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第七十三話「白い剣と、血色の薔薇の運命的な誓約」

 その日の午後、王城の騎士訓練場は、午後の日差しに照らされ、砂埃が金色の粒子のように舞っていた。


 第二王子フリードリヒは、新しい剣の鍛錬に挑んでいた。その剣は、王家が秘蔵する魔力合金で作られた、一切の装飾を持たない、純粋な白い輝きを放つ剣だ。彼の周りには、剣が発する冷たい魔力の波動が渦巻いている。


 フリードリヒは、その剣を扱うたびに、剣術家としての誇りと、王族としての「血の宿命」という、言いようのない重圧を感じていた。



 シャルロッテは、その訓練の様子を、フリードリヒの隣で静かに見ていた。彼女の銀色の髪は、舞い散る砂埃の中で、儚く輝いている。


 彼女は、兄の持つ白い剣と、彼の中に渦巻く激しい情熱の魔力が、どこか激しい対立状態にあることを感知していた。白い剣は、フリードリヒの情熱を受け止めきれず、冷たく拒絶している。


「兄様。その剣、兄様の情熱が熱すぎて、怖がってるよ」


 フリードリヒは、妹の言葉に、驚いて剣を止めた。


「怖がっている? これは、ただの剣だ、シャル。俺の剣術を完璧にするためのただの道具だ」


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 シャルロッテは、訓練場の隅に咲いている、血のように濃い、真紅の薔薇を一本摘み取った。その薔薇は、強烈な色彩で、訓練場の砂埃と冷たい剣のコントラストの中で、異様なまでに耽美な美しさを放っていた。



 シャルロッテは、その真紅の薔薇を、白い剣の柄に、そっと結びつけた。


「兄様。この剣はね、兄様の血の情熱が欲しいのよ。剣術は、ただの技術じゃない。兄様の魂の愛の形なんだよ」


 そして、シャルロッテは、光属性魔法を応用し、剣に結ばれた薔薇に、「永遠の情熱」という魔力を込めた。その薔薇は、剣の冷たい白い輝きを映し、まるで生命が脈打つような、熱い輝きを放ち始めた。


 フリードリヒは、その薔薇を剣と共に握りしめた。すると、剣の冷たい感触は消え、妹の込めた情熱の魔力が、彼の血と共鳴し、全身に流れ込んでくるのを感じた。


「ああ……この剣は、俺の、運命の一部だ……」



 フリードリヒは、再び剣を構えた。彼の剣筋は、以前の力任せな情熱ではなく、薔薇の情熱によって、研ぎ澄まされ、優雅で、そして圧倒的な美しさを伴うものへと変貌した。剣は、もはや道具ではなく、彼の魂と一体化した、運命的な存在となった。


 アルベルト王子が、その訓練の様子を見て、感銘を受けた。


「フリードリヒの剣術は、技術を超えた芸術となった。彼の情熱は、シャルによって、最も美しい形で昇華されたのだな」


 フリードリヒは、妹を抱きしめ、心からの感謝を伝えた。


「シャル。お前は、俺の剣に、愛と運命という、最高の導きをしてくれた」


 シャルロッテの「可愛い」という感覚は、兄の情熱と剣術に、耽美で運命的な愛の真実をもたらしたのだった。

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