#記念日にショートショートをNo.73『愛は星の糸に溶けて』(The Promise of Love dissolves into the threads of the Stars.)
2026年7月7日(火)七夕 公開
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▶︎(https://note.com/amioritumugi/n/ncefe78c1f22a)
あの日、僕たちは約束した。
決して、お互いを好きにならないと。
ひとつ屋根の下、縁側でお互いの気持ちを打ち明けたあの日、その気持ちを自分の心に封印することを。
「織愛!!」
必死に伸ばした腕の先、指のほんの少し先で、君がゆっくと振り返り、懸命に笑って、
ー消えた。
白いベッドの上で目を閉じて横たわる織愛を見つめる。隣りで、母さんが大きく慟哭し、ぼろぼろと涙を零した。
「母さん……」
母さんの肩に手を添える。細かい顫動が伝わって来て、途端、目の内側を、涙が迫り上がった。
「うっ……!」
怺え切れなくなった涙が、濁流のように頬を濡らす。憚ることなんて出来なかった。母さんの隣りで、慟哭する。母さんが僕を引き寄せ、背中をさすった。その感触に、外すまいと怺えていた最後の箍が外れる。
「うおおおおお!!!!!」
絶叫する。
「牽生のせいじゃない、牽生のせいじゃないからね。」
「2人を産んでしまった、私のせいだから。」
「兄妹で産んでしまって、ごめんね。」
病室のベッドサイド、窓の横の洋服掛けに吊るされた短冊が、揺れている。
「
生まれ変わったら、牽生と恋人同士になれますように。
織愛
」
はるか眼下、小高い丘の上に建つ病院の、小さな明かりが灯る一室で、母さんが泣いている。
母さん、ごめん。
でも僕らは、一年に一度七夕の今日だけ、恋人同士でいられるようになったから。あとの364日は、会えないけれども。
病室の開いている窓に、星で溶かした短冊を流す。
窓で煌めいた光の紙に、僕と織愛が眠るベッドサイドで泣いていた母さんが顔を上げる。
窓際に歩み寄った母さんがその光の紙に手を伸ばし、少しだけ寂しそうな笑みを浮かべ、ーそして安心したように微笑んだ。
「
お母さん
七夕の今日、2人を恋人同士にしてくれてありがとう。
牽生&織愛
」
【登場人物】
●牽生
○織愛




