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天空のアトリエ  作者: 黒井 夕
黄緑の章
10/19

第9話 質問攻め


あんまりストーリーに関係のない話です。


春を連想する、若草のような黄緑は


心の奥の優しさの色






―――――――――……


「それじゃあ、ここで待っていて…呼んだら入ってきて」


「はい!」


おじさん先生の背中を見送って、ひとり廊下に残された。

この学校というもの、見たことのないもので溢れかえっている。

長い廊下に沿って幾つもの部屋が並び、その中にはたくさんの机。椅子も1つずつ付いていてみんなそれに座って前を見ていた。

窮屈そうだな…。


「雲見ー」


そんなことをぼーっと考えていると名前を呼ばれた。


「は、はい!」


ドアに手をつき、大きな音を立てて中に入る。

確か、前に立てばいいんだよね?

たくさんの視線を浴びて、心がけていた笑顔が固まってきたような気がする。でも仕方ない、私だって緊張くらいするんだから。


「こ、この度…は、えーと、あの…」


おい、なに言ってんだ私。


「雲見さん、とりあえず、名前言おうか」


おじさん先生にのほほーんな口調で言われて、生徒が一斉に笑い出す。

そうだ、そうだよ、こういう時はまず名前だよ!落ち着け。

天候の塔ではできたじゃないか!

落ち着け、いいから落ち着け。

……はっ!緊張のあまりひとりコントしてしまった。


「あ、はは…雲見 七架です。取り乱しました…」


私の慌てぶりが相当おかしかったのか、みんな必死に笑いをこらえているような。そう見えるのは私だけ?


「雲見は―…」


「せんせー!ここが空いてます!」


一番後ろの窓側の生徒が、手を上げて勢いよく立ち上がった。

その生徒は私を見ておかしそうに笑う。


「七架、自己紹介ナイスだった」


「優子!」


優子はこっちこっちと手招きすると座った。

いいですよね?先生に目で尋ねるとうなずいてくれた。


「おんなじクラスだったんだ」


「さっきごめんね?置いていっちゃって。ここにいるってことは、無事にたどり着いたんだと思うけど」


…やっぱり優しいなあ。

校内案内があったとは絶対に言わないでおこう。


「ではみんな、雲見と仲良くするように」


先生が出ていった後、私と隣の席の優子はクラスメイト主に女子に囲まれた。

新しいメンバーに興味津々なのだろう。

私の場合は天候の塔で、初出勤当日にもみくちゃにされた経験があるからなんてことないけど、初めての人は結構焦るだろうな。


「雲見……七架だよね?」

「うん、そうだよ」


「分からないことあったら聞いちゃって!」

「ありがと。どんどん聞かせてもらうかも」


どの質問から答えればいいか迷うだろうし。

そういう場合は次の質問される前にずばっと答えればよい。私なりの結論。


「雲見さんってここに来る前は、どのへんに住んでたの?」

「えっとね…」


ちょっと待て!

この質問にはずばっと答えたら駄目だろ。

危な、おもいっきり天空界って言うとこだった。もしそんなこと言って怪しまれたりしたら、心なんか集めれるわけないし、運が悪いと天空界に戻らされるかもしれない。そしたら間違いなくあの空智君に殺される、殺されるまでいかなくても半殺し…いや3分の2殺しくらいにされるかも。


「ここからは遠くていけないけど、天空町ってとこ。すっごい田舎」


一瞬で自分の弱い立場を把握、適当に架空の町を造り上げた。


「天空町?聞いたことないけど、県外?」


「県外?あ、ああ、うんそう」


県外ってどういう意味だ?

みんな納得してるから間違って使ったわけではないと思うけど。


と、まあ、こんな感じで質問は次のチャイムが鳴るまで終わらなかった。

くたぁーと机にのびる。

つ、疲れた、質問攻め。優子に聞いた限りでは授業は50分×7あるから…それに10分休憩もあって…。

最後までもつ気がしない…。


「七架、あと40分あるから、寝てたら怒られるよ?」


「40分…」


優子の慰めになってない心遣いに、さらに机に沈んだ。


空智君は今頃なにやってるんだろう。






次は空智視点な気がします。

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