第九十話「大人の秘密の地図と、地下通路の『友情の暗号』」
その日の王城の執務室の机には、ルードヴィヒ国王とアルベルト王子が、極秘の城の地下通路の古地図を広げていた。それは、王城と城下町を結ぶ、緊急時用の通路を示すもので、王族の「大人の秘密」の象徴だ。
「この地図は、王族と、ごく一部の人間しか知ってはならない。万が一、悪意ある者に渡れば、王城は危機に陥る」と、国王は厳かに語った。地図の持つ排他的な機密性が、王国の安全を支えていた。
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シャルロッテは、その地図の持つ「排他的な秘密」という大人の論理に、子供らしい反抗心を抱いた。「地図は、誰かを幸せな場所へ連れて行くためにあるのに」と。
シャルロッテは、その地図のコピーを手に取り、ある計画を実行した。
彼女は、城下町の友達であるパン屋のカールや、仕立て屋の孫娘に、その地図を見せたが、大人には理解できない子どもたちだけの、新しい法則を導入した。
彼女は、地下通路の要所要所に、土属性魔法で、小さなウサギの足跡の印を、ごく微細に刻んでいった。そして、ウサギの足跡の横には、光属性魔法で、「今、一番美味しいパン屋の方向はこっち!」という、子供たちにしか読めない、絵文字のような「友情の暗号」を刻んだ。
子供たちは、その暗号地図に熱狂し、地下通路を、大人たちが想像もしない、楽しい遊び場として利用し始めた。
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数日後、アルベルト王子が、地下通路を視察した。彼は、通路の壁の至る所に刻まれた、ウサギの足跡と、光る絵文字の「友情の暗号」を発見し、愕然とした。
「な、なんだこれは! 機密情報が、子供たちの遊びに使われている! セキュリティは完全に崩壊しています、父上!」
アルベルトは、即座に子供たちを罰し、通路を閉鎖するべきだと進言した。
ルードヴィヒ国王は、その報告を聞き、最初は激怒した。王国の安全という、最も重い責務が脅かされているのだ。
しかし、その後の報告で、国王は立ち止まった。
『地下通路を遊び場として利用する子供たちの間で、王城への親愛と、隣人への信頼が深まっている』という、城下町からの報告だった。
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ルードヴィヒ国王は、ソファに座るシャルロッテに優しく尋ねた。
「シャル。お前は、なぜ、この地図を子供たちに渡したのだ。これは、国の安全に関わる、最も大切な秘密なのだぞ」
シャルロッテは、モフモフを抱き、真っ直ぐ父を見つめた。
「だってね、パパ。この地図はね、誰も通らないから、悲しかったんだよ。それにね、誰かを信じないと、地図は使えないでしょう? 誰かを信じないで、こっそり隠している秘密なんて、全然可愛くないもん!」
シャルは優しく言葉を接ぐ。
「この地図はね、王城の子供と、城下町の子供を、一番仲良くするための、魔法の道なの!」
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ルードヴィヒ国王は、その言葉に、胸を打たれた。彼は、娘の「子供の論理」の裏に、「王族の秘密よりも、民の信頼と連帯の方が、遥かに強固な安全保障になる」という、極めて深い政治哲学が隠されていることを悟った。
彼は、アルベルトに静かに言った。
「アルベルト。たしかに、地図は機密だ。だが、国民の心が王城から離れることこそが、最大の危機だ。シャルロッテは、『愛という最も強固な結界』を、地下通路に張ったのだ」
国王は、娘の「子供の論理」の優位性を認め、地下通路の機密性の高い部分以外を「友情の秘密の地図」として、城下町の子供たちの遊び場として公認するという、異例の英断を下した。
「民の幸福こそ、王の誇りだ。その幸福が、子供たちの笑顔と友情によって育まれるなら、この秘密は、もう秘密ではない」
シャルロッテの純粋な「可愛い」の哲学は、大人の持つ排他的な機密を、王国の未来の安全保障という、最も温かい形で再定義したのだった。




