第17話 迷子の迷子の…
「優子はひとりで来たの?」
なんやかんや一段落したところで気になっていたことを聞いてみる。
優子なら友達とかと来るんじゃないかなって思うんだよね。弟役の空智君と来ている私と違って。
「ううん。ひとりじゃないよー」
やっぱり。
いいなー、人気者は。
いや、寂しいわけじゃないけどさ。やっぱり初めてのゆーえんちが空智君とふたりってのはね。
その空智君を見るとわざとらしく目をそらされた。
…あとで…っ、……何するというのかね、空智君あいてに。
「誰と来たの?」
クラスの女の子達と来てるなら、そっちに入れてもらおう。
空智君は勝手に行動してくれるだろうし。その人達から光をとれるかもだし。
「慧君と!」
あ、だめだ。
希望は一瞬にして断たれた。
「あ、うん、そっか」
「七架も一緒にまわる?」
大人数のほうが楽しいと思うんだ、と笑顔な優子。だけどちょっと今は仁科に会いたくない。
「あー…。いいや、空智君がいるから。ありがとね」
「そう。あ、でもちょっとだけ一緒に来てくれない?」
「うん、もちろん」
優子みたいなかわいい子とまわれるなんて幸せです。ゆうえんち万歳!
空智君はうんざり顔してるけど、そんなの知ったこっちゃない。
「慧君がいなくなっちゃって。一緒に捜してほしいの」
今のなし。
「慧君…じゃない、仁科…っ。何やってんの…」
迷子ってことだよね。
捜さなくても気づいたら帰ってきてるんじゃないかな。仁科なら。
でも、心優しい私は優子の頼みは断れない。
「…しょうがないな、どのへんでいなくなったの?」
「私がポップコーン買おうとして目を離した間に…たぶん《チビッコどうぶつえん》のあたりかな。ひよことかいる所」
「チビッコ……」
わからない…仁科がわからない…。