表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

611/611

第六百十四話「思い出の切り抜きと、乙女たちの『デコレーション日記』」

 その日の午後、王城のサンルームは、紙の焼ける匂いではなく、真新しい紙とインク、そして甘い糊の香りに満たされていました。

 テーブルの上には、山のような素材が広がっています。

 色とりどりの紙片、レースの切れ端、金色のシール、乾燥させた押し花、そして「魔法のマスキングテープ」。


 シャルロッテは、分厚い革表紙のノートを抱えて、集まったメンバー――イザベラ王女、マリアンネ王女、エリーゼ――に向かって、高らかに宣言しました。


「みなさま、ペンとハサミを持って! 今日は『思い出を、宝石にする魔法』をかけるよ!」


 それは、ただの日記書きではありません。

 日常の些細な出来事を、切ったり貼ったりして飾り立てる「コラージュ・パーティー」の始まりでした。


 イザベラ王女は、優雅な手つきでハサミを持ちました。

「日記というのは、ただ文字を書くだけだと思っていたけれど……。この『飾り枠』をつけるだけで、なんてことないお茶会の記録が、まるで舞踏会の招待状のように見えてくるわね」


 彼女は、先週のティータイムのページに、アンティーク風のシールと、本物のレースを貼り付けました。

 シャルロッテが横から、光属性の魔法をちょっぴり糊に混ぜます。

 すると、貼られたレースが微かに発光し、ページ全体がふんわりと浮き上がって見えるようになりました。


「素敵! 私の退屈な一日が、ドラマチックな物語の1ページになったわ」


 マリアンネ王女は、定規とカッターを使って、幾何学的な模様を作っていました。

「情報の整理整頓ね。でも、ただ並べるだけじゃなくて、こうして色紙を重ねて『層』を作ると……不思議ね。データに『奥行き』が生まれるわ」

 彼女は、読んだ本の感想を記録したページに、その本の表紙と同じ色の紙を貼り、さらにその上に、感想を書いたトレーシングペーパーを重ねました。

 めくるたびに、違う表情が見える仕掛けです。


「お姉様、すごい! 飛び出す絵本みたい!」


 エリーゼは、少し照れくさそうに、ポケットから「キャンディの包み紙」を取り出しました。

「あの……こんなゴミみたいなものでも、いいんでしょうか? 昨日、シャルロッテ様にいただいた飴が、とても美味しくて、捨てられなくて……」


「もちろん! それが一番の宝物だよ!」


 シャルロッテは、エリーゼの手元を覗き込みました。

 エリーゼは、包み紙を丁寧に伸ばし、ノートの隅に貼り付けました。そして、その周りを、キラキラ光るペンで囲み、小さな星を描き足しました。

 ただのゴミだった包み紙が、そこにあるだけで、「あの時の甘い味」を思い出させる、特別なアイコンに変わりました。


「可愛い……。こうして貼っておけば、いつでもあの時の幸せな気持ちに戻れますね」


 シャルロッテも、自分のノートに向かいました。

 彼女が貼ったのは、モフモフの抜け毛(!)、庭で拾った変な形の葉っぱ、そして、失敗して滲んでしまったインクの染みでした。


「失敗したページもね、上からシールを貼って、リボンで隠しちゃえば、『わざとやったオシャレな模様』に見えるんだよ!」


 チョキチョキ、ペタペタ。

 部屋には、ハサミの音と、紙をめくる音、そして「これ可愛い!」「ここ、どうしよう?」という楽しげな声だけが響いていました。


 それは、過去の時間を、「編集」する作業でした。

 少し悲しかった日のページには、明るい太陽のシールを貼って励ます。

 嬉しかった日のページには、金色の枠をつけて、もっと特別にする。

 自分の人生を、自分の手で「可愛いもの」として肯定していく、魔法のような時間。


 夕方になり、アルベルト王子が様子を見に来た時、彼は机の上に散乱する紙吹雪と、完成したノートを見て目を丸くしました。


「……これは、日記か? 文字よりも、貼ってあるものの方が多いじゃないか。分厚すぎて、本が閉じていないぞ」


 シャルロッテは、パンパンに膨れ上がったノートを、誇らしげに掲げました。


「いいの! 分厚いのはね、幸せがいっぱい詰まってる証拠だもん! その方が絶対可愛いでしょ?」


 アルベルトは、イザベラやマリアンネが、少女のような顔で互いのノートを見せ合っているのを見て、ふっと表情を緩めました。


「なるほど。記録とは、事実を残すためだけにあるのではないのだな。感情を残すためには、これくらいの厚みが必要なのかもしれない」


 シャルロッテは、ノートを胸に抱きしめました。

 その重みは、ただの紙の重さではありません。

 「私の毎日は、こんなに可愛くて、楽しかったんだ」という、確かな実感の重さでした。


 窓の外では夕焼けが燃えていました。

 今日の夕焼けの色も、忘れないように、あとでオレンジ色の絵の具で日記に塗っておこう。

 そう思いながら、シャルロッテはモフモフの頭を撫でました。今日もまた、素敵な1ページが増えたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ