表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天空のアトリエ  作者: 黒井 夕
始まりの章
3/19

第2話 天空の塔最上階――2



この性格さえなければ、先輩とでも何とでも呼んでやるのに!

と、とにかく、今はおとなしく話を聞いといたほうが、後から文句言われなくていいか。


「…教えて」


空智君は読んでいた本を閉じて、私に向き直った。


「じゃあまず、7階の担当する天候を言ってみろ」


「それくらい知ってるよ!…虹、でしょ」


「おお、本当に知ってたのか」


「だから知ってるって!」


知らなかったら、ここにいられないって。

ニヤニヤしている空智君を見て、私の闘争本能に火が着く。

こうなったら、どんな質問にも答えてやる。


「よし、次。…虹はどうやって作られている?」


と、誓ったそばからこの質問。


「え…あー…」


「どうした?」


何処かの資料で見た気もする。

どこだったかなあ…思い出せない。


「もう答えられないのかぁ?」


「だって!ここに勤めて1週間たつけど、資料の暗記しかしてないもん!」


これホント。

風の担当だったときは、フロアの中で誰かが必ず仕事してたし、仕事を任されたこともある。

ところが虹の担当になってからは、一度も仕事をした覚えがない。

それに今考えてみると、先輩たちが仕事してるのも見たことがないような気がする。


「あー…」


なんで、そういえばそうかみたいな顔になってるの。


「…七架は………だったな…」


空智君がぼそっと何か呟いた。

今、なんて言った?


「空智君、なんて?」


「七架。やっぱり教えるのやめる」


そして急に立ち上がると、その場を去ろうとした。

ち、ちょっと待った!


「なんで!?」


資料室のドアの前まで行って、何か思い出したのか、また戻って来た。

私が座っているからちょうど同じ高さにある顔をじっと見た。かと思うと、はっと笑いやがった。


「笑うなっ」


「ハイハイ。七架、さっきの質問だけど、すぐに答えが分かるようになると思うから。お楽しみに」


そう言って、今度こそ本当に出ていった。

なんか…今日の空智君、調子狂うな。

いつもなら、どっちかが降参…はしないから、先輩たちに止められるまで言い争いが続くのに。


「そういえば、私がなんだろう?」


空智君が呟いたあのセリフが妙に引っ掛かる。

あの時の空智君、いつもなら考えられないくらい真剣な顔してたような気がするし。


「んー…」


結局答えは出ず、私も資料室を出た。

今日は早く帰らしてもらってさっさと寝てしまおう。




と、まあ、軽い気持ちで帰路に着いたのだが、空智君が言った『さっきの質問だけど―――お楽しみに』これの意味が分かるのは、本当にすぐだったりする。


第3話です。

この話くらいからやっとストーリーが動きだします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ