第2話 天空の塔最上階――2
この性格さえなければ、先輩とでも何とでも呼んでやるのに!
と、とにかく、今はおとなしく話を聞いといたほうが、後から文句言われなくていいか。
「…教えて」
空智君は読んでいた本を閉じて、私に向き直った。
「じゃあまず、7階の担当する天候を言ってみろ」
「それくらい知ってるよ!…虹、でしょ」
「おお、本当に知ってたのか」
「だから知ってるって!」
知らなかったら、ここにいられないって。
ニヤニヤしている空智君を見て、私の闘争本能に火が着く。
こうなったら、どんな質問にも答えてやる。
「よし、次。…虹はどうやって作られている?」
と、誓ったそばからこの質問。
「え…あー…」
「どうした?」
何処かの資料で見た気もする。
どこだったかなあ…思い出せない。
「もう答えられないのかぁ?」
「だって!ここに勤めて1週間たつけど、資料の暗記しかしてないもん!」
これホント。
風の担当だったときは、フロアの中で誰かが必ず仕事してたし、仕事を任されたこともある。
ところが虹の担当になってからは、一度も仕事をした覚えがない。
それに今考えてみると、先輩たちが仕事してるのも見たことがないような気がする。
「あー…」
なんで、そういえばそうかみたいな顔になってるの。
「…七架は………だったな…」
空智君がぼそっと何か呟いた。
今、なんて言った?
「空智君、なんて?」
「七架。やっぱり教えるのやめる」
そして急に立ち上がると、その場を去ろうとした。
ち、ちょっと待った!
「なんで!?」
資料室のドアの前まで行って、何か思い出したのか、また戻って来た。
私が座っているからちょうど同じ高さにある顔をじっと見た。かと思うと、はっと笑いやがった。
「笑うなっ」
「ハイハイ。七架、さっきの質問だけど、すぐに答えが分かるようになると思うから。お楽しみに」
そう言って、今度こそ本当に出ていった。
なんか…今日の空智君、調子狂うな。
いつもなら、どっちかが降参…はしないから、先輩たちに止められるまで言い争いが続くのに。
「そういえば、私がなんだろう?」
空智君が呟いたあのセリフが妙に引っ掛かる。
あの時の空智君、いつもなら考えられないくらい真剣な顔してたような気がするし。
「んー…」
結局答えは出ず、私も資料室を出た。
今日は早く帰らしてもらってさっさと寝てしまおう。
と、まあ、軽い気持ちで帰路に着いたのだが、空智君が言った『さっきの質問だけど―――お楽しみに』これの意味が分かるのは、本当にすぐだったりする。
第3話です。
この話くらいからやっとストーリーが動きだします。