第14話 仁科と英語
桜色のベッドに、雪の白の枕。
そして同じく桜色のソファ。
全体的に淡い桃色で、乙女ちっくな部屋にショートケーキとにらめっこする乙女が1人。
「…ど、毒などは入っておりませんよね?」
「さあ」
乙女ことこの私、七架はさっきから冷や汗だらだらです。理由はもちろん仁科との距離1mのこの状況。さかも向かい合ってる。
まあ、そんなこんなで大好物のはずのショートケーキが劇物にしか見えないの。
「慧君、毒なんかいれてないよね」
「さあ」
ほんとにここに優子がいてくれてよかったと思う。
って、毒以外は入れたのか!?
…とにかくこの状況から脱するために、ケーキにフォークをいれる。食べたら、帰ろう。
ひたすら無言で無駄に美味しいケーキを口に運んでいると、優子と仁科がなにやら親しげに話しだした。
「今日の宿題なんだったっけ?」
「…英語αのワークとプリント」
内容は本当に他愛ないもの。でも、よく見てると仁科って優子と話してる時だけは、うっすらとだけど笑ったりするんだよね。私と話してる時には絶対に見せないのに。
優子にだけは心ゆるしてるって感じ…。
クラスでも本当に必要なときは話してるみたいだけど、優子以外と話してる仁科見たことないかも。
「英語か…慧君得意でしょ、私のもやって?…あ、そうだ!七架も慧君にやってもらう?」
「えぇっ?」
そりゃもちろん、やってくれるのなら嬉しいけども…。
「仁科…英語得意なんだ?以外…」
何気なく私が言うと、なぜか優子はしまったという顔になって、仁科は少しだけ眉を寄せた。
フォークを持つ手に力を込めて深く溜め息をつく。
「え?」
何か悪いことを言っただろうか。むしろ私は誉めたつもりだった、んだけど。
でも優子はなにか気まずそうだし、仁科はケーキ食べるのやめちゃったし。
「私…なんかまずいこと、言ったかな…?」
「…別に」
どう見たって別にじゃない。
さっきまで明るかったこの部屋のムードは、私の発言のせいで暗くなってしまったらしい。
「優子…これやる」
「慧君、七架は知らなかっただけだから…」
仁科が優子のほうに自分のケーキを寄せた。
そして立ち上がると、振り返りもせずに部屋を出ていった。
私は仁科が出ていってドアが閉まっても、しばらく唖然としていた。優子は相変わらず暗い顔をしていて、話しかけずらい雰囲気。
少し前までこの部屋を彩っていたかわいいケーキさえ、ぽつんと寂しげに見えた。
今回は短めです
やっと話が動いてくれました