んいた。
「どうしよう……初めから失敗したら……」
(きっと、それ以降、笑われ者になっちゃう……)
スカートの裾をギュッと掴む。
考え過ぎかもしれないと周りは言うだろうが、何の力も無く、ただただ平凡な私がこの学校でやっていくには、初めの挨拶からの印象が大事なのだ。
すると、先生のホームルームが終わり、これから担任なる先生が私の名前を呼んだ。
「皆、最後に、今日は新しい仲間を紹介するわねぇ~。雨宮さん、入って〜」
(き、きた!)
私は意を決して教室の扉を開く。
すると、クラス全員の視線が一気に私に集まった。
私はそれがいたたまれなく、俯き気味に教台へと歩いていた。
(は、はう……帰りたい……)
「雨宮さん、自己紹介をお願いね~」
「は、はいっ!!え、ええと……ええと……」
既に頭の中で予行演習は何度もしたのに、いざ、クラスの皆の前に立つと心臓は早鐘し、目がかなり泳ぐ。
頭の中の文字は、もうすっかり白紙になっていた。
(ど、どうしよう?!昨日、あんなに考えて来たのに、もう忘れた!!)
「ええと……ええとぉ~」
「あらあら、緊張してるのねぇ~」
側に立っている先生が、のんびりしながら言うとにこやかに微笑んだ。
すると、先生は「ふぁ〜ぁ」と小さく欠伸をすると、近くにあった椅子に座り教卓に突っ伏してしまった。
「そんなに緊張してたら、こっちまで緊張が移っちゃったわぁ~……ふぁ~、緊張して眠くなってきちゃったぁ~………すー……すー……」
そう言うと、先生は一瞬で眠りに落ちてしまった。
私は唖然となりながら、寝ている先生を見る。
(えー……)
まさか学校で、しかも先生が生徒の目の前で堂々と眠るとは思わなかった。
すると、目の前にいた生徒が「まただよ~」と、言った。
「先生~、起きてくださいよ」
「無駄でしょ。先生、一度寝たらあまり起きないもん」
「あ~……確かに」
教室の中の生徒は、私の事は無視して会話していた。
取り残された私の緊張は既に解け、逆に、この後どうすればいいのかわからず内心困っていた。
そして、この状況に放心していた。
「……」
(えっと……あれ?私の事はスルー??)
隣でスヤスヤと眠っている先生を見て、入学早々なんだかツイていない気分になり、私はガクリとその場で肩を落としたのだった。
「すー……すー…むにゃむにゃ……えへへ〜」
END




