第3話 蝋燭回廊ののち…
次の日、あくび混じりに出勤すると、いきなり先輩に呼ばれた。
「七架!」
ヤバい。遅刻したかな、いつもよりのんびり来たから。
「な、なんでしょう」
怒られるの覚悟で先輩のほうへ行くと、先輩は私の腕を掴んで走りだした。
「先輩!?説教ならここでいいですよ?」
「はあ?お前遅刻だぞ!もうみんな集まってる!」
集まってる?
何の話だ?
でも、なんだかまずい状況ってのは分かる。
7階の真ん中を通る廊下を駆け抜けて、資料室の横を少し行ったところで先輩はやっと止まってくれた。
ふたりで、はあはあ肩で呼吸する。
それにしても…こんな部屋があったんだ。
虹の色の宝石をあしらった扉が迫力満点で私の前に現れた。
「ここは…」
「入れば分かるから!」
先輩が扉を三回ノックする。
「七架、つれてきました」
先輩がそれだけ言うと、扉は一人手に開いた。
歴史を感じさせる軋みで開ききった扉は、一度ガタンと音を立てて静かになった。
「後は一人で行けよ。俺は巻き添えくらって怒られるの嫌だし」
「ここ、奥まで行けばいいんですか?……って、先輩もういない!」
仕方なく一人で暗い廊下を奥へ奥へ進んで行く。
こんな不気味な廊下が天候の塔にあっていいのだろうか…。
通路の端には一定間隔で蝋燭が灯してあって、それがまた余計に怖い。
「やっと終わった!」
蝋燭回廊(ただいま命名)を抜けると、そこは明るい部屋になっていて……
私の他に数人の男女が集まっていた。
先輩が言ってたのって、これのことか。
「遅い!」
集まっていた男女のうち、一番来てほしくない人がこっちに向かってきた。
「お前待ちだったんだからな!今日のこと知らなかったんじゃあるまいし」
「知らないけど」
なんでここにつれてこられたのかも、なんでここに集められてるのかも、そしてなんで空智君に怒られてるのかも。
だから、そのイラッとくる溜め息やめて。
「昨日連絡があったけど」
「昨日?」
連絡なんかあったっけ?
昨日はずっと資料室にいて……空智君と話してたから…。
「ああ!」
「あっただろ?重大発表だーって」
「昨日は早く帰って寝てた」
「…………」
無言で腹に一発決められる。
痛みに呻いていると、騒がしかった部屋が急に静まった。
「揃ったようだな。それでは今から始める。前のほうに集まれ」
部屋に低い声が響いた。聞いたことのある声。
言われたとおり前にあつまると、声の主の正体がようやく見えた。
「あ、テストで見た人…」
「何言ってんだ。天候の塔の責任者だろ」
小声の空智君に睨まれた。そうか、だからテストの試験官もやってたんだ。
責任者さんは私たちをぐるりと、一人一人と目が合うように見渡して、こう言いはなった。
「これより、下界へ降りる者に注意事項を述べる!」
…………
責任者さんの大声が頭の中で響く。
突然のことに、私は危うく気絶しそうになりました。
ありがとうございます。4話です。
少しずつ謎を溶かしていこうと思っています。