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第十一部・一家総勢変身編

ふんどしの代わりに急遽用意された首輪をはめ、変身を遂げる合成生物キメラの私の娘達。

「「にゃおーん★」」

可愛らしい声と共に、頭のてっぺんの髪が、猫の耳みたくぴょこんと立つ。そして長女は赤に、次女は青に、それぞれ鮮やかな色に染まる。

更には驚いたことに、赤ん坊だった筈が急に6、7頭身くらいに体が伸びた!

変身、って言うか、急成長!?



改めて変身した娘たちの姿を見る。露出したお腹は二人ともきゅっと締り、腰も細くくびれている。

そして、胸も……けしからん! おっきいじゃないか!

しかもそんなものを、防御力のほとんど無いような小さい面積の胸当てで覆って谷間まで見せびらかしてっ……。

お父さん、許しませんよぉっ!!

「……納得いかないわね」

と、同じく変身した妻の、ぺったんこの胸。



「凄い! これがニャイダーの真の姿か!?」

我が妻と娘の変身を目の当たりにし、何故か喜ぶイカ頭の男。

果たして、カッコイイ正義と対峙する悪役としての喜びなのか、単純にセクシーな女の子が見れたオヤジとしての喜びなのか……。

後者の方に一票。

「我らの力を合わせるにゃ!」

叫ぶふんどしニャイダー。

だが。

「もう知らないわっ、あんな親不孝な娘達なんて!」

おい、そこでねるなよ、ぺったんこなんて思って悪かったよ、妻。



「ワンギョ(君の姿が一番セクシーだよ)」

合成生物キメラの私が言う。

すると、黄色に染まった髪の猫耳アンテナがひくひく動き、すっくと立ち上がる妻。お、立ち直ったか?

「……何がセクシーよ! こんな恥ずかしい姿、いつまでも晒してるわけにはいかないわっ!」

そう言い、軽やかに飛び上がる。……まぁ、結果オーライ?



が、妻が相手取ったのは、大胆にも長男を捕えたままのトカゲ男……ちょっ、待て、早まりすぎだっ!!

そして。

飛び散る血潮、宙を舞う長男、慌てて檻をぶち破り、何とか長男を捕える私……。

間一髪!

が、トカゲ男は……尻尾だけ。

「ワンギョ(逃げたのか……)」

「いや。あたしの獲物は逃げてない」

と、私に鋭く尖ったかぎ爪を向ける妻――え?



「いかんにゃ!2号が暴走し始めたにゃ!」

叫ぶふんどしニャイダー。

「否、今のあたしは1号だ」

と、目の色を真っ赤に染めた妻。爪を一振りすれば、風の刃でやつのふんどしの端が切り裂かれる。恐ぇよ!

「「私たちの出番ね!」」

と、妻よりセクシー娘達。

「「喰らえ、ダブル体当たり!」」

……って、技の方は意外と地味だった!



娘たちの力で解ける妻の変身。

「あら、あたしったら、一体何を……」

暴れかけたのに記憶無いのか。

「イカ頭の男はどこ行にゃ!?」

ハッ、いつの間に!?

軟体動物のクセに何と逃げ足の速い……。

「仕方にゃい。これ以上働いても無駄だから、打ち上げにゴハンでも食べに行くかにゃ?」

それでいいのかニャイダー。



「プハーッ、仕事を終えた後のビールは最高だにゃ!」

本当に打ち上げに来てしまった我々。ここは、下北沢の某無国籍料理店。居酒屋っぽくはないが、赤ん坊まで連れてきちゃっていい店なのか……。

「まぁニャイダーさん、良い飲みっぷり!」

って、妻もこの猫頭褌男のこと容易に受け入れ過ぎだろ!

「あら焼き餅?」

え? ってか、ヤツなんかに惚れてないよね!?



「どんどん持ってくるにゃ!」

次々瓶を空にするふんどしニャイダー。何という酒豪……勘定こいつ持ちだよな?

「そうそうこの店は、タコ焼き焼き放題なのが有名にゃ。店員、タコ焼き器持ってくるにゃ!」

「はい、既に用意しておりました。どうぞ」

と、店員を見てぎょっとする。

「ワンギョ(お前はイカ頭の男!)」

そして妻も、

「あなた……公務員なのにバイト!?」

やはりズレてた。



「イカ頭がタコ焼き器持ってくるなんて、どないな冗談や!? イカしとるやないかい! ワイ、イカってもうたでこのボケェ!」

店員に掴みかかるふんどしニャイダー。

完全に酔っぱらいのオッサンだ……いつもの語尾も無いし。

「ひ、人違いです!」

抵抗する店員。

「あんたねぇ……それを言うならイカ違いでしょ!」

妻、暫く黙れ。



「話を聞いてください!僕は双子の弟です!」

必死に訴えるイカ頭男。つまらん言い訳を……。

「にゃんだ、弟か」

「弟なら関係無いわね」

……ってオイ、信じるのか!?

「お前も酷い兄を持って大変にゃ。ま、一杯どうかにゃ」

「はぁ……お言葉に甘えて」

って、店員がお言葉に甘えるな!



イカ頭の弟と酒をみ交わす事になった我々。

「兄は本当最低です。かせぎを妙な趣味に散々つぎ込み……今は僕のバイト代が生活費です」

可哀想な弟だ。

「しかも自分は不器用だからと僕に動物改造させるんです。この間は、トカゲ男を作らされました」

ああ、保健所で見たあいつか。

「……まぁ、僕もあんまり言われた通りばかりは嫌ですからね。たまには勝手に作ることもあります。今年の夏は、この町下北沢に住むサラリーマンを猫頭の合成生物キメラに」

……って、おいっ!?



「ワンギョ! (私を改造したのは貴様か!?)」

イカ頭の弟に詰め寄る私。

「突然どうしたにゃ3号? 酒癖悪いにゃ」

酔ったんじゃねぇ!

「3号? 僕が改造した合成生物キメラのコードネームと似てますね」

ってか本人だよ!

「あら、それって凄い偶然ね」

妻はもうワザト言ってるだろ!



「あなたが僕の改造した、元平凡なサラリーマンの合成生物キメラ?」

1時間程のすったもんだの末、ようやく話が通じた。

「でも熊の体やTレックスの手、象の足を付けた覚えは……」

途中で進化したんだよ。

「過去を気にしちゃ駄目にゃ! ボクは改造されても気にしないにゃ!」

お前は気にしろふんどし野郎。



ん? ふんどしニャイダーも改造人間?

ってことはまさか、ヤツに2号と呼ばれてた妻も……。

「ようやく気づいたのね」

と、突然首輪をはめ、変身する妻。

「あたしも、ついセクシーな姿になりたくて、自分の体にメスを入れちゃったのよ」

ふむ……それならなぜ、胸を大きくしなかったのか。



「ワンギョ(なら、娘達も!?)」

「その子らまで改造した覚えは……」

「ボクが説明するにゃ。その子達は3号が産んだ子らだからにゃ。仮面ラ●ダーシンのラ●ダーベビーと同じ原理にゃ」

またマニアックなネタを……。

では長男も変身を?

「おっぱい!」

「息子は変身じゃなくて変態にゃ」

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