一章 校長と天照
学校への登校中、物珍しさから声をかけてくる人が多かった。
……ただし、天照に。
凄く居づらい雰囲気がずっと続いていたた
め、
「先に行っていいか?」
とボソっと聞くと、
「……主従関係」
とボソっと返ってきた。
要約すると、先に行くな。場所が分からな
い。ということなのだろう。
(人の事考えろよ……)
(神の事考えなよ……)
まさに一色触発の状況。明らかに不機嫌そうな雰囲気を発していると、察したのかそそくさと周りの人がよけてくれた。
(嫌われたじゃねーかこの野郎!)
(僕の責任なのかい!?)
これはこれで何か寂しい。自分に人が寄ってきていた訳ではないが嫌われたような感じがしてならない。
こんな事があった今朝の登校時間。
そして校長室の前に立ってビクビクしている今。
「用事って校長にかよ……!」
「何でビクビクしてるのさ?」
この私立中学校の校長は異常に怖い。まず強面なのだが、武道をやってたり、校則に反した行為をした者には容赦がない……と有名である(怒鳴り声が学校中に鳴り響くということが以前あったため有力)。
そんな様子の僕を見て「んー」と天照が唸り出す。
何を言い出すのかと思っていると、
「選択!"死ぬ"か"校長室に入る"か!」
「どっちもこの場合同義語だよ!というか選択肢を私的理由で使うな!」
全く、自己中な神様である。
「あーもー分かった!分かったよ!入ればいいんだろ!」
「流石は智樹!」
何もかもが天照の思いどおりに進んでいるような気がしてならない。結局、"死地"へ飛び込むことになった。
ごくり…と生唾を飲む。そして覚悟を決めて
「失礼します!!」
と、校長室の扉を開けた。重い扉を開け放つと、校長は椅子に座っておりギロリと音がなりそうな目の動きでこちらを見た。
「何だね……」
ドスの効いた声。
その一言で僕の腰はぬけた。
そしてそんな僕の横をずんずんと歩いてゆく"勇者"ならぬ天照。
(ちょっと待て!礼儀を!)
声にならない。おい僕よ……ビビりすぎだぜ……?
そして、天照はゆっくり口を開き…いや走馬灯のようなものでゆっくり見えただけかもしれない。そして、天照は言い放つ。
「久しぶりだね。菅原道真君」
暫くの沈黙。最初に口を開いたのは何故か僕だった。
「は?」
図らずも口から出た言葉。それは呆気にとられて出たものだった。
「部外者のいるところでその話の持ち出しは禁止ですよ。天照様」
はぁ…とため息をつく校長……ならぬ学問の神様。
「部外者じゃあないよ。僕の従者さ。智樹君は人生お先真っ暗だからね。助けないと」
「…ちょ、ちょっと待って…?校長先生が神様?いやいや、下界もこんな近くに…」
僕の脳は容量は虫ケラの如く小さいらしい。混乱状態に陥ってしまう。
「この人、菅原道真君っていうんだよ。まぁ言うところの学問の神様さ」
「……何でこうも神様って下界の人に対してこれが普通みたいな話し方するんだよ…」
もはや呆れ顏しか出来ない。
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暫く経ち、気が落ち着いた状態で話を進め
る。
「それで…校長先生は神様…菅原道真様でいいんですよね?」
「あぁそうだ。私は如何にも菅原道真だ」
そんな話をしながら、突拍子もない話だなと思う一方で、僕は何故脳内でショートを起こしていたのかも不思議になっていた。
(ショート起こすほどのことだったかよ…)
妙なショックを受けていたため、その後のやり取りについては覚えていない。というか聴いていなかった。その後、話し終えた僕は天照に半ば強制的に追い出された
僕が校長室から出たあと暫く天照は校長と話していたようだった。
「何を話してたんだ?」
「こっちの話だよ」
天照に隠し事なんて珍しいと思ったとき、
「そういえば主従関係に隠し事は無しって言ってたよな…!」
「何のことやら」
澄まし顔で何の悪ぶれもせず嘘をつく。お前神様だよな…という言葉が出そうだった。
が、天照を神様と認めたくないという意思が働き出なかった。というより、出すことを許さなかった。
「じゃあ僕は授業あるから、気をつけて帰れよ」
話が長引き、知らない間に一時間目が終わってしまっていたので急いで教室に戻る。
「はいはい。気をつけるよ」
そう言って天照は玄関に向かっていった。
そしてその後、何故か教室で天照を見ることになった。
「何でいんの……?」