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第五部・子育て編

合成生物キメラの私が産んだ三つの卵。

時々内側からコツコツと叩くような音が聞こえ始めた。

男の子か、女の子か……落ちつかない私。

「子どもたちの名前考えたの」

と、妻が私に見せたのは名前を書いた紙。

どうやら彼女は性別以上のことを予想している模様だ。

「ポチ、タマ、シロ……」



ある日平凡な成人男性から突然、合成生物キメラに変身し、三つの卵を産んだ私。

一度仕事を辞めて家庭の危機にも瀕したが、上司の好意で何とか職場復帰。

そんな波乱万丈な私に再び人生の転機。

卵が孵化したのだ。

産まれたのは何と、人間の赤ん坊!

「ガッカリね」

なぜか不服そうな妻。



合成生物キメラの私が産んだ卵が孵化した。

産まれたのは意外なことに、ちゃんとした人間の赤ん坊。

可愛い三つ子だ。

よしよし、と赤ん坊をあやす妻は楽しげな表情。

だが時々陰り、こう呟く。

「あなたの産んだ子なのよね。あたし、おっぱいあげれないわ」

私は鳴く。

「ワンギョウッ」



翌日、家に来客が。

「遂に生まれたのか!」

「早く孫の顔を見せて!」

両親の声。妻が玄関で応じ、居間へ通す。そして二人は、子どもたちを見て目を輝かせる。

「まぁミヨコさん、三人もよく産んだわね!」

「可愛い! 二人にそっくりだ!」

妻は言えなかった。

その子らが、私が産んだ卵から孵化したということを。



「子ども産まれたんだって?」

職場の同僚。

私を馬鹿にしたことをまだ根に持ってはいるが、子どもの話は自慢せずにはいられない。

早速三つ子の写真を見せる。

「可愛いじゃんか。皆お前に似て……」

や、やっぱり、似ている……?

「この、Tレックスみたいに小さな手なんか特に」



「子ども産まれたんだって?」

職場の上司。

また何か馬鹿にされるのかと警戒し、写真も見せないことにする。

「なんだ、不服そうだな。折角出産祝い出してやろうかと思ったのに」

……何!? それは話が別。

つい手を出す私。

「ホレ! たんと食わせろよ!」

渡されたのは、猫缶。



合成生物キメラである私の卵から産まれた三つ子。

お腹が空いたと泣くので私は台所でミルクを用意……

と、居間から突然の悲鳴。

何事と驚き見に行くと、妻が子ども達にテレビのリモコンを食べさせようとしている!

慌てて止めさせる私に、妻、

「普通、食べそうでしょ」

普通、食べない!



「ねぇ、名前どうするの」

と妻。そう言えば、まだ子どもたちの名前を決めていなかった。

一番最初に孵化したのは女の子、次が男の子で、三番目は女の子だ。

「ワンギョ(サチコとマサルとエミだな)」

「わかったわ。ポチとタマとシロね」

……なっ……言葉が通じてない……だと……!?



突然長男が行方不明になり、家中駆け回る私。

「見つけたわ!」

妻が何かを捕まえる。

それを見て、私はギョッとした。

何と三毛猫!

ま、まさか長男も変身を……

「だぁ」

と、突然尻尾を掴んだのは……あれ、長男!?

「あら、こっちはただの猫ね。間違えちゃった」

か、勘弁して……!



いつもよりカーペット掃除に熱心な妻。

「子どもたちがハイハイするから。なるべくゴミを取り除かないと」

なるほど。

じゃあ私は台所に行って……

と、振り返った私の背中に突然貼り付く妻のコロコロ。

「こっちのカーペットも綺麗にしないと」

「ワンギョ(なんだって! お前、失礼だろっ!)」

「だって、よく張り付くでしょ、子どもたち」

反論できない。



子どもに絵本を読み聞かせるとき、怖い話は父親が読んであげた方が子どもの脳に良い刺激を与えるとネットで学んだ。

早速読んであげることに。

「ギョギョエェ(昔々ある山奥に、鬼のような形相の老婆が……)」

「「「キャッキャッ♪」」」

「……子どもたち、何だか楽しそうね」



「飲みに行かねぇか」

同僚の誘いを断る私。

「ワンギョ(育児で忙しい)」

「そうか……仕方ねぇ」

意外にあっさり断れた。

翌日、会社で次々妙な声をかけられる。

「おっ、いい毛並みだ」

「艶やかになったね」

そして同僚。

「昨夜トリマー行ったんだろ?」

物言わず同僚を殴る。

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