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第十二部・悪のアジト編

遂に明らかになった私と家族の変身理由。

「謎も解けたことだし、ニャイダー5人力を合わせイカ頭男を倒すにゃ!」

「共に戦うのよ!」

てかお前ら二人、最初から知ってただろ、言えよ。

「どうか兄を止めてください!」

ってイカ頭男の弟、被害者面だけど改造した犯人お前だから。



翌朝。

「おはようにゃ!今日こそイカ頭男を倒すにゃ!」

って何で家に泊ってんだ、ニャイダー1号!

「変身用のふんどしにゃ!」

早速コレか……って。

「ワンギョ(首輪もあるだろ? 昨晩妻が使ってたが……)」

「ダメにゃ。男は股間を締め上げてこそ強くなれるのにゃ……それがヒーローのオキテにゃ!」

そんなオキテ、くそくらえだ!



結局、なんやかんや理屈を付けられ、ふんどししか貰えなかった合成生物キメラの私。

「では兄のもとまで案内させて戴きます」

と、背後から声をかけてきたのは……。

「ワンギョ(何でお前まで家にいるんだ、イカ頭男の弟!)」

「いや~昨日は飲みすぎちゃって……」

「ギョエェ(店員なのにな)」

「ええ、お陰でバイトはクビになったんですが」

「ワンワンギョ(おいサラッと衝撃告白か)」

「でも3号さん達が兄を止めていただければ一件落着!」

「ギョギョワンワッ(押しつけんな!)」



「つべこべ言わず、さっさと行くわよ」

颯爽と変身姿で現れる妻。髪を猫耳みたく立てた上に肌まで露出させるという、一般の三十代女性としてはかなり恥ずかしい格好をもはや気にも留めていない様子。

「行くで、アネゴ」

「夜露死苦」

と、後から現れたのは……。

「ワンギョギョエ(だれ? この学ランとセーラー服のスケバンっぽい少女たち)」

「何言ってるの、娘達よ。学ランが長女で、セーラー服が次女」

「あぁ、奥さんに頼まれて、夕べ僕がちょっとだけ改造しておいたんです」

どこがちょっとだよ! 改造しすぎだ!



最後に、変身出来ない長男がハイハイしてきた。

どうしよう、家に置いてたら再び攫われそうだし、かと言って……。

「まさかお荷物になると思ってるんじゃないかにゃ?」

と、ニャイダー。

「ギョギョワンワ(当たり前だ……戦いの場で戦力外の者がいたら、まともに戦えない)」

「ふっ、3号はまだまだヒーローしての覚悟が足りないにゃあ」

「ギョワッ(なんだって?)」

「逆にゃよ、守るべき者がいるからこそ、ボクらは強くなれるのにゃ!」

そ、そうだったのか! それも知らず、私はなんて恥ずかしいことを……。


――「で、どうするか決まった? いい加減出発したいんだけど」

「せやで、親父」

「夜露死苦」

暇すぎたのか、化粧や爪磨きを始めてしまった妻と、中腰姿勢であんパンをかじる娘たち……ノリ悪いな、女性陣。



その頃、有給休暇を取って秘密のアジトに籠っていたイカ頭男と、その手下。

「奴らがここへ向かってるだと!?」

「弟様が我等を裏切られたようで」

「弟め…後悔させてやる!」

イカ頭男が取り出したのは、ある薬品。

「それは弟様が開発した即席改造液!」

「よくわかったな」

「台本に書いてありました」

「   」



急にすっくと立ち上がり、手下の口に薬品を流し込むイカ頭男。

「な、何を!? 台本ではご自身で飲まれてパワーアップなさる筈じゃ……」

みるみる手下の姿が変わる。

「台本なんか糞喰らえ! ……おお、見事な怪物の誕生だ。これでニャイダーどもに勝つる!」

台詞を噛んで2ちゃんっぽくなった。



イカ頭男の弟で合成生物キメラの私たちが連れて来られたのは、西洋風の城。悪の結社っぽいな……街中で大分目立ってるが。

「さあ入りましょう」

入口すぐ、ご丁寧に各部屋の案内パネルが。

「この中で『使用中』と書かれた部屋のどこかに兄がいます」

って、今更だけどこの建物、全年齢対象作品としては、入っちゃいけない場所じゃ……?



「ハッ、まさかこの建物……こんな卑猥な場所、娘たちを連れて行けないわ! すぐ出るわよ!」

遅れて気づき、怒る妻。そうなるわな……。

「しゃあっ、出てきーや、悪党!」

「夜露死苦ぅっ!」

と、竹刀やヨーヨーで使用中の部屋の扉を次々破壊し回る娘達……って、話聞いてねえ!

中から悲鳴を上げる男女の、全年齢対象としては不適切すぎる光景が……。

「おっぱい」

長男、今の発言は正しい。



いよいよ残る部屋は1つ……というか、ここまで見つけられなかったのは酷いな……追い出されたカップル達が可哀想だ。

「準備はいいかにゃ!?」

と1号。

正直、開けたくないんだが。

イカ頭男が、恋人のメスイカ等と全年齢対象作品としては不適切な感じで絡み合ってるシーンとか非常に見たくないんだが。



「行くにゃ! ニャイダーキーック!」

いかにも必殺技っぽいのを単に扉を開ける為だけに使う1号。

それはともかく、部屋の中には、あれ? 誰もいない。

「逃げられたにゃ!」

「残念ね……大きなスルメが床に落ちてるだけよ」

スルメだけか……。

「あ、それ兄さんです」

……えっ……えぇえ!?



「我が輩は……恐ろしい怪物を……」

干からびて死にかけのイカ頭男。自分が作った怪物にやられたらしい。

「すまん……死にく者への情けと思って……私の原稿を、文学賞へ応募してくれ……」

「これ白紙よ」

「そうか……残された力で必死に書いたつもりが、インクも干からびてて……」

事切れるイカ頭男。

色々残念な最期だった。



「兄さん! しっかりしてくれよ兄さん!」

もうよせ弟……そいつはもうただのスルメ……。

「美味そうだにゃ。コイツをつまみに酒盛りするかにゃ」

おいニャイダー! 場をわきまえろよ!

「はい、ビール買って来たわよ」

仕事早ぇよ妻!

「ホントだ。結構イケますね」

結局食うのか弟も!



その時。

≪ゴウッ!≫

我々を襲う巨大な炎!

「夜露死苦ぅ!」

間一髪、学ランをひるがえして炎をかき消す長女……おぉっ、何かめっちゃカッコイイ! そして学ランの下の、胸にサラシを巻いた姿も……これはこれでけしからんっ!

って、喜んでる場合じゃない。

「あの怪物は!」

妻の声に慌てて振り返ると、首が三つの怪物ケルベロス……いや、顔は人間!?

薄い髪、眼鏡の下の細い目……。

「がんばりやー!」

そして、このダミ声。

つるべロスだ!!

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