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二章 禁忌と後悔

教室によく見知った人物がいた。

ただし、居るはずの無い人物で。


その光景を見たら誰もが口にするだろう。

「お前、何で居るの?」と。


そして普通ならこう答えるはず。

「用事があった」と。


しかし奴、天照はこう答えた。


「この中学校に通うことにしたのさ」と。


お前の見た目で中学生は無理だろと突っ込んでしまうのもおかしくないと僕は思いたい。


◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎


そんな天照としっかり話をすべく、休み時間に屋上に呼び出した。

「何で半分キレてるのさ?」

「いや…あのさぁ……」

自分がこの学校通うのが普通だろうという不思議顔で逆に問われるとは思ってもみなかった。

「何で来てんの?帰ったはずだよね?」

当然の如く質問をする。

「僕は君を監視する必要があるんだ。勿論、学校も含めてね。だから、ついでに学校に通ってみたかったから道長君に頼んだのさ」

「はい、そこ。私的理由がはいってる」

「選択!"死ぬ"か"僕を学校に通わせる"か」

「お前神様だよなぁ!」

何でこんな自由人が神様やってられるのか天界の仕組みが分からない。私的理由で『人生選択』をやらせていいのか。言うなれば、職権乱用だ。

「困ると人生選択やらせんのやめろよ…」

「やめられない、止まらない!」

そんな天照の自由さに呆れているとき、ふと気づく。


"私的理由の人生選択"なんだから、"死ぬ"を選んだところで死ぬことはないんじゃないか…と。


そして閃いたところで"それ"を実行に移す。

「さっきの選択答えてやるぜ。死ぬの方!」

暗転。


◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎


何故か暗転した視界を元に戻す。

周りはさっきと同じ場所。

そして、自分の身体に何も起こってないか確かめて自分の推測が正しかったことに喜びを感じた。

もはや殺の香りを漂わせている天照を見るまでは。

「…天照…どうしたん…だ……?」

流石にそんな雰囲気だと相手が天照でもタジタジになる。そんな様子の僕には全く興味のない素振りを見せる。何か言うことを躊躇っているような感じ。

そして天照は重い口を開いた。


「貴方は、死んでしまいました」


はい。

「………はい?」

一瞬判断が遅れる。

死んでしまった?僕が?馬鹿言え。僕はここに居るじゃないか。おかしい。僕が死んだのなら、この僕は誰なんだ。

「おい、天照。ヘビージョークは良くないぜ…だからその雰囲気をやめ」


「貴方はこれから"死霊の溜まり場"に行くことになります。短い間でしたが、ありがとうございました」


僕の言葉を遮って、告げる無機質な天照の死亡宣告。それは、真実を物語っているようで、もはや僕に助かりようはないと言っているようで。もはや。

もはや信じることしか出来ない。


つまり僕は選択に従い"死んだ"のだ。


何が閃いたんだ。閃きで何故命を捨てることに…。

次々と後悔が襲ってくる。悔やんでも悔やみきれない。そして。

天照は、最後にこう告げた。


「さようなら」


その声に反応するようにバラバラと音を立てながら、先ほどまであった景色が文字通り崩れてゆく。そして、今まであった床。地面までなくなって唯一残った引力に引っ張られ、自由落下運動を始める。

最早、助かる術はない。引力には逆らう事は出来ず死霊の溜まり場に一直線なのだろう。

「やめてくれ…やめてくれよ。おい。聞いてるのかおい。おい‼︎」

届かない叫びだと知っても尚も叫び続ける。

「助けてくれ‼︎‼︎何でもするから死ぬのだけはぁああああああああああ‼︎‼︎」

助かる術は無いのに、僕は本能から助けを求めた。なんとも無様な叫び。


「分かった‼︎‼︎『取り消してくれ』‼︎お前の願いくらい聞いてやるから‼︎」


そして。そう叫んだとき。

世界は再び暗転する。




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