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【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


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第八十六話「金の馬車と、王女の『真の豊かさ』の定義」

 その日の午後、エルデンベルク王国は、近隣の裕福な公国からの使節団を迎えていた。彼らは、王城の豪華絢爛な装飾と、王族の華やかな衣装に目を奪われていた。


 特に、使節団のリーダーである公爵は、王城の宝物庫で展示されていた、純金で装飾された古い馬車を見て、感嘆の声を上げた。


「ああ、ルードヴィヒ国王。この馬車こそ、御国の繁栄の象徴。これほどの豪華さ、まさに王家の誇りです!」


 ルードヴィヒ国王は、外交辞令として笑顔で応じたが、その言葉には、どこか空虚さを感じていた。



 その時、シャルロッテは、モフモフを抱き、使節団の前に立った。彼女は、宝物庫の金の馬車よりも、窓の外に見える、庭師ハンスが手入れする小さな菜園の土の匂いに、心を奪われていた。


「ねえ、公爵様。この馬車、()()()()()()()()


 公爵は、小さな王女の言葉に、驚き、戸惑った。


「可愛くない、とは? これほどの金銀財宝で飾られているというのに?」


 シャルロッテは、宝物庫のきらびやかな装飾ではなく、公爵の手のひらを見た。公爵の手は、宝石や絹に触れるために磨かれていたが、どこか乾燥し、「土の温かさ」を知らない手だった。



 シャルロッテは、公爵に、自分の手のひらをそっと差し出した。彼女の手は、菜園での遊びや、城下町での活動を通して、常に土や、パンの粉や、モフモフの毛皮の温もりを知っている。


「ね、公爵様。この馬車はね、動けないの。ただの、重たい飾りの箱だもん。この馬車を作った金貨で、何人の人が、自分で野菜を育てるための土を買えたかな?」


 シャルロッテの「可愛い」という哲学は、**「実用性」と「幸福の持続可能性」**という、極めて深い社会哲学に基づいていた。


「本当に可愛いものってね、みんなを笑顔にして、そして、みんなと一緒に動くものだよ。動けない、ただの飾りは、可愛くないの」



 その言葉は、公爵の心を静かに揺さぶった。彼は、自国が過度な消費と装飾に傾倒し、人々の心が満たされていないことに気づいていた。


 ルードヴィヒ国王は、娘の言葉の真意を理解し、静かに頷いた。


「公爵。我が国が誇るのは、この馬車ではない。人々の手の中にある、温かいパンと、土の匂いだ。それが、我々の真の豊かさです」


 外交の場は、一転して、清貧と実質を重んじる、哲学的な対話の場へと変わった。



 シャルロッテは、公爵を連れて、王城の小さな菜園へと向かった。


 彼女は、ハンス庭師長が手入れした、ふかふかの土を、公爵の手にそっと触れさせた。


「見て、公爵様。この土はね、お金じゃ買えない、命の温かさを持っているんだよ。これが、一番可愛い王国の宝物なの」


 公爵は、その土の温もりに、心からの安堵と、真の豊かさの感覚を覚えた。彼は、帰国後、国政を質素と実質へと転換させた。


 シャルロッテの純粋な「可愛い」の定義は、王国の誇りを、装飾ではなく、大地に根ざした、人々の幸福へと静かに導いたのだった。

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