第七十話「午後三時の光と、モフモフへの究極の愛で方」
その日の午後三時、薔薇の塔の居室には、黄金色の柔らかな光が満ちていた。この時間帯は、シャルロッテにとって、モフモフと過ごす最も大切な「愛でる時間」である。
シャルロッテは、床に敷かれた最も柔らかいウサギの毛皮の上に、大の字になって寝転んでいた。その上には、モフモフが、まるで大きなふわふわの帽子のように、彼女の胸元に乗っている。
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「ん~~~、モフモフ、世界一可愛い……」
シャルロッテは、モフモフの毛皮に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。その毛皮は、太陽の温かさと、森の優しい土の香りがする。それは、彼女にとって、どんな高級な香水よりも癒やされる、究極の匂いだった。
モフモフは、シャルロッテの胸の上で、小さく「ミィ」と鳴き、満足そうに喉の奥の微細な振動(ゴロゴロ音)を発しながら、丸くなっていた。
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シャルロッテは、次に、モフモフの毛皮の手触りを堪能した。
彼女は、水属性魔法を指先に集中させ、毛皮の表面を、ごく優しく撫でる。水魔法は、毛皮の一本一本を、朝露のような瑞々しさでコーティングし、さらに柔らかく、滑らかにした。
「わあ、触り心地、シルクの百倍だよ!」
その感触を、モフモフも気に入ったようで、さらに体をシャルロッテに擦り付けた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き上げ、顔と顔を近づけた。
そして、光属性魔法を応用し、モフモフの頭の上に、七色に輝く、小さな虹色の輪を浮かび上がらせた。それは、彼女の「可愛い」という感情が、そのまま光として具現化したものだ。
「ね、モフモフ。あなたは、可愛いの天才だから、特別に天使の輪っかをあげる!」
モフモフは、その光の輪を、何の疑問もなく受け入れ、その輪の下で、目を細めた。
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エマが、そっと部屋にティーセットを運び込んできた。
エマは、シャルロッテとモフモフの、究極に愛らしい光景を見て、思わず胸を押さえ、声にならない「愛おしい」という叫びを心の中で上げた。
シャルロッテは、自分の隣に置いてあった、虹色のユニコーンのぬいぐるみを、モフモフの隣に並べた。
「エマ、見て! 虹色のユニコーンさんも可愛いけど、モフモフは、ユニコーンさんの百倍も温かいよ! 本物の可愛さだね!」
エマは、王女の言葉に、全力で頷いた。
シャルロッテは、モフモフを抱きしめ、午後の光の中で、ただひたすらに、愛と幸福感を満喫した。彼女にとって、モフモフを愛でることは、この世界のすべての「可愛い」を肯定する、最も大切な時間だった。