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魔女の末裔、婿が必要なので魔法を使って婚活してみた  作者: ぽよみ30号


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月詠秋奈の幸せな結婚


美しいステンドグラスで煌めいているチャペルの中で、ウエディングドレスを着た秋奈と、タキシードを着せられた昴が向かい合っている。


「え?本当にやるの?今から?結婚式を?」


「ふふ、昴さん。『動かないで』くださいね。もうすぐ式が始まるから」


秋奈はニコリと昴に笑いかけた。


そして「桃堕狼連合」の四人は、チャペルの中に並んでいる長椅子に座らされていた。


しかしこのチャペルは全て秋奈が満月鏡で作り出した幻影なので、実際にそこに椅子はない。


しかし彼らは、秋奈に三日月ノ玉を使われて「私たちの結婚式を、そこに座って見ていてくださいね」と強制的な命令をされているので、空気椅子の姿勢で無理やり固定されている。


さらに「座って『見ている』」ようにも命令されているので、彼らは瞬きをする権利も魔女あきなに奪われている。


しかし目が乾く心配はない。

何故なら彼らはずっとあの魔女の恐ろしさと、強制的な空気椅子による脚の痛みのせいで、涙が止まらないからだ。


彼らはまるで本物の結婚式に感動している参列者のように、涙を流しながらそこに座って新郎新婦を見つめ続けていた──瞬きもせず。


新郎新婦となった秋奈と昴の前には、秋奈が幻影で作り出した神父が立っている。


「それではこれより、新郎・昴と新婦・秋奈の結婚式を始めます」


幻影の神父が口を開き、ついに結婚式は始まった。


「あの、秋奈さん。やっぱりこんなのおかしいからやめよう……ん!?」


昴がそう言いながらその場から離れようとすると、彼は異変に気がついた。


(指一本……動かせないっ……!)


「ふふ、昴さん。照れちゃってるんですね。でも昴さんは『この結婚式を完璧にやり遂げる』から大丈夫ですよ♡」


秋奈の言葉の途中で、三日月ノ玉が光っていた。


昴は、「この結婚式を完璧にやり遂げる」ことが彼の「真実」であると脳に受け入れられてしまった。


つまり、式が終わるまで彼はもう逃げられないのだ。


「まず、誓いの言葉です」


神父はそう言った後、少し息を吸ってから口を開いた。


「新婦、秋奈さん。

あなたは昴さんを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しいときも。これを愛し、敬い、慰め、助け、命ある限り真心を尽くすことを、誓いますか?」


「はいっ!誓います♡」


秋奈はとても嬉しそうな笑顔で答え、昴の顔を見た。


昴は少し泣きそうな顔をしながら神父に助けを求めていたが、その神父は秋奈が作り出している幻影なので助けてくれるわけがない。


次に神父は昴の方に向き直り、言った。


「新郎、昴さん。

あなたはこの美しい秋奈さんを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しいときも、超絶怒涛に愛し、最高に敬い、優しく慰め、絶対に助け、命ある限り真心を尽くすことを、誓いますッッッ!!!」


「え!?断定!?僕の意思は!?あとなんか途中も変じゃありませんでした!?」


昴の声は誰にも届かなかった。

神父は幻影、秋奈は無視。

後ろで椅子に座らされている哀れな四人は瞬き一つせずに泣きながらこちらを見ているだけで、話せそうにもない。


「それでは……ベールを捲ってください」


神父がそう言うと昴の手は勝手に動き、新婦あきなの顔を覆っているウエディングドレスのベールを捲った。


「誓いの、キスを」


「───えっ!?!?」


昴は驚愕した。

この展開は、考えていなかったからだ。


誰かに助けてほしいと思ったが、背後の四人は動けないし、秋奈本人は目を閉じてこちらに唇を突き出していて準備万端だ。


「わ!うわっ!そんなっ!」


昴は後頭部を何者かの手で押されるような感覚で無理やり前に出され、自分の顔を強制的に秋奈に近づけられていく。


「それはまずい、それはまずいからあああああっっっ!!!」


しかし昴は驚異的な精神力で、三日月ノ玉の魔法に耐えた。


秋奈は昴のそんな様子を薄目で見て、「チッ」と小さく舌打ちをしてから小声で呟いた。


『昴さんは、月詠秋奈に世界一熱いキスをする』


秋奈の言葉の間、三日月ノ玉はとてつもなく強い月光色の光を放った。

秋奈はかつてないほどに強い魔力を三日月ノ玉に注ぎ込み、強制キスの命令を最大限に強化した。


「うわ、うわあああ!何か信じられないぐらい強い力が働いているっ……!!」


昴は先ほどまでとは比べ物にならない力によって頭を押され、自分の唇が秋奈の唇に吸い寄せられていくのを感じた。


「んぷっ……!!!」


「♡」


ついに、二人の唇は重なった。


昴は顔を真っ赤にして驚き、秋奈は喜び、桃堕狼連合の四人は「俺たちは何を見せられているのだろうか」と泣いていた。


このキスは秋奈にとって初めてのキス。

しかし彼女は少しも惜しくはなかった。大好きな人に捧げられたのだから。


そして、これは昴にとっても初めてのキスであった。

彼のファーストキスは、なんと魔女に魔法で強奪されて喪失したのだ。


しかし彼は既に秋奈を受け入れていた。

自分が秋奈から離れた場合、どうなるかを考えたからだ。

自分と別れた秋奈は、おそらく医学科の他の男を、もしかすると昴の友人を新しいターゲットにするかもしれない。


こんな思いをするのは自分一人で十分だし、この暴走機関車のような女を受け入れられるのは、おそらく世界で自分しかいないはず。


それにここまで真っ直ぐに、そして強烈に愛されてしまうと──昴はもう、秋奈がいない世界を想像するのは難しかった。


(いや、長いなっ!!)


(ああ……幸せ……♡)


「世界一熱いキス」と命令されている昴は1分以上、唇を離すことを許されなかった。


その間、桃堕狼連合の四人は空気椅子のまま、瞬きも許されずにこの光景を見せつけられ続けていた。

彼らの涙は、もはや苦痛ではなく絶望から流れていた。


「ぷはあっ!」


ようやく唇を離したあとに昴が見たのは、世界一幸せと言わんばかりに楽しそうな、秋奈の屈託のない笑顔だった。


そしてその長い長い誓いのキスのあと、神父が再び口を開いた。


「神とここにお集まりの皆様の前で、お二人が夫婦となる誓いを交わされたことを確認し、今ここに結婚が成立したことを宣言します」


チャペルでの挙式はそこで終了し、昴と桃堕狼連合の四人が「やっと終わった」と思っていると、なんとチャペルはそのまま披露宴会場へと姿を変えた。


「ここからは披露宴です!私はお色直し!」


秋奈がそう言うと彼女が着ていた純白のウエディングドレスは、月光色のカクテルドレスへと変化した。


披露宴は秋奈が脳内に思い描いていた通りに進み、友人代表のスピーチは何故か桃堕狼連合の鷲田が代表として選ばれた。


彼らはここまで1時間以上、瞬きすら許されないまま空気椅子をさせられたことで既にボロボロで、鷲田もまともに歩ける状態ではなかった。


しかし秋奈が三日月ノ玉に魔力を込めて『前に来て』と一言いうと、彼は操られた人形のようにカクカクと前に歩かされ、幻影で作られたマイクの前に立たされた。


一瞬の静寂のあと、鷲田による「友人代表のスピーチ」は始まった。


「も、もう許してくれぇ……家に帰りたいよぉ……!誰か助けてくれぇ……!」


『ちゃんとスピーチして』


「い、あがっ……お、おれ、いや、ぼく、はっ……僕と昴くんの出会いは──」


一瞬本音で助けを求めた鷲田を、秋奈は素早く再洗脳し、スピーチを始めさせた。


「魔女怖いよぉ……」


昴は桃堕狼連合には執拗に絡まれて、何度も危険な目に遭わされたが、もう許してやってほしい気持ちが湧いていた。


急な洗脳のせいで鷲田は多少混乱したが、洗脳がしっかりと決まったのか、きちんとした彼のスピーチが始まった。


「僕と昴くんの出会いは、僕らが駅前で女性を強引にナンパしていたときに彼にボコボコにされた日です。その後も何度もリベンジを挑みましたが毎回逃げられ、そして今日もまた殴られました」


前代未聞のスピーチだが、秋奈は「うんうん」と頷きながら、満足げに聞いていた。


「そして僕と秋奈さんの出会いはついさっきで、昴くんを襲おうと部屋に行った際、彼の部屋に秋奈さんが不当に居座っていたのを見たときです。そのとき苗字のことで悩んでいる僕を、秋奈さんは優しく励ましてくれました」


彼の滅茶苦茶なスピーチにより、二人の結婚式は感動のフィナーレへと向かう。


「昴くん、秋奈さん。どうかお幸せになってください!」


昴は三日月ノ玉の洗脳の効果に戦慄し、秋奈は彼のスピーチに満足して微笑んでいた。


─────────────────


「あー、楽しかったぁ!」


すっかり夜になった帰り道、秋奈は満足げな笑顔を浮かべながら昴と共に歩いていた。


「本当に彼らは大丈夫なのか?ボロボロだったけど……」


「ええ、新月刀かたなで体は回復させましたし、三日月まがたまで記憶は消しておきましたので大丈夫です。たぶん」


「『たぶん』って……」


昴が顔を顰めると、秋奈は「そんなことより!」と昴に向き直った。


「あのプロポーズ、もちろん本気ですよね?昴さん!」


「そんなわけないだろ!」


「がーん!!」


昴はあの状況を意図的に秋奈が作り出し、全てを自分の目的のために利用したということに気がついている。


そんな状況で無理やり言わされた言葉で、結婚を決められるはずがない。


「そんなァ……誓いのキスまでしてくれたのにぃ……」


「やらせたんだろ!君が!魔法で!無理やり!」


「えへへ」


秋奈は悪戯っ子のような笑みを浮かべ、舌を出した。


そんな秋奈を見て、昴は「ご、ごほん!」と一度咳をしてから話し始めた。


「でもまあ……仮に、仮にだけど、今日から君と僕が友人として付き合っていって……最終的に僕が、その……プロポーズをすることになったら……それはやぶさかではないというか……!」


「ッ♡!?♡!?♡!?」


秋奈は、昴の言葉に強烈に反応した。


「それは、やっぱり私のことが好きだということですね!?」


「こ、こら!やっぱり君はちゃんと人の話を聞いた方がいい!『仮に』と言っただろう!」


「もう!昴さんったら照れ屋なんだから!ほら、帰りましょう!二人の愛の巣に!♡!♡」


「何が『愛の巣』だ!あれは僕が借りているアパートで、君は不法侵入の居座り妻だよ!」


「え、いま私のことを『妻』って呼びました?」


「都合のいい単語以外は聞こえなくなる耳栓でもしてるのか!?」



──こうして、二人の物語は終わった。


昴は最終的に本当に秋奈にプロポーズし、夫婦となった二人は息子と娘を授かることになる。


その兄妹は数奇な運命を辿り、夜空を駆ける大冒険をすることになるのだが……それはまた、別のお話。



「魔女の末裔、婿が必要なので魔法を使って婚活してみた」

終わり


あとがき


ここまで読んでいただきありがとうございました!


さて。実はこのお話は、とあるお話の外伝作品なのです!


物語の終わりで語られた兄妹の名前は「ヨイ」と「スイ」。

この兄妹がなんと怪盗になって大冒険するお話が、既に公開されています!


↓ 「魔女の末裔、怪盗となり月夜に舞う」↓

https://ncode.syosetu.com/n9785ln/


よろしければぜひ、そちらもご一読ください!


それでは改めまして、最後までお読みいただきありがとうございました!

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