第一部・サラリーマン編
夏休み明けで職場に戻ると、
「誰だお前!?」
同僚が叫んだ。
慌てて社員証を見せる。
「お前……斉藤か?」
コクリと頷く。
無理もない、休み明け前私は、突然頭が猫、体が熊、手がTレックスの化け物に変身してしまったのだから……。
同僚は言う。
「証明写真、撮り直さないとな」
◇
暑いのでスーツを脱ごうとするが、手がTレックスのため、短くてボタンに届かない。
「手伝うよ」
と、同僚が脱がしてくれた。
またスーツをハンガーにかけようとしているときも、
「貸せよ」
嬉しくて、つい猿の尻尾を犬みたいに振ってしまう私。
やはり、持つべき者は仲間だな!
(一方、同僚はこう考えていた。斉藤のやつ、なんかペットみたいで可愛いな)
◇
頭が猫、体が熊、手がTレックスの化け物へ変身した私に、何かと世話してくれる会社の同僚。
「これ食えよ」
と、今日は何やらお菓子をくれた。
「食感がいいんだ」
美味しかったのでいくらか余計に貰い、妻へのお土産に持ち帰ると。
「あなた……これ猫用のカリカリじゃない!」
◇
頭が猫、体が熊、手がTレックスとなった私。
最近同僚がカリカリやら猫缶を与えてきて動物みたいに扱うので、これは変身差別じゃないかと上司に訴えた。
「まぁ、これでも噛んで落ち着いて」
ん、これはガム?
何やら良い気分に――
「で、上司にはマタタビでやられたのね?」
◇
夏休み中猫の頭に熊の体、Tレックスの手に象の足という姿に変身した私。
とうとう会社に辞表を出すことにした。
「何が問題なんだ?」
「ワンギョ(あなた方が私を動物扱いしたからだ)」
「そうか……夢に向かって走り出す決意を決めたか!」
何かいいように誤解されて悔しい。