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魔女の末裔、婿が必要なので魔法を使って婚活してみた  作者: ぽよみ30号


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月詠秋奈の真骨頂

「くっくっく、鷹宮ァ!少しでも反撃したらこの女にグサリだからなぁ!わかってんだろうな!」


「ぐっ……!」


鷹宮昴は困っていた。


自分を殴るためにバットを振り回す三人の男と、秋奈の首元にナイフを突きつけている男。


運動神経抜群かつ剣の達人である彼にとって、金属バットを持った三人を倒すことはわけのないことである。


しかし反撃すれば、人質に取られている秋奈がナイフで刺されてしまう。


(いったい、どうすれば……!)


八方塞がりの昴は、とにかく三人が振り回しているバットを躱し続けていた。


反撃して秋奈が刺されるのは絶対にダメだし、躱すのをやめて自分が大怪我するのも嫌だ。


来月には剣道の大会がある。

ここで自分が大怪我してしまうと、剣道部に大きな迷惑がかかってしまう。


「はっはっは、無様だなぁ!鷹宮!」


秋奈の喉元にナイフを突きつけて、ニヤニヤと笑う桃田。


しかし昴が恐ろしかったのは、ナイフを「突きつけている」桃田ではない。


ナイフを「突きつけられている」秋奈の方だった。


「ふふっ」


彼女は少しも怯えることもなく、ただニコニコと笑いながら昴を見ている。


いったいどんな精神力があれば、喉に刃物を突きつけられたまま笑えるのだろうか。


「昴さーん!助けてほしいですかー?いまピンチですよねー?」


秋奈は昴に話しかけた。


彼女はこの状況で昴を助ける方法がある。

何故なら、昴は部屋に置いてあった秋奈のリュックを背負ってきている。


つまり、そのリュックの中には秋奈まじょが魔法を使うために必要な神器が入っている。


昴は秋奈が拐われたと分かったとき、部屋に置いてあったそれを持っていくべきだと判断したのだ。


「ああ!悪いけど、早く助けてくれないかな!」


昴は彼らが振り回すバットをなんとか躱しながら、返事をした。


昴の表情には少しだけ余裕があった。


こんな状況だが、秋奈が魔法さえ使ってくれれば全て解決する。二人とも助かるのだ。


「じゃあ、助けてほしいなら今すぐ私に『プロポーズ』してください!」


「はあ!?」


秋奈の突拍子もない言葉に昴は驚き、彼の顔に少しだけあった余裕は消えた。


そして驚いた拍子に、昴の頭をバットが少し掠ってしまった。


「してくれないなら、もういいんで反撃してください!私、ここで死にまーす!」


「ッ……!?」


昴は秋奈の表情を見て、背筋がゾクリとした。


彼女はこんな状況にも関わらず微笑んでおり、目が座っている。


──本気だ。


あの女は、本気で言っている。


あの女は本気でここで死んでもいいと思っている上に、確信している。


この状況なら絶対に昴がプロポーズをすると。


(まて、おかしいぞ……!?)


昴の頭の中に、一つの疑問が浮かんだ。


なんであの女は捕まっているんだ?

魔法が使えるんだぞ?

アパートに来たこの男たちを魔法で瞬殺することなんか、わけなかったはずだ。

あの「人を洗脳する石」を光らせながら『帰れ』と一言いえば良かっただけだ。


──何故、素直に誘拐なんかされたんだ?


「あ、ああああっっ!!!」


思考の末、昴の中に一つの結論が出た。


魔女・月詠秋奈があっさりと彼らに誘拐された理由。


それは──


「まさか、きみ……まさか……ッ!!」


「えへへ。ほら、このままだと私が死んじゃいますよ?早くプロポーズしてくださいよぉ、昴さん♡」


──この状況を作り出すため!!!


(なんて女だッ!!!)


秋奈このおんなは、この男たちがアパートに来たときにはすでに、この展開になることを読み切っていた。


月詠秋奈の本当の個性は、「月光色の魔力」ではなかった。


彼女はどんなときでも状況を読み切り、展開を予測し、自分の目的のために全ての要素を勝利のために使うことができる。


姉妹でトランプやボードゲームをするときも、秋奈より知性がある春華や、秋奈よりずる賢い夏波を、彼女はこの能力ちからで圧倒してきた。


彼女の真骨頂──それは、この異常とも言える「勝負強さ」なのだ。


「嘘だろ……!?」


昴は考えた。


もしこいつらが君を刺したらどうする?

僕が助けにこなかったらどうする?

僕が神器を持って来なかったらどうする?

僕が我が身可愛さに反撃したらどうする?


「えへへ」


屈託なく笑う彼女の表情は、語っている。

自分は全部読み切っており、そして賭けたのだと。


この人たちは誰かを刺すような人ではない。

責任感が強い昴は必ず助けに来る。

しっかり者の昴は必ず神器を持ってくる。

私を大切に思っている(はずの)昴さんは、反撃もしない。


喉元にナイフを突きつけられている秋奈は、決して追い詰められていない。


一人の男を、圧倒的に追い詰めていた。


「く、くそおおおおおおお!!!」


そして秋奈に追い詰められた男は叫んだ。


「……っこんして……くれ……!」


「!!」


秋奈はその男の口が動き、掠れた声を出したのを聞いて目を輝かせた。


勝った。自分はこの勝負に。


それを確信した彼女は、大声をあげた。


「昴さん、よく聞こえませんよー!もっと大きな声でお願いしますっ!!」


「──ッッッ!!」


嫌だ。こんな狂女に、言いたくない。

でも、もう自分は言うしかないのだ。

他の選択肢は、他ならぬ彼女の手によって全て潰されている。


「うわああああ!!!秋奈さん!!僕と……僕と、結婚してくれえええええ!!!」


昴のプロポーズを聞いて「勝利」した秋奈は満面の笑みを浮かべ、肺の底まで大きく息を吸ってから──プロポーズの返事をした。


「───はいっ!喜んでええええええええッッッ♡!♡!♡!」


秋奈がそう叫んだ瞬間、昴が背負っていたリュックが月光色に輝いた。


リュックの中にある神器は三つとも、月光色に激しく光り輝いている。


すると昴の体は「満月鏡」の魔法で透明になり、さらに「新月刀」の魔法で強化された。


そして──


『桃田さん。あなたは体を動かすことができません』


──秋奈は「三日月ノ玉」の魔法を使い、桃田に「真実」を伝えて彼の動きを封じた。



複数の神器を同時に使用することは、魔力を大きく消費する。


月詠家のたいていの魔女は、神器の同時使用ができない。


二つ同時に使える魔女は、数世代に一人か二人。


そして三つ同時に使える魔女は、月詠家1000年の歴史の中で──秋奈ただ一人だけだった。


医者にはなれなかった彼女だが、「月詠の魔女」としては誰にも負けない才能を持っていたのだ。


「えっ!?何が起きた!?」

「ど、どこにいったんだ!?」

「ぶへっ!!」


バットを持っていた男たちは、昴の姿が消えて驚愕している間に腹に一撃ずつ拳を入れられ、その場に蹲って動けなくなった。


三人の男を片付けた昴はすぐに秋奈の方へ駆け寄り、動けなくなっている桃田が持っているナイフを取り上げ、桃田の腹にも拳を入れた。


「えへへ。わたし、確かに聞きましたからね。昴さんのプ・ロ・ポ・ー・ズ♡」


「ぐっ……!」


そして誰よりも楽しそうな「人質」の体を縛っていた縄を、桃田から取り上げたナイフで切った。


彼は秋奈を傷つけることなく、そして自分も怪我をせず、このトラブルを解決した。


ただ一つ起きた問題といえば──


「えへへ、昴さん大好きぃ……♡」


──自分の腕にくっついているこの女と、結婚の約束をさせられたことだ。


「ね、昴さん。結婚式しましょう」


「あー……ウン、そのうち、ね……」


昴は、なんとか結婚式の前にこの女から逃げ出す算段を考えていた。


そしてそれは、四人の不良を倒すことよりも難しいことだけは確かである。


「そのうち?何言ってるんですか昴さん」


「……は?」


秋奈は「ふふっ!」と笑い、昴が背負うリュックの中に手を突っ込み、満月鏡を取り出した。


彼女がその手に持つ満月鏡は、月光色に光っている。


「それっ!!」


彼女が声をあげるとその鏡はより激しく光り輝き、廃工場の中を強く照らした。


そして鏡から出ている光に照らされた廃工場はみるみるうちに姿を変え、美しいステンドグラスと十字架が飾られた、厳かな教会……結婚式場のチャペルのように変化した。


「は!?」


驚いた昴が慌てて秋奈の方に振り向くと、彼女は純白のウエディングドレスに身を包み、その顔を白いベールで覆っている。


「ええっ!?」


そして自分の服も月光色の魔法で変化していき、黒いタキシードを着せられた。


「結婚式は……今から始まるんですよっ♡」


秋奈はそう言って、幸せそうに笑った。



秋奈の「勝負強さ」は、先天的な素質もありますが後天的に身につけた強さでもあります。


彼女は10歳の頃に月光色の魔力を出して「月詠の魔女」だとわかってから、母や祖母から魔女・医者になる娘として厳しく育てられました。


常に「後継」というプレッシャーに押し潰されながら努力を重ね、最後はE判定の医学科に突撃して玉砕したという悲しい青春。


それが秋奈を強靭きょうじんな精神に鍛えあげ、喉元を凶刃きょうじんに晒されても怯まない狂人きょうじんとしたのです。


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