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魔女の末裔、婿が必要なので魔法を使って婚活してみた  作者: ぽよみ30号


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VS桃堕狼連合

「ん……」


昴が部屋で目を覚ますと、昨日の夜までは確かに部屋の中にいた女は消えていた。


「なんだ、冗談だったのか……あの子、家に帰ったんだな……名前は、えーっと……『秋奈』……」


昴がその名を呼んだ瞬間、部屋の中の何もなかった空間が突然月光色に光り輝き、一人の女が姿を現した。


「呼びました?」


「どうわああああああっっっ!!!???」


昴は驚き、色々と言いたいことがあったが、とりあえず一番聞きたいことを聞くことにした。


「なんで消えてたんだ!?」


「だって、恥ずかしいじゃないですか。寝起きの顔を見られるなんて……常識的に考えて……」


秋奈はそう言って両手で頬を押さえながら、クネクネと揺れていた。


「君の中の『恥じらい』と『常識』がいったいどういう仕組みになっているのか、いつか教えてくれるかな」


「あと昴さん、昨日お風呂借りて思ったんですけどこの家トリートメントとかボディソープとか洗顔とかないんですか?あとヘアオイルも。シャンプーと石鹸だけってヤバいですよ。私の髪と肌、パサパサのタワシと砂漠みたいになっちゃいますよ?」


「勝手に住み着いておいてなんて図々しいひとだ。そんなものはないよ。それより、さっさと帰ってくれないかな」


昴はそう言って秋奈の両肩を掴んだ。

無論、彼女を部屋から追い出すためだ。


しかし──


「うぐっ……!なんだ!?人ってこんなに『動かない』ものなのか!?どんな体幹してるんだ!?」


──秋奈は仁王立ちしたまま一歩も動かない。


「ふふ、新月刀で体幹を重点的に強化しているんです。ちなみに昴さんの選択肢は二つですよ」


秋奈は手をピースの形にし、言った。


「今すぐ私にプロポーズするか、私との仲を深めるために『朝ごはんを作ってくれ』と言うかです」


「帰ってくれええええ……!!」


その後、昴は苦渋の決断で「朝ごはん」を選択した。


─────────────────



「〜♪」


今日は日曜日。

部活のために昴が大学に行っているあいだ、秋奈は楽しそうに彼の部屋の掃除をしていた。


同棲生活も今日で3日目。

3日間暮らしたことにより秋奈は、自分が一目惚れした昴はやはりかっこよくて、優しくて、頼り甲斐がある素晴らしい男性だと分かった。


彼女はもはや医者の婿候補としてではなく、一人の男性として昴を大好きになっていた。


そして四姉妹の三女として育った彼女にとっては、同年代の男性と暮らすということも新鮮であり、とても楽しかった。


今の秋奈は、仮に昴が医者にならなくとも結婚しようと考えていた。


「あっ、もし昴さんがお医者さんにならないなら、いっそのこと医院とか月詠の魔女とかは春姉に任せて……私は昴さんと子供を作って魔力の遺伝だけさせればいいかも!」


秋奈は言い終わった後に自分で「はっ、『子供を作る』!?昴さんと!?」とそれを想像して激しく赤面した。


「昴さんの子供なら運動神経抜群だったり、めっちゃ頭良かったりするのかな?えー、最高じゃん……!」


秋奈は赤くなった頬に手を当て、クネクネと体をよじった。


運動神経がゼロで、勉強も得意ではなかった秋奈にとって、その二つが子供に遺伝するのはとても嬉しいことだった。


「えー、子供の名前はどうしよう?『昴』ってたしか星の集まりのことだよね、じゃあ子供も空とか星の名前がいいなぁ……」


秋奈の頭の中に、宵の夜空を横切る一筋の彗星のイメージが浮かんだ。


「よしっ!男の子なら『宵』って書いて『ダークネス』くん!女の子なら『彗』って書いて『ライトニング』ちゃんにしよっと!!」


秋奈がとんでもない名前を考案したところで彼女の幸せはピークとなり、ついには踊りながら歌い始めた。


「私たちけっこういい感じ〜♪いつ結婚できるかな〜♪プロポーズされるまで居座るぞ〜♪ 結婚するまで居座るぞ〜♪結婚式はいつにする〜♪お色直しのドレスは何色〜♪」


ピンポーン……


恐ろしい歌詞のオリジナルソングを秋奈が歌っていると、部屋の呼び鈴が鳴った。


(宅配か何かかな?留守中にこういうのを受け取ってあげるのも、妻の役目だよね!)


秋奈はそう判断し、部屋のドアを開けた。


「あれ?」


しかしドアの先にいたのは宅配便の配達員ではなく、ガラの悪い四人の男だった。


「ああん?なんだお前。鷹宮はどうした?」


「え?私は昴さんの妻ですが……あなた達は?」


平然とそう答える秋奈の言葉を聞いて、四人の男たちはどよめいた。


「あいつ、既婚者だったのか?」

「学生なのに?」

「そんなことあり得るのか?」

「それよりこの女、なんか目がイッてないすか?」


男たちのうちの一人が、秋奈に向かって脅すように話し始めた。


「俺たちはなぁ、ここらじゃ泣く子も黙る『桃堕狼連合ももたろうれんごう』だ。平成最恐のグループで、俺がリーダーの桃田ももただ」


「俺は犬山いぬやま


「俺は猿野さるの


「俺は鷲田わしだだ」


「あれ?きじは?雉の人はいないんですか?」


秋奈が純粋な目でそう聞くと、鷲田と名乗った男はその場にしゃがみ込んでしまった。


「お、俺だってそう思うけど、でもこういう名字で生まれちゃったんだから仕方ないじゃん……なんで毎回俺が責められるみたいな流れになるんだよ……雉がいないのに桃田さんが強引にこんなチーム名にしたから、俺が毎回こんな扱いに……」


「な、なんかごめんなさい。わ、鷲もかっこいいですよね?雉より強いし、私は鷲の方がいいと思いますよ?」


秋奈が慌てて慰めると、鷲田は目にうっすらと涙を溜めたまま立ち上がった。

どうにか自信を取り戻したようだ。


「ところでお前……さっき妻だとか言ったな。鷹宮の女ってことで間違いないか?」


桃田がそう聞くと秋奈はパアァと表情を明るくし、目を輝かせた。


「もう一回言ってください!!」


「は?」


「さっき、『鷹宮の』……なんて言いましたか!?」


「た、鷹宮の……女?」


桃田は秋奈のテンションに少し引きながら、自分の言葉を繰り返した。


嗚呼ああ、なんていい響き!!そうです!私は……『鷹宮の女』です!!」


その呼称は「月詠の魔女」という望まぬ称号を押し付けられてきた秋奈にとって、ずっとずっと嬉しいものであった。


彼女はもう「月詠の魔女」という称号は捨てて、「鷹宮の女」としてずっと生きていきたいと思った。


「リーダー、やっぱこいつヤバい女ですよ。放っておいた方が……」


猿野は桃堕狼連合の中で最も勘が鋭い男。

桃田は彼の直感のおかげで助かったことが、これまで何度もあった。


「まあ待て」


しかし桃田は不安そうな顔をする猿野を手で制し、言った。


「こいつをさらえば、鷹宮は絶対に自分の女を助けに来るはず。つまり、いつものように逃げたりできないってことだ」


桃田はそう言って、秋奈の手を掴んだ。


「姉ちゃん、俺たちとちょっと来てもらうぜ?」


「え!?あー……えっと……」


秋奈は少しの間だけ目を瞑って俯き、何かを考えている様子だった。


「はいっ!わかりました!」


「いや、何をどう考えたらこの状況で『わかりました!』ってなるんだよ」


顔をあげた秋奈は何故か満面の笑顔で、その笑顔を見た猿野はやはり秋奈を不気味に思った。


「桃田さん、やっぱこの女ヤバいですよ。やめておきましょう」


「いや、連れて行く。今日こそ鷹宮のやつをボコボコにするんだよ!」


猿野は桃田に提案したが、今日の桃田は聞く耳を持たなかった。

彼の頭はいま、昴へ復讐することで頭がいっぱいだったのだ。


「ほら、もう行くぞ!ちゃんと鷹宮が来るように書き置きを残しておけ!」


「いぇーい、レッツゴー!」


「この女、何で喜んでるんだ!?」


男たち四人と何故か楽しそうな秋奈は車に乗り、犬山が運転する車が発進した。




──────────────────



ここは町外れの廃工場。


普段から「桃堕狼連合」が溜まり場にしている場所だ。


いつもは四人でたむろしている彼らだが、今日はそれに加えて一人の女がいる。


「ちょっと、もう少しいい椅子はないんですか?確かに私は昴さんの女で彼女で妻で生涯を誓った仲で、人質としてめちゃくちゃ有効な女ですが、こんな汚い椅子に縛りつけるなんて酷いじゃないですか!」


椅子に縛り付けられたままギャーギャーと騒ぐ秋奈を見て、猿野は心配そうに桃田に話しかけた。


「リーダー、この女……本当に鷹宮の女なんですかね?もしかすると、『鷹宮の家に不法侵入して勝手に居座って妻を名乗っているヤバい女』なんじゃ……」


「馬鹿野郎、そんなわけあるか!あんなに堂々と他人の家で生活している不法侵入者がいるわけないだろ!」


「そ、そうですかねぇ……?」


猿野を手で制し、桃田は秋奈の前に出た。

そしてポケットからナイフを取り出し、彼女の首元にそれを近づけた。


「おい姉ちゃん。あんまり騒ぐなよ。お前は鷹宮を呼ぶためのただの人質なんだから、俺たちとしてもあんまり乱暴なことはしたくねえんだよ。わかるな?」


「……はーい。大人しくしてますよぅ。まあ、すぐに昴さんが助けに来てくれますもんね」


秋奈は首元にナイフを突きつけられたが、特に怯える様子がない。


刃物に全く怯えない秋奈に桃田は少し驚いたが、とにかく静かになったのでよしとした。



「お前たち!!何をやっているんだっ!!!」



廃工場内に一人の男の声が響いた。

その声の主はハアハアと息を切らしており、ここまで必死に走ってきたのだということがわかった。


工場の入り口に立つ彼の名は、鷹宮昴。

自室の玄関に置かれていた書き置きを読んで、慌ててここまで走ってきたのだ。


その書き置きには「女は預かった。返してほしければ町外れの廃工場まで来い」と書いてあったが、冒頭に汚い字で「鷹宮の」と無理やり書き加えられていたのが昴は少し気になった。


廃工場に現れた彼の背中には、リュックが背負われている。


「ふっ……来たな鷹宮ぁ!!やっとテメェをボコボコにできるぜぇ!!」


桃田は昴を見て笑い、大声で挑発した。


「だがその前に一つ確認だがなぁ!この女はお前の何なんだ?お前の女なんだよなぁ!?」


「む。そ、その女性は……」


桃田に質問された昴は、少し考えてから答えた。


「……僕の家に不法侵入して勝手に居座り、妻を名乗っているヤバい女だ」


「ほらあ!やっぱりそうじゃないですか!リーダー!!」


猿野は「だから言ったじゃないですかぁ!」と桃田の肩をパンパンと叩いた。


「ええー!?昴さん、私のことそんな風に思っていたんですかぁ!?酷い!!」


「だって、どう考えてもそうだろう!他に表現のしようがない!!君は急に部屋に現れて僕を金縛りにしてくるし、カバン鍵は盗むし、勝手に部屋に上がり込んでカレーを作るし、何回帰れと言っても頑なに帰らないし、押しかけ居座り自称妻というか……」


「この女、もしかして普通に俺たちより悪い奴なんじゃないか?」


「ああー!!お前らうるせえっっっ!!!」


それぞれがガヤガヤと話し始めたところで、桃田は大声で全員を制した。


「もうそんなことはどうでもいいんだよ……!重要なのは、鷹宮がこの女を『助けに来た』ってことだ!!つまり、この女は鷹宮にとって大きな価値がある!!そうだろ!?」


桃田がそう言って昴を睨みつけた。

しかし昴は睨みつけてくる桃田よりも、その後ろでこちらを見てニヤニヤと笑っている秋奈の方が気になった。


「私は昴さんにとって大きな価値がある!!そうでしょ!?」


桃田はこの状況で軽口を叩くことができる秋奈の精神に驚いた。

やはり、自分はヤバい女を連れてきてしまったのだろうか。


「……『大きな価値がある』かどうかは置いておいて、君たちと僕との揉め事に彼女を巻き込んでしまったのは、僕の責任だ。その責任を果たすために僕は来た」


「ぶぅー、そこは『俺の女を返してもらうぜ』とかでいいんですよ、昴さん」


昴の答えに対して秋奈は膨れっ面をし、桃田はニヤリと笑った。


「ということは、いつものように逃げていく心配はねえってことだ!!」


桃田はガハハと笑い、言った。


「鷹宮ぁ……!骨の一本や二本は、覚悟してもらうからな!おい、お前ら!」


桃田が命令すると、金属バットを持った犬山、猿野、鷲田の三人が昴を囲んだ。


桃田は秋奈の首元にナイフを突きつけ、ニヤリと笑う。


「逃げたり反撃したら、どうなるかわかってんだろうなぁ!鷹宮ぁ!」



秋奈の知識では、「昴」は星の集まりだということしか知りませんでした。


しかし実は「昴」は、プレアデス星団を指す、「秋」の夜空を代表する星の名称なのです。


昴と秋奈の運命を、星たちは知っていたわけですね。


彼らの間は、いったいどんな子供が生まれるのでしょうか……?




……ですがなんと!その子供たちの生き様を描いた物語は、すでに存在するのです!↓

いやぁ、偶然とは怖いものですねぇ!(宣伝)


「魔女の末裔、怪盗となり月夜に舞う」

https://ncode.syosetu.com/n9785ln/

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