第九十三話「複雑な王城の運行と、シャルロッテの『おひさまの法則』」
日頃の王城は、公務や儀礼、貴族の序列といった、長年の伝統と慣習によって、極めて複雑な運行をしていた。王族の誰もが、その複雑な「王城の法則」に従うことで、秩序が保たれていると信じていた。
アルベルト王子は、執務室で、王室の運行表を見て頭を抱えていた。図は、あまりにも複雑で、線が互いに交錯し、ねじ曲がっている。
「王城の中心は、国王でも、王位継承者でもなく、誰にもわからない曖昧な何かだ。この複雑すぎる運行は、不合理で、美しくない」
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シャルロッテは、モフモフを抱いて、兄の執務室にやってきた。兄の描いた運行図を見たとき、彼女の目には、その複雑な図が、「たくさんの人が、疲れた顔で、無理に動いている姿」として映った。
「ねえ、兄様。この図、みんなが全然楽しくなさそうだよ」
シャルロッテは、前世の科学の知識から、複雑な現象の裏には、必ずシンプルな真理が隠されていることを知っていた。この複雑な運行も、視点の中心が間違っているだけだ。
シャルロッテは、兄の運行図を横に置いた。
そして、新しい紙に、ごくシンプルな図を描き始めた。
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シャルロッテの描いた図の中心には、彼女が描いた、自分の小さな顔の、満面の笑顔が描かれていた。そして、その周りを、国王、王妃、兄姉たち、そして城下町の住人たちが、穏やかで、美しい円軌道を描いて回っている。
図の中心の光の点こそ、シャルロッテの**「可愛い気持ち」**そのものだった。
「お姉様には内緒だよ、兄様。この図はね*『おひさまの法則』っていうの」
「おひさまの法則?」
「うん! 私が、一番可愛い気持ちでいると、私の周りに、ポカポカした『おひさまの光』が広がるでしょう?」
シャルロッテは、モフモフを抱きしめ、にっこり笑った。
「その光が、パパや兄様たちの背中に当たると、みんなもポカポカして、自然と笑顔になるんだよ。私が一番笑顔でいることが、みんなが一番綺麗に動けるための、魔法のルールなの!」
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アルベルト王子は、妹の純粋な言葉に、深い感動を覚えた。彼女の哲学は、「自分が中心に立つ」という尊大さではなく、「自分が幸せな状態を保つことで、その温かさを周囲に無償で分け与える*という、利他的な、最も可愛い法則だった。
アルベルトは、妹の「おひさまの法則」を、王城の運行図に当てはめた。すると、複雑で不合理だった王城の運行図は、嘘のようにシンプルで、幾何学的に美しい調和を伴った図へと変貌した。
「シャル。君は、王国の常識を覆した。君の『可愛い』は、真理の光だ。この運行図は、『三女殿下の幸福感を中心に置く』ことで、初めて、合理的になった」
ルードヴィヒ国王は、その図を見て、静かに頷いた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、可愛い法則の方が、みんな、楽しく動けるでしょう?」
シャルロッテの純粋な「可愛い」の哲学は、王城の複雑な法則に、シンプルで、美しい、愛の秩序をもたらしたのだった。




