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第十部・喋る白猫編

児童虐待なんて誤解、早く解いて長男を取り戻さなきゃ。

あたし、斉藤さいとうミヨコが家を出ようとすると、

「これは罠にゃ!」

玄関に、喋る白猫が。

「ヤツらはあなたを留守にさせ、他の子らも奪う気にゃ!」

「あなた、長男?」

驚く猫。

「何を言う……ボクはただの猫……」

「嘘!長男でしょ!」

「何故そうにゃる!?」



「ともかく、娘さん達も一緒に来るにゃ! ボクがやつらの場所まで案内するにゃ!」

と、あたし斉藤さいとうミヨコに向かって言う白猫。

「信用出来ない……喋る猫の話なんて……」

「……人間なら信用するかにゃ?」

次の瞬間、姿を変える猫。

いや、顔は猫のまま、体だけが人間のようになる。

某有名アニメ映画に出てくる猫の紳士のように……いや、全然違う。たくましく、男らしい筋肉質の体、小麦色の肌。

そして腰には、赤いふんどし

「……余計信用出来ない!」



息子を人質に取られた合成生物キメラの私。

くそ、万事休すか……!?

「大変です、ボス! 我々のアジトへ合成生物キメラの妻たちが!」

と、元ピエロ。何だって!?

「なぜバレた!?」

「猫頭で八頭身の褌男に連れられて……!」

「ワンギョ(って、どんな変態だよそれ!)」

「お前が言うのかその台詞」



「ここがやつらのアジトにゃ!」

喋る八頭身の猫顔褌男に、あたし斉藤さいとうミヨコと娘達が連れてこられた場所。

「……本当に、ここ?」

そこは想像もしなかったと言えば嘘になるが、改めてここだと言われるとやはり驚くしかない場所だった。

「覚悟はいいかにゃ!?」

そして私たちは足を進める――

保健所の中へ。



合成生物キメラの私の前で、仮面の男が言う。

「狼狽えるな。助けが来たところで我々には人質がいる」

確かに私達が逃れられねば意味は無い!

……と、仮面の男の背後から作業着姿の男が。

新たな敵!?

「また妙な仮面被って何遊んでるだ? その大トカゲも檻から出すなと言ったべ?」

「保健所所長!?」

え、保健所?



「そげなことばっかだから税金泥棒さ言われるだ! 公務員の責任持って仕事しろ!」

所長から小突かれる仮面の男。

その拍子に仮面が剥がれ落ちると……何と下から現れたのは、イカの頭!

「遂にバレたか……これが我が輩の正体だ!」

「うわっ、イカ臭! 取れないようにしっかり付けとけって言ったべ?」

また仮面を戻された。



あたし、斉藤さいとうミヨコたちが保健所に入って飛び込んできたのは、作業着の男が仮面の男を小突き続ける光景。

小突くたびに仮面が剥がれてぬるぬるのイカの頭が出てくるが、相当臭うのか、何度も仮面を付け直されている。

他に、トカゲ頭の男、牢の中の猫頭で熊の体の合成生物キメラと、まるで仮装大会のような様子に思わずため息が……。

「って、牢にいるのはあんたの旦那だにゃ!」



「遂に来たか!」

と、所長の攻撃を跳ね除け立ち上がるイカ頭の男。

その視界の先に、合成生物キメラである私の妻と二人の娘、そして謎のふんどし姿の八頭身猫顔男!?

「待っていたぞ、ふんどしニャイダー1号!」

えーっ、あいつそんな名前なの!?

「ボクも仲間を助けに来たにゃ! 3号!」

えーっ、私も一員なの!?



猫頭八頭身褌男、もといふんどしニャイダーが叫ぶ。

「行くにゃ、2号4号5号!」

「えっ……あたしたち!?」

「まあま!」

「ぱあぱ!」

更に意味不明な展開に……。

「待ちなさい! あたしが2号以下ってどういうこと!? レディーファーストで、あたしは1号でしょ!」

やはり妻の突っ込むポイントはどこかズレていた。



「わかったにゃ! 今回だけ1号譲るにゃ!」

妻に小突かれ負けを認めたふんどしニャイダー……次回もあるのか?

「これで変身するにゃ!」

と、取り出したのは赤、青、黄色のふんどし

「こんなの女子が履けるわけないでしょ!」

妻の拳がふんどしニャイダーの顔面にヒット!



「ボス、あいつらが揉めていてるうちに人質を連れて逃げましょう!」

と耳打ちする手下のオレに、ボス。

「よく聞こえない」

え……イカの耳ってどこ?

「この菱形の部分だ」

「へぇ、ヒレじゃなかったんですね! 勉強になります!」

「おい……こっちはもう準備出来たにゃ!」

と叫ぶ我らが敵……しまった!

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