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天空のアトリエ  作者: 黒井 夕
黄緑の章
9/19

第8話 友達第一号

更新の不定期さに泣ける……



朝。

太陽が顔を出し小鳥達がさえずり始める―――前から、私は起きていた。

今日から高等学校――長いから高校、に通い始めるのだ。

つまり下界での仕事がスタートするということ。


「そーらち君!朝だよ、起きて!今日から学校に行くんだよ!」


「ん゛ー……」


不機嫌な声をしながら、うっすらと目を開ける。


寝室はふたりで使っている。隣の部屋はあるにはあるけど、この部屋より狭いからどちらも譲らず、結局はひと部屋を共有で落ち着いた。

それでもベッドはひとつだから、昨日は私が床で寝た。ま、年上だから…ね。

ここでの暮らしに慣れてきたらベッドを買おう。


「あと…五分……やっぱ、10分………」


「だめ。遅れる。学校始まるの8時半なんだよ。今7時」


「余裕じゃん……」


布団に潜り込もうとする空智君からその布団を取り上げる。それでも丸くなって意地でも起きようとしない。

こういう時は子供って感じで可愛いのになぁ。


「…それにしても、お前が朝強いなんて意外だな」


目だけをこちらに向ける。


「動物は朝弱いものだと思ってた」


………………。その一言に、にっこり笑顔を作る。

優しいとは間違っても言えない、黒い笑顔だったと思う。


天候の塔の真波へ。

仲良く登校するなんて無理です。おそらくそんな日が来ることはないでしょう。







―――――――――………


「だからって殴ることはないと思いますけど?俺は思ったことを正直にだな…」


「朝っぱらから動物扱いされたらキレて当然でしょーが。ま、その話は置いといて…着いたよ、学校」


私立坂ノ下中学校。

我が家と同じように石の壁にそう書かれていた。

空智君とはここでお別れ、下界に下りて初めての別行動になるのだ。


「気を付けてよ?まあ、空智君に限って、なんにもないと思うけど」


今の私達は制服とやらに身を包んでいる。これは学校に行くには必ず着ないといけないらしくて、昨夜真波が忘れてましたーと送ってきた。

男子はズボン、ネクタイといった格好、女子はブレザーにスカート、そしてリボン。

普段ズボンが多い私としては落ち着かなくてしょうがない。脚がすーすーする…。

中学校と高校では制服が違う。だから空智君のほうがデザインが幼いって言えばいいのかな。


「じゃ、行ってくるな。ヘマすんなよ」


「しーまーせーんー」


門を抜けてグランドを走っていく空智君を見送ってから、私はひとり長い坂を登っていく。

坂ノ上高等学校はその名の通り坂の上の学校らしい。

中学校はその逆、坂の下にあるから坂ノ下中学校。

ちょっと単純過ぎ。


「そ、それにしても…意外に距離があるな…っ」


坂を登りきったころには息が切れていた。

呼吸を整えてから門をくぐる。

勝手に入って…いいんだよね?入るよ?入りまーす!

他の生徒に混ざるように校舎に向かう。


「結構生徒さん多いんだなー…」


天候の塔に勤めてる天空人と同じくらい、いやもっとかもしれない。

これだけ人がいればかなりの心が集まる予感。

三組の中で一番になっちゃったり………と、まあ、これからの生活を頭の中でシュミレーションしてた私、前方不注意になっていたわけで。


「わっ!?」「!!」


前を歩いていた人に正面衝突。


「びっくりしたぁー」


何が起こったのか理解する前に、ぶつかった少女が振り返った。


「ごめんなさい。急に止まって」


肩までの髪に大きな目、一言で言うと美人というより可愛い、そんな子だった。

身長は私と同じくらい……って一瞬でこれだけ把握とか私は変態かっ。


少女がくすっと笑う。


「面白い人。黄色いリボンだから…私と同じ2年生ね」


「そう。今日から編入させていただきます」


にかっと笑ってお辞儀すると、その少女も笑った。

笑うとこれまたかわいいな。絶対ファンクラブとかあると思う」


「私、野田 優子(のだ ゆうこ)。名前聞いてもいい?あなたの友達第一号になりたいから」


「雲見 七架だよ。友達第一号かあ、嬉しいこと言ってくれる」


「ななか…七架…よし、覚えた!私ね、一度聞いたことは絶対忘れないから」


何度か私の名前を呟いて少女――優子はVサイン。


――…キーンコーンカーンコーン


「ん?」


どこからか聞こえた鐘の音に辺りを見渡す。

さっきまでたくさんいた人がいなくなっていた。

そして隣では優子が青ざめていた。


「ち、遅刻っ!七架、これから職員室行くよね?昇降口入って左に進んでいったら一番奥にある左手の部屋がそうだから!」


自分が遅れそうだというのに、親切にしかもかなり詳しく職員室とやらの場所を教えてくれた。

よく噛まないな…と思ってしまう速度で言い切ると、優子はつんのめりながら校舎のほうへ走っていった。


「せんせー!見逃してくださーいっ!」


「いや、聞こえないでしょ」


ちょっと天然なのかな?…あ、こけた。







―――――――――………


校舎に入ったはいいが、広い、広いなこの学校。

校内案内を見る限りじゃ、4階まであるらしいし、天候の塔には及ばないけど私の中では広いという分類に入る。


って、校内案内あるなら優子の説明いらなかったんじゃ……。

ま、まあ、親切は受け止めないと。


まず左に進んで…一番奥の左の部屋……。

左に進んだ時点でもう看板?が見えたのは気にしない。


「ここか」


軽くノックしてからドアを開ける。


「失礼します!雲見です」


とびきりの笑顔で職員室に乗り込んだ。





その頃、どこかで黄緑をした小さな光が輝いた。





夕です。


この度、天空のアトリエ以外にリレー小説をはじめました。


タイトルは『とりあえず、自己紹介でもしますか』です。


そちらのほうの閲覧もよろしくお願いいたします( ̄∇ ̄*)ゞ

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