第18話 魔王様といっしょ!
迷子の仁科を捜して《チビッコどうぶつえん》にやって来ました。
「なんでこんなとこでいなくなるのか…」
《チビッコどうぶつえん》は小さな動物を集めているコーナー。動物たちを見てみると天空界にはいない種類ばかり。
お金を払えば動物とふれあえるみたいで、ちょっと行ってみたかった。
「慧くーん!」
優子がきょろきょろしながら仁科の名前を呼んでいる。
一見、いなくなった弟妹を捜しているかんじだけれども。いなくなったのは魔王なんです。高2男子なんです。
「仁科ー」
だけど手伝わないわけにもいかず、とりあえず名前を呼んでおく。
「慧くーん」
「仁科ー」
そんな中、慧も仁科も知ったこっちゃねぇ、な空智君は腰に手をあてて子供らしくない溜め息をついている。
「ねぇ優子、もう移動しちゃったんじゃない?」
いくら呼んでも出てこないし。
あの仁科が、いつまでもこんなとこにいると思えない。
「そうかも…」
「違うとこ行ってみようよ」
優子は頷きかけたが、もう一度、《チビッコどうぶつえん》を見ると首を横に振った。
「私もう少し捜してくる。慧君、小動物好きだから」
わからない…仁科は本当にわからない…。
優子は私にここで待っててくれるように頼み、小走りに行ってしまった。
「…………」
その辺をふらふらしていた空智君と目が合う。
お人好しめ。
その目はそんなことを語っていたような気がする。
「お人好しですみませんねぇ」
「何も言ってないだろ」
にしても…優子はなぜこれほど仁科と親しいのか。誰にでも優しい優子が魔王の仁科を放っておけないというなら、それはそれで納得。でも学校だけならまだしも、休日も一緒にいるとなると…うーん…。
認めたくないけどなぁ…。
「七架ー!慧君いたよー」
ほんわかした声で我にかえる。
《チビッコどうぶつえん》のほうから優子が駆けてきていた。
その後ろを歩いてくるのは、仁科。
思わず逃げてしまいそうになる。
「へぇ、あれが」
空智君が仁科の金髪を見て物珍しそうに言う。
あれ、じゃないよ空智君。そんな口聞いてると…なんか怖いことされちゃうよ。
「ど、どどどうも、に、仁科…君」
「………どうも」
「慧君ねー、思った通りひよこのあたりにいたよ」
ひよこってあの黄色い可愛いやつだよね?
ひよこをどうするつもりなの、食べちゃうの!?
「さようですか…焼き鳥だけはやめてね…」
「…七架?」
「なんでもないですよ、ええ」
その後。
なぜか4人で絶叫マシンというやつをコンプリートすることになりました。
もちろん絶叫しました。
―――違う意味で。
優子が空智君の隣がいいと言い出した結果、私は仁科と座ることになったのです。
隣で始終無表情な魔王様は、それはもう、怖かったです。
以上、天空界の真波へ。今日の報告。
読んでくださり、ありがとうございます。