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第十四部・完結編

朝起きて鏡を見ると、普通のサラリーマンだった。

「あれっ、元に戻った!?」

驚いて出した声も人間の男性の声だ。

死んだと思ったら……まさか今までの一連の出来事は、全部夢だった?

「あなた……どうしちゃったの!? 合成生物キメラのクセに人間みたいな格好で!」

え、何この妻の反応……。



「おや、勇者のお目覚めにゃ?」

と我が家の台所で目玉焼きを食べつつ空々しい台詞を吐くのは、1号!

「お前……夢の筈じゃ」

「死にかけて記憶飛んだかにゃ? あの後、イカ頭男の弟に戻して貰ったじゃにゃいか」

なるほど!

これで今まで通りの生活が……。

「あなた、朝食の乾パンよ。暫く会社休んでたから、家計が苦しくて」

「   」



働かざる者食うべからず。誘拐や戦いで休んでた分の稼ぎを取り戻すべく、会社へ出勤する。

「よっ、久しぶり!」

が、皆きょとんとした顔。

「誰?」

「えっ……斎藤さいとうだけど」

「斎藤!? 斎藤は猫顔で熊体で象足のペットだ! お前みたいな冴えないサラリーマンじゃねぇ!」

ペットかよ……。



結局職場を追い出され、仕方なくサーカス場へ。

元の私の姿は知られてないが、今はメンバーに空きがある筈。

新人として再スタートと思ったが……。

「残念だが人手は足りてる」

「3号じゃにゃいか! ボクの活躍見に来てくれたのにゃ?」

1号! テメエ私のポジション取るんじゃねぇ!



私が元の人間に戻ったと聞き、駆けつけた両親。

「父さん、母さん! 遂に戻ったよ」

が、怪訝な顔をする両親。まさか……。

「お前、そんなに冴えない顔だったか?」

「記憶に残ってたより随分地味だし、それに……」

ヤメテそれ以上言われると人間辞めたくなるっ!!



「どうです? 人間に戻った気分は」

翌日イカ頭男の弟がやって来た。

「あまり良くないよ……会社も入れないしサーカス団にも戻れない。オマケに子ども達も寄り付かないし……」

「お気に召さなかったので。ならば……」

突然、口元に被せられる布。

催眠薬……まさか、また誘拐……ガクッ。



「次はどう改造しますか?」

ここはどこかの薄暗い手術室。イカ頭男弟の声が響く。

寝台に横たわるのは、嘗て合成生物キメラに変身させられた男。

「そうだな、猫の顔は悪くなかった。他はもっと色々混ぜてもいい。案外順応してたから」

そう返すのは死んだ筈のイカ頭男?

――否、女性の声。



「行ってらっしゃい、あなた!」

今日も合成生物キメラの私は仕事へ行く。

猫の顔、猿の尻尾、熊の胴、象の足、Tレックスの手、更に鳥の羽を蝋で固めて作ったイカロスの翼と、よく見かける博士の禿げ上がった頭皮を得た彼は、今や会社にサーカス、ヒーロー業も副業に抱え、毎日大忙しだ。

「ワンギョ(結局こんなオチかよ!)」


(完)




エピローグ


「(完)……と」

弟の蘇生改造で生き返ったイカ頭の男は筆を置く。

「『合成生物キメラに変身した夫』完結おめでとう」

「どうも」

貴方あなたを悪役にして悪かったわ」

「小説が書ければ問題無いです。しかし奥さん、貴女あなたが真の黒幕だと誰が気付いたでしょう?」

「読者を裏切るのは基本よ」

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