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ⅩⅢ.トレジャーボックス2 ~もしも鍵が掛かっていたら~

 これで何個目になるのだろうか。もしモンスターが入っていてもすぐ反応できるよう剣を構える戦士を尻目に、盗賊が通路の小部屋にあった宝箱を開ける。

「くっ、また(から)箱か……」

 ガチャリと音を立てながらフタが開く。

 だが中身は他の宝箱と同様に、古びた空気しか入っていなかった。どうやら既に、過去にここへと訪れた墓荒らしが持ち去ったようだった。

「やはりこの貼り紙通りなのか……」

 盗賊は憎々しげな表情で壁の貼り紙を睨み見る。


『ヌンヌンヌン

 現金になりそうな財宝は

 すーべて俺様が頂いたぜ!』


 どこぞの馬の骨だか知らないが、目ぼしいお宝を奪っただけでなく、あまつさえそれを自慢するかのような書き置きを残しておくとは、何とも腹立たしい。

「随分とふざけた輩だな」

「もしどこかで会ったらぶん殴りたいわね」

 ほんとだよ。自己満足にも程がある。

 しかしまずいな、《黄金の爪垢》が取られていないか心配だ……。

「まずいな、アレが奪われていないか心配だ……」

 ?

「アレって何のこと?」

「! いや、何でもない。ただの独り言だ」

 独り言ねぇ。盗賊もわたしと共通な心配事を気にかけている様子だな。

 そう言えば、盗賊ってピラミッドに何の用事があるんだろう。もしかして同じブツを狙っているとかないよね?

「こっちの宝箱は色が違うわよ」

 釣竿袋の上で退屈そうに胡坐をかくマホツカが見つけた宝箱は、確かに今まで開けてきた、くすんだ赤色の安っぽい木枠の箱ではなく、黄金色で複雑な紋様が描かれていた。

「ん? こっちにも貼り紙があるわね」

 まさか、これも開封済みなのか?


『なぜこの宝箱は開かないんだ?

 いくら鍵が掛かっているとはいえ、頑丈過ぎるだろッ!?

 くそっ、開け! 開けゴマちゃん! 開けチューリップ! 開けポンキッキー!!』


 何歳だよ、この人。

「どうやら未開封のようだな」

「鍵付きなんて、レアなアイテムが入ってそうね♪」

 レアなのはいいんだけど、わざわざ大事な宝をこんな普通の部屋に放置しておく必要性があるのだろうか。まあ、ロマンなら仕方がない。

「でも、どうやって開けるの?」

「ふふん、もちワタシにまかせなさ――」

「「やめろっ!」」

「ちょっ! 二人して何で邪魔するのよ?」

 わたしと戦士でグレイさんよろしくマホツカを左右から拘束する。そりゃそうだ、前回みたいに煙と埃まみれは御免こうむりたい。

「いらないのなら、わたしが貰うぞ」

 そう律儀に断りを入れながら、盗賊は宝箱に挑むように前に立つ。動作が板に付いているといいますか、風格があるといいますか。きっと今まで開けてきた宝箱の数など覚えていないぐらい盗賊業に邁進(まいしん)してきたのだと窺える。あり、褒め言葉かこれ?

「開けられそう?」

「ふっ、わたしを誰だと思っている。磨き上げられたピッキングスキルを披露してやろう!」

 おまえ、ただの泥棒だろ……。

 ピッキング技術なんていったいどこで身に付けたのやら。せいぜいゾンビ屋敷からの脱出にしか役に立ちそうにないのに。

「では、いざ!」


 スキルが足りない!

 スキルが足りない!

 スキルが足りない!


 …………、

 えーっと。

「くそっ、なぜ開かない!」

 いやー、スキルが足りていないっぽいですよ、盗賊さん。

「開けられないのなら、張り紙の人と同じく諦めるしかないね」

「盗賊道とは、諦めぬことと見付けたり!」

 つい最近、どっかで似たような言葉を聞いた覚えがあるな。

「盗賊の夢はひとつだけ……宝箱を開けたい」

 オッサンやらイケメンに同じこと言われても、全っ然切なくないっすよ。

「宝箱を開けられるのは、開けようとした者だけだ!」

 うん、まあ、そうだね。宝くじも買わないことにはアタリもハズレもないからね。

「ふっ、こうなれば仕方がない。見せてやろう、盗賊の七消耗道具のひとつ――」

 どんだけ『七』って数字が好きなんだよ!?

「《デュプリケイト・キー》!」

 盗賊が懐から取り出したのは、キーというには少し遠い、ただの細長い棒だった。

「この道具は鍵穴に挿すことで、その鍵穴に合致した形状に変化するのだ」

 おおっ、それはすごい。

「そんな便利なアイテムがあるんだ。どうやって手に入れたの?」

「それは秘密事項だ。悪いが宇宙人にでも聞いてくれ」

 どゆこと?

「さあ、中身とご対面だ」

 盗賊はキーを鍵穴に挿す。しばらくするとキーが変色して作成完了を告げた。

 盗賊が複製された鍵を回すと、硬く閉じた宝箱のフタが熱せられたハマグリのように勝手に開いた。

 はたして、どんなお宝が眠っているのだろうか――、


 盗賊は 《不思議なタマゴ》を 手に入れた!


「何だこれは?」

「そのまんまタマゴだね……」

 ニワトリ以上ダチョウ以下の大きさで、迷路のような模様が殻に刻み込まれていた。

「どうするの、後で食べるとか?」

「むむ、扱いに困るな……」

 盗賊は悩んだ末、とりあえず後でじっくり考えると言い、懐にしまった。

 マホツカもそうなんだけどさ、どうしてポイポイっと懐からいろんなアイテムを出したりしまえたりできるわけ? そっちの方が不思議だよ。

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