第5話 雲を突き抜けて!
ゴオオオォォォ………
どこかで重い何かが動いている、そんな音が聞こえた。
床が小さな地震のように揺れる。
「下界へは一方通行だ。一度下りたら自分では帰ってくることが出来ない。覚えておけ」
ま、また聞いてないことを…。
今は独り暮らしだから、よかった。急に下界に行っただなんて聞いたら、お母さんもお父さんもびっくりして寝込んじゃう。
「後ろに3歩下がれ。落ちるぞ」
ガタン!
床が一際大きく揺れた。
「きゃ…っ」
「おっと!」
揺れの衝撃で倒れそうになった清音ちゃんを、黒羽君が素早く支える。
さすが双子。息ぴったり!…って言うのかな?
「なんだぁ!?」
ついさっきまで私達がいた場所の床が真っ二つに分かれていく。
強い風がそこから吹き上げる。
「わ……、空、空が見える!」
理解するまでに時間がかかったけど、どうやらこの場所は7階の端に位置しているらしい、他の部屋よりかなーり外に突き出ているようだ。
キノコの傘みたいに。
だから空が足下に見える。
「空なんていつも見てるだろ。上も下も全部空だし」
「空智君は夢がないな。見てよ、飛び下りれそ「飛び下りるんだぞ?」
穴の向こう側にいる責任者さんが呆れ顔。
「早速行くか。この穴開けてもいいの、5分までだからな」
この穴から?飛び下りる?
顔がひきつるのを感じながら、穴の中の空を覗き込む。
所々に雲が浮かんで、まるで青いキャンバスに白い絵の具で模様を描いたよう。
「緑と青羅、行ってみろ。着いてからのことは、こっちから連絡する」
下、見られないほど高いんだ…。
「ほーい。青羅!行くか!」
「ああ」
緑ちゃんが青羅君を引っ張るかたちで、ふたりは穴の下に消えていった。
すごい勇気…どんなかんじで下界に行くのか見たかったけど、絶対自分の番が怖くなるからやめた。
「次は私達ですね。行きましょう、黒羽君」
「おう!楽しみだなっ」
「では、七架さん、お先に失礼します。下界でもよろしくお願いしますね」
そうして双子組も空中へ飛び出していった。
下界行きが嬉しかったんだろな、全然躊躇してなかったから。
…さ、さあ、私達の番が来ました。
「七架、さっさと行くぞ。時間がない」
「……………」
「あと一分」
追い詰めないで!
で、でも、ここで飛ばないと、次に下界行きがあるのいつか分からないし、もしあっても私が選ばれるか分からないし。
「俺だけでも行くから。お前がいなくても別にいいし」
「行く!行きます!」
空智君にがっしり腕を掴まれる。
それなら逃がさない、ってことか。
「さん、にー、いち」
やけに速いカウントダウンがあって、腕がぐいっと引かれた。
穴の真上に体が飛び出して、一瞬のふわっとする感覚。
「っ!?」
あっというまに天空界の下まで落ちていき、雲を突き抜ける。
こんなに速いの!!?
「ぎ、ぎゃあああああぁぁぁっ!?」
「うるさい!」
空智君に腕を掴まれたまま、くるくる回りながら落ちていく。
天空界から下界へ。さあ、私は下界でしっかり仕事をこなすことができるのでしょうか。
「空智君!」
「どした!」
「は、吐きそう!」
「おい、ちょっ、やめろーー!!」
――――――――………
どうも。
いきなりですが、書いてて思いました…私はスピード感ある文章を書くのが苦手だ!と…
前回、次は空智のプロフィールを載せるとか言ってましたが、思いとどまりました。
もう少しして載せます。