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天空のアトリエ  作者: 黒井 夕
黄緑の章
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第10話 緑と空智


空智目線です。

場所は変わって、ここは坂ノ下中学校。


「七架のやつ、どうしてるだろ…」


窓の外をぼんやり眺めながら呟いた。

クラスとやらには、なんなく馴染めた俺だが、さてどうやって心を探すか。

さっき感じた黄緑の光は高校のほうからだった。七架が気づいてればいいけど。


「空~、昼休みだぜ~」


友人、になったらしいやつ、名前は太一とか言ったよーな…に声をかけられて席を立った。

学校ってものはどうも時間に厳しくて落ち着かない。

と、言うか面倒くさい。


「あー…なんかすることあったっけ?」


「外遊びに行くか!」


今日初めて教室を出てみると、改めて生徒の多さに驚いた。

みんな同じところに向かっているようで。

飲み込まれたら帰ってこれる気がしねー…。

とりあえず太一についていこう。


「ちょっとオレトイレ!空は?」


これまた混雑してるな。


「俺はその辺いる」


「了解!」


よっ!とか、ほっ!とか言いながら人の波に突っ込んでいった太一を見送って、混雑する生徒に目をこらしてみた。

真波が言うには強い心を持つやつには光が見えるらしいけど…、今のとこそんなのは見えないのか?


「なんだ、案外難しいんだな」


「光なんてないし!」


ほんと、ほんと。強い心を持つ人間がいるかどうかも怪しくなってくる。

って……んん?

ゆっくりと首を横に回す。聞いたことのある声だった気がしなくもない。

隣、2mほど離れて立っている女子生徒。


「ああっ!お前!空智!」


「緑!」


似合わないスカート姿にいつもの癖っ毛頭。

そこにいるのは、まぎれもなく一緒に天空界から飛んだ緑、そいつだった。

そう言えば、真波が言ってたな。

緑と同じ学校だとかそんなこと。


「よりによって緑かよ…」


緑とは年が近いこともあり、天候の塔でもよく張り合っていたのだ。

俺のが優秀だけど。


「なあ、空智!光見つけたか?あたしはさっぱりだ!」


緑を捕まえてその場から離れる。

人の少ない外の廊下まで来て息をついた。


「ここが下界ってこと忘れるなよ?」


「?忘れてないぞ?」


「おおっぴらに光だとか言うなってことだ!バレたら虹は完成しないかもしれないんだぞ」


俺は緑のこういうとこが苦手なんだよ…。

とにかく雑!な性格が。

ほーい…と対しても気にしてない様子で返事して、緑は手すりから身を乗り出した。

ちなみにここは2階。それでも結構な高さだ。


「落ちるぞ」


「だーいじょぶだって。…………お?」


何か見つけたように目に手をかざす。

まったく…また乗り出しやがって、見てるこっちが慌てる。

やっと七架と別行動だってのに、これじゃ大して変わらないじゃないか。


「空智!ちょっと見てみろ!あれ、光じゃないか?」


光?

とっさに俺も緑の隣に乗り出した。

確かに、小さいけれど明るく輝く光を持つ生徒が


「赤…やる気の心だな」


俺が呟いてる間に緑は驚くべき行動にでた。

手すりに勢いよく足をかけたのだ。


「おい!お前、何して…っ」


「あたしの物だからな!早い者勝ちだ!」


「ちょっ、待っ」


俺の制止を振り切り、次の瞬間緑は飛び出していた。

スタンといい音が聞こえる。

そうだった…緑も七架と同じ風のフロア出身だった…。

飛び出した瞬間、緑は足元に風の足場を作り、速度を落としてから安全に着地したのだった。


「やられた…」


力は下界でも使えるのか、知らなかった。

いきなり目の前に現れた少女に光を持つ男子生徒が驚いている間に、緑は右手をその生徒の胸にとんと当てた。


「ちょいと失礼!」


光が男子生徒から緑の手に移動する。


「もう行ってもいいぞ!ありがとな!」


男子生徒が首をかしげながら行ってしまうと、緑は俺に向けて赤い宝石をかかげた。

少し小ぶりだか、心にはかわりなかった。






―――――――………

その夜、散々迷ったあげく七架にそのことを話した。


「へー、あたしなんか光すら見つからなかったよ」


「俺が言いたいのは、下界でも力が使えるってことだ。お前の事情は聞いてない」


七架が拳を構えたが気にしない。

俺の力は…雲。

あの時、緑より速く心を取ることは出来たはずなのに。


「まあ、そういうことだから。おやすみ」


「はぁ!?ぜんっぜん意味がわかりません!」


七架にどうこう言う前に、俺もまだまだってことか?

……いや、それだけは認めない。認めたくない!




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