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天空のアトリエ  作者: 黒井 夕
始まりの章
7/19

第6話 下界では



額の衝撃で目が覚めた。

目を開けると、空智君が私の顔を上から覗き込んでいて、なにやらイライラしてらっしゃるご様子。


「………おはよう」


「おはよう。…じゃねーよっ!起きるの遅すぎ!」


また額に衝撃。どうやらさっきのも空智君のデコピンだったらしい。

空智君の顔がいなくなると、白い天井が見えた。

…ん?……天井?

かばあっと勢いをつけて起き上がる。


「ここ、どこ?」


「さあ?」


「私達、空から落ちて来たよね?なんで室内にいるの?」


状況を整理しよう。

私と空智君は下界へ下りるために空に飛び出していった。で、どんどん落ちていった。

そして、今私達はどこかも分からない部屋の中にいる。

………整理するんじゃなかった。

余計分かんなくなっただけだ。


それにしても、この部屋!何にもないではないですか。

床も天井も真っ白で、テーブルやイスもちろんないし、一番大切なベッドがどこにもない!


「ここが下界なのかな?とりあえず、外見てみるね」


白い空間に耐えられなくなって唯一の窓に手をかける。

カーテンも真っ白。そこまで統一しなくても。


「わっ!空智君、空智君!来て、早く!」


「なんだよ」


「見てよ!すごいよ、本当に下界に来たんだ!」


窓の外の風景でここがどこなのか全て理解した。この部屋は二階にあるらしい、窓から下を見下ろすと、家の前の通りが見えた。

正面の家は天空界では見たことの造りをしている。

天空界では通りはこんなに家の密集地帯じゃなかったし、家は段々に建っていた。


「天空界と全然違うな…」


空智君が呟き、私は目を輝かせる。


「外出てみようか。下界の街がどんなとこか知りた「だめ、天空界からの連絡待つから」








結局、空智君は部屋待機、私は外の調査をすることになった。

一階に降りてみると、ここにはちゃんと家具があって、部屋も幾つかに分かれていた。

後でぐるっと一回りしてみよう。

まずは外から。


玄関には私と空智君の靴が並べてあった。


見慣れない形の扉を押し開けて外に飛び出す。


「おおーっ、気持ちいい!」


暖かい風が吹き抜けていった。

下界は天空界よりも暖かい。よし、後で空智君に報告しよう。


「ん?……なんだ、これ?」


家を囲んでいた石の壁、低いけど意味あるのかな…そこにくっついていた板みたいなのを見つける。

ただの板じゃなくて、黒い字が彫ってある。


「雲…雲見(くもみ)?雲見七架・空智…」


雲見って、何?

雲見七架の七架の下に空智と書いてある。

意味はよく分からないけど、空智君より上ってかんじがして悪くはない。


「あらぁ~、お隣に越してきた方?」


黒い字を見つめている私に声をかける人が。


「は、はい。七架です、よろしくお願いします」


こういう時は笑顔で答えといたほうがいい。

声をかけてきたおばちゃんは私の笑顔に気をよくしたのだろう、次々に質問を投げかけて来た。


「七架ちゃんは独り暮らしなの?」


「あ、いえ、二人暮らしです」


「ふたり?あら、ほんと。そらち君って読むのよね?弟?」


「弟……」


「七架ちゃんの下に書いてあるからそうでしょ?」


下に書いてあるのは弟って意味なのか。


「そうです、弟です」


うん。そういうことにしておこう。

どう見ても兄には見えないし、兄弟以外にしたら説明面倒だし。


「弟~、仲が良いのね~。私にもね~弟がいるんだけど、ぜんっぜん会いにきやしないのよ~。うらやましいわ~。それでね~~……」


「はぁ………」


おばちゃん、自分の世界に入っちゃったよ。


「七架ちゃんくらいの姪っこもいるんだけどね~、七架ちゃんを見て思い出しちゃったわ~。今度会いに行こうかしら~」


「は、はい…そうですね」


いいのかな…逃げても。

私は外の調査をするために出てきたのに。

適当に相づちをうちながら、二階の窓を見上げる。

窓は閉まっていて、カーテンまでかかっている。


空智くーん…なんとかしてよー…。


願いが通じたのか、しばらくおばちゃんの話をうけながしていると、音を立てて窓が開いた。


「七架いるかー?」


「弟君?まあ、かわいい子ねぇ~」


「は?」


甲高いおばちゃんの声で空智君が私に気づいた。

“かわいい”とか“弟君”に反応、ひきつった笑顔で頭を下げる。


「弟に呼ばれましたので、失礼します!」


引き止められる前に玄関にダッシュ。

そのまま階段をかけ上がって部屋に飛び込んだ。


「空智君ありがとう!あのままだと日が暮れるまで帰ってこれないところだったよー」


なぜか肩をぷるぷるさせてる空智君の横を通りすぎてベッドにダイブ。

ふわふわで自分の家のベッドみたい。


あらら?


この部屋にベッド…あったっけ?ベッドだけじゃなくて、テーブルもイスもなかったはず。


「空智君、これどうしたの!?壁紙まで貼ってあるじゃん!」


それにこの部屋、よーく見ると私の部屋と何もかもがいっしょだった。家具の配置まで同じ。

ベッドにダイブした時、落ち着いたわけだ。


「さっき、お前が出ていってすぐに連絡があったんだよ。部屋に置く家具で要望はあるかってな。俺は別にないから、七架の部屋と同じにしてくれるように言っといた」


「空智君さいこー!さすが私の弟!」


「弟じゃねぇ!悪のりするなよ!」ダンッ!





この日分かったことは3つ。

その1、下界は天空界よりも暖かい。

その2、下界では名前の前に変な前書きがつく。

その3、空智君は怒らせると…大変なことになる。







長くなってきたので、中途半端なところで切ってしまいました。



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