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プロローグ
朝起きて鏡を見ると、顔が猫になっていた。
驚いて声を出すと、ワン! と犬のような声。
そして後ろを振り返れば、お尻から猿のような尻尾。後から起きてきた妻が驚いて言った。
「あなた、どうしちゃったの!?」
……こんな姿になってまで私のことがわかるとは、さすが我が妻。
◇
翌日、家に来客が。
「たかし、大丈夫か!?」
「変な病気にかかったって聞いたけど……」
両親の声。妻が玄関で応じ、居間へ通す。そして二人は、変わり果てた姿の私を見る。猫の頭で、猿のような尻尾を生やした私を――。
「なんだ、元気そうじゃないか」
「熱もないみたいですし」
確かにその通りではある。
◇
怪物に変身して三日が過ぎた。
今では胴は熊、両手はTレックス、足は象、そして声はワンギョウッという犬と鳥が混ざったような声。
完全な合成生物だ。
そんな私と妻の食卓。
「ワンギョウッ」
「はい、醤油ね」
「ギョギョエー」
「今度はお茶が欲しいのね」
意外と不自由は無い。