四章 死霊と特別
臨死体験があり、その後眠ってしまっていたため、その時は既に放課後だった。
「天照。その…死霊の溜まり場って何なんだ?」
家への帰路についた僕は天照に尋ねる。実は臨死体験のときのことがきになっていた。
「んー……平たく言えば、選択で"死ぬ"ことを選んだ人の霊。それが溜まっている場所かな」
「成仏とか…そういうの出来ないのか?」
天照が残忍な言葉を紡ぐ。
「死ぬことを選んだ人は、自殺した人と一緒くたにされるんだよ。自殺する魂はロクなものがいないから、天国に入れられないのさ」
あまりの苦しみに死ぬことを選択、自殺する人は、天国で悪さをする。天使の虐殺、金品の窃盗、神への反逆。地上での憂さ晴らしを天界でしようとするらしい。
しかし、それはあくまで無意識下の出来事であって、意思とは関係なく起こるらしいが。
「そうなのか…」
天照によれば、死霊の状態でも意識はあるらしい。つまり、死霊の溜まり場では何十年、
何百年、何千年。そんな長い時間を何もせず過ごして行くことになるという。
「でも、僕と天照だけが例外というわけではないんだろ?」
「というと?」
「こういう主従関係は他の人とも成り立っているんだろ?」
「まぁね。年間で十数件あるよ」
「そういう人も死ぬことを選ぶ訳で」
「そうだね」
「じゃあ何で死霊の溜まり場に行くことが分かってて死ぬことを選ぶんだ?」
それは最もらしい質問だと思う。このまま生きて行って老衰などで死んで成仏したほうが何倍もいい生活ができる。なのに、何故苦行の死ぬ選択をするのだろうか。
「神様は、死霊の溜まり場の事を言ってはいけないからだよ」
「え?さっきも今も言ってるんだけど」
「あ、これは言ってはいけないことだったかな…」
天照の口は異常に軽いということは理解できた。
「え?どういうことなんだ?」
「まぁ…いっか!」
本当に天照が神様やってていいのか不安になってくる。プライバシーが無いという事も本気で言ってそうだ。
「よく聞いてね?」
「お、おう」
秘密らしき事を天照は話し始める。
「君は、特別な人間なんだよ。智樹君」
「と、特別…?」
よく分からない話がまた出てくる。
「僕の何処が特別なんだ?」
「悪神に取り憑かれやすいっていうことだよ。なかなか居ないんだけどね。たまに産まれてきたり、発生したりする病気のようなものだよ。」
「び、病気…?」
人間誰でも病気という言葉には弱いだろう。その反応だ。
「というか、悪神…て?」
「…あぁもう!質問が多いよ!後でゆっくりはなしてよ!」
と、突然面倒になったのか、スタスタと歩いて行ってしまった。流石、自己中の神様である。まぁ、後で聞くこととしよう。
そして、そんな僕に危機が迫っていることには、僕も天照も気付いてはいなかった。