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クレッシェンテ抄録

ぬいぐるみのお医者さん

作者: 高里奏
掲載日:2011/01/15


 小さい時、妹が泣きながらぬいぐるみを持ってきたことがあった。



「どうしたんだよ」

「うさちゃんおててとれちゃった……」

「うわ、重態だ」

 妹のお気に入りのうさぎのぬいぐるみは見事に腕が宙ぶらりん。

「緊急手術が必要だな」

「しゅーつ?」

「そ、すぐ直してやるよ」

 手先の器用さには自信があった。

「んじゃあ手術を始める」

 そう言って裁縫箱を取り出し、ちくちくと腕を縫い付けてく。

 痕が目立たないように慎重に縫う。

「ほら、直ったぜ」

「うわぁ、うさちゃん!」

 嬉しそうに妹がうさぎに抱きつく姿を見て、俺も嬉しくなった。




「おい、早くしろよ。次間に合わないだろ」

「ごめん。って、読めない。字、汚すぎ」

「うるせぇ、医者ってのはんなもんだよ」

 異界の娘は文句が多い。

 これを助手に使うのは本当に疲れる。

「あんた、何で医者なんてやってんだよ」

「んー、うさぎのせいだ」

「うさぎ?」

「ああ」

 

 まさか、あんな遊びがきっかけだなんて言える訳が無い。


「なにそれ」

「お前には関係ねーだろ? それより急げ。薬は番号順に並べろよ」

「はいはい、って私はパシリか!」

「給料払ってんだ。そんくらいやってくれ」


 けれど、今はそれに感謝しているかもしれない。

 こいつと知り合ったのもそのお蔭だ。

 

「たまに顔くらい見に行くか」

「へ?」

「なんでもねーよ」

 12も離れた妹を訪ねるのは少しばかり気恥ずかしいが、今度はこいつも連れて行こう。

 その時には、うさぎの出番があってもいいかもしれない。


 柄にも無くそんなことを考えた。

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