第四部・アルバイト編
合成生物に変身した私。
サーカス団員だけでは食べていけず、アルバイトを始めた。
それはデパートのヒーローショー。
宇宙ヒーローとして、全身タイツの怪人と戦う。
大勢で押し寄せる卑怯な怪人。私がそれを炎を吐いて一掃すると、子ども達、
「怪人の方が勝っちゃったよママ!」
◇
合成生物に変身した私。
次のバイトは動物園の清掃係。
「熊が逃げたぞ!」
と、突然のスタッフの声。
慌てて周囲を見回すと、突然辺りが真っ暗に。
しまった、熊に覆い被されたか!?
息が出来ないっ――
「頭に袋被せて大人しくさせたぞ」
「……けど変な熊だな、手に箒持ってる」
◇
合成生物に変身した私。
次のバイトはホテルのベルボーイ。
「君のような体格なら、どんな荷物も運べそうだ」
「ワンギョ(任せてください!)」
早速初めての客。小さなトランクを預けられるも、何故か全く持ち上がらず――
ハッ、そうだった。手がTレックスなのを忘れていた!
◇
合成生物に変身した私。
ベルボーイのバイトを始めるも、手がTレックスで客の荷物が運べない。
「荷台を使いなさい」
と、ドアマンの助け船。
早速荷物を乗せて貰い、意気揚々とエレベーターに向かい……ガツン!
と、突然、阻まれる足――
ハッ、そうだった。足が象なのを忘れていた!
◇
合成生物に変身した私。
次のバイトはバーの用心棒。
「熊の如くどっしりした良い体格だ!」
マスターにも称賛され、遂に転職発見と思ったが……。
「開店時間なのに、あいつ遅刻か? 客も来ないし。外見てくる……
って、うわ! 何してんだお前!」
地下の店へ続く階段で体が挟まった私。
◇
合成生物に変身した私。
次は私でも入れる入り口の広いバーでの用心棒に採用。
初日、早速ガラの悪い客が。
入ってくるなり脱いだコートを私に投げてきた。
直ぐ相手に掴みかかるも、
「おいヤメロ! お得意様だ!」
え?
と相手を見れば、恐怖に震えるただの老人。
「……は、剥製が襲ってきた!」
◇
様々なバイトを試すも、合成生物に変身したことで巧くいかない私。
気付ば季節は初冬。
寒空の下の私の元に、ふと懐かしい姿。
「会社、戻ってくるか?」
嘗ての上司。
次の瞬間、私は彼の胸元で泣いていた。
(一方、そのとき上司はこう考えていた。コイツあったけえ、外回りのとき連れて歩いたら、コートいらずだな)