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魔女の末裔、婿が必要なので魔法を使って婚活してみた  作者: ぽよみ30号


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4/7

月詠秋奈は押しかけ女房

「はあぁ……」


「鷹宮先輩、どうかしたのですか?」


昴が大学での剣道の稽古をしていると、稽古相手の男子部員の一人が彼に声をかけた。


「ああ、東条君……」


彼の名は東条忠雄とうじょうただお。昴の後輩だ。


彼は経済学部だが、稽古量を増やすために、昴が在籍する医学部の剣道部にも顔を出している。


「実は……」


昴は話し始める前に、昨晩のヘンテコ魔女が「魔法のことは誰にも言わないで」と言ったことを思い出した。


「あー、えっと、昨日部屋に女の幽霊が出てね」


「ゆ、幽霊!?」


「ああ。金縛りにもされた」


「金縛り!?そ、それは、念動力?とかで、ですか?」


「いや、上に乗られて羽交はがめにされた。力が強すぎて振り切れなくてね」


「金縛りって、そんな物理的なものなのですか!?」


「僕もわからない」


東条は真面目な男で、昴の始めた突拍子もない話を真剣に聞いて心配していた。


「あと、突然服を脱ぎ始めてね。なんか僕と結婚したいらしい」


「え、えーっと?あの、鷹宮先輩。自分はその話を……ホラーとして聞けばいいのですか?それとも、恋愛……?」


「僕も分からない」


「は、はぁ……」


昴の話が終わり、東条はよく分からない気持ちのまま更衣室に入った。


昴はもう少し素振りをしていくと言っていたので、彼は一人で着替え始めた。


「ん、んん!?」


東条は、そこで信じられないものを見た。


「鷹宮先輩のカバンが……宙に浮いている!?」


更衣室に置いてあった昴のカバンが空中に浮かび、ゴソゴソと動いている。


「あっ!?」


そしてカバンの近くから突然女の声がしたと思ったら、カバンはどさりと床に落ちた。


「ひ、ひえええっっ!?」


東条は着替えの途中だが慌てて更衣室から飛び出し、道場にいる昴の元へ駆け寄った。


「た、鷹宮先輩!!出ました!ゆ、幽霊!オバケ!!」


──────────────────


「おい鷹宮ぁ!!」


「ん?」


稽古を終えた昴が大学からアパートに向けて帰っていると、彼は道で4人組の男に呼び止められた。


「なんだ……また君たちか」


昴が面倒くさそうにため息をつくと、四人のうちの一人が「ふざけんじゃねえぞ!」と大声をあげた。


「テメェ、この前ので勝ったと思ってるんじゃねえぞ!あんなもん不意打ちだからな!ちゃんと勝負しろ!」


彼らは以前、道で強引に女性に絡んでいたところを昴に「やめないか」と止められた。


彼らは昴に殴りかかったが、四人がかりでも昴にあっさりとのされてしまい、それ以降昴を恨んでいる。


「君たちが女性を囲んで脅していたから、市民の義務として成敗したまでだ。恨まれる筋合いはないね」


「クソがあっ!」


「おいおい勘弁してくれ。もう僕は暴力を使うつもりはないぞ」


彼らは四人で殴りかかったが、昴は華麗な足捌きでヒョイヒョイと彼らの拳を躱し、走って逃げ出した。


「おい、待てゴラァ!!」


男たちは怒鳴りながら昴を追うが、足の速さもスタミナも勝負にならない彼らは昴を見失い、追いかける体力もなくなってしまった。


「クソがぁっ!!……ん?」


男の一人が悔しさで地面を殴ると、近くに何かが落ちている。

それは学生証で、そこには昴の顔写真が付いており──


「ククッ……おいお前ら。ついにやったぞ。これで俺たちは奴にキッチリ復讐できる……」


──彼のアパートの、住所が書いてあった。





──────────────────



昴がアパートに帰ると、異変が起きていた。


まず部屋からカレーの匂いがする。

とても美味しそうな匂いではあるが、本人が作った記憶がないカレーの匂いが部屋からすれば、それは恐怖でしかない。


「ん?あれ?」


そして彼は部屋に入ろうと鍵をカバンから出そうとしたが、部屋の鍵が見当たらない。


仕方なく彼がドアノブを捻ると、なんと鍵は開いていた。


「お帰りなさい、あなた♡」


ドアを開けると、そこには昨日の魔女がいた。


「ご飯にする?お風呂にする?それともあ・た・し?」


「帰ってくれ」


昴は、エプロンを着て自分を出迎えた秋奈の肩を掴んでドアの方へと押して追い出そうとした。


「ちょ、なんで!?優しい奥さんとか彼女の定番セリフじゃないですか!」


「今のところ君は、僕の中で奥さんでも彼女でもなく『不審者』に分類されているからね」


「ええー!?こんなに頑張っているのに!」


「そもそもどうやって入った……あっ!」


昴はそこまで言いかけて、昼間に東条が「カバンが浮いていた」と話していたのを思い出した。


「さては君……あの鏡で透明になって、僕の部屋の鍵を盗んだだろ!」


昴がそう言うと、秋奈は「ふっ……」と不敵に笑った。


「『怪盗アッキーナ』と呼んでください」


「名前がダサすぎる!」


昴は仮にこの魔女と結婚したとして、魔法を使いながら怪盗をする家族がいるのは嫌だなぁと思った。


「どうですか?カレー、美味しそうな匂いでしょ?私を妻にする気になりましたか?」


「今のところ、君への認識は妻どころか『不審者』から『窃盗犯、不法侵入犯』にランクが上がったよ」


「やったあ!ランクアップですね!」


「君は人の話をよく聞いた方がいい」


昴はため息をつきながらも部屋の中に迎え入れられた。(そもそも昴の部屋だが)

そしてカレーを振る舞われた。


「美味い……!!」


「ふふ、でしょ?私意外とこういうの得意なんですよ」


「ああ、感心した。ありがとう」


「結婚します?」


「しない」


昴はカレーを食べながら昨日の秋奈の奇行を思い出し、質問した。


「もう昨日みたいなことはしないのか?抱きついてきたり、服を脱ごうとしたり……」


「う……」


秋奈はギクリと目を逸らし、少し申し訳なさそうな顔をした。


「き、昨日はすみませんでした……私、てっきりあれが恋愛の正攻法かと……完全に姉に騙されてて……」


秋奈は昨日の夜、新月刀を握りしめて家に帰り夏波を締め上げようとしたが、彼女は既に都会にある自分のマンションへと帰ってしまった後だった。


「こ、これからは普通に鷹宮先輩にアプローチしますから、昨日のことはどうかノーカウントで……」


「うーん、鍵を盗んで侵入して勝手にカレーを作るのが『普通のアプローチ』だと思ってるなら、まだおかしいんだよなぁ」


「だって!私わかんないんですよ!どうやったら男の人と仲良くなれるのか!だからとりあえず、あなたと一緒に過ごそうと考えたんです!」


「うーん……」


昴は困ってしまった。

なんとか帰ってほしいし、もう関わりたくないし、家の鍵も返してほしい。


しかしこの女はなかなか頑固で、言うことを聞いてくれそうにもない。


「……まあいいや。とりあえず今日のところは帰ってくれ。カレーの礼はそのうちするよ」


「へ?何言ってるんですか」


「ん?」


「私、住みますよ。今日からここに。鷹宮先輩が私のことを好きになるまで」


幼い夏波が秋奈や冬子に仕掛けていた「いたずら」は、どれも酷いものばかりでした。


ある日夏波は「今日の夜、空から宇宙人が攻めてきて人類が滅亡するんだよ」と10歳の秋奈と7歳の冬子に嘘を教えました。


冬子は布団を被ってガタガタと震えており、夏波はそれを見て笑い、満足しました。


しかしその夜、秋奈は行方不明になります。

家族総出で捜索した結果、彼女は実家の裏手にある山の頂上で、三種の神器を持って夜空を眺めていました。


千夜が「あなた、どうしたの!?こんなところで!」と秋奈に聞くと、彼女は答えました。


「宇宙人……私が魔法でやっつけようと思って」


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