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【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


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第六百話「渇いた王の願いと、家臣たちの『大雨洪水警報』」

 その日は、朝からじりじりと太陽が照りつける、うだるような暑さでした。

 王城の庭の草花もぐったりと首を垂れ、セミの声だけがミンミンと響き渡っています。


 冷房の魔法も効きが悪い執務室で、ルードヴィヒ国王は、カラカラに乾いた喉を押さえて、うわ言のように呟きました。


「あぁ……アメが欲しい……。甘くて、冷たいアメがあれば、この苦しみも癒えるのだが……」


 王様が欲しかったのは、氷砂糖が入った冷たい「(キャンディ)」のことでした。

 しかし、暑さで頭が沸騰しかけていた側近たちは、その言葉を壮大に聞き違えてしまったのです。



 まず飛び出したのは、第二王女のマリアンネでした。

 彼女は白衣を翻し、研究塔へダッシュしました。


「(父上は、この日照りを憂いておられる! 国を救うための『雨』をご所望なのだわ!)」


 彼女は、開発中の「超局地的気象操作装置(レイン・メーカー)」のスイッチを入れました。

 ブォン、ブォン、と怪しい音が響き、空に向かって魔力の光線が放たれます。


「降れ! 慈愛の雨よ! 父上の渇きを癒すために!」


 次に反応したのは、第二王子フリードリヒでした。

 彼は空を見上げ、拳を握りしめました。


「(父上の悲痛な叫び……! 俺の熱い魂で、雨雲を呼び寄せてみせる!)」


 彼は中庭に飛び出し、古来より伝わる(と本人が信じている)「雨乞いの舞」を、汗だくになりながら踊り始めました。ドシンドシンと地面を踏み鳴らすその姿は、雨を呼ぶというより、地震を呼びそうです。


 さらに、第一王子アルベルトまでもが、深刻な顔で地図を広げました。


「(父上の判断は正しい。水不足は国家の危機だ。直ちに近隣の湖から、灌漑用の用水路を引く計画を前倒しせねば)」


 城内は、「雨だ!」「水だ!」「放水だ!」と、上を下への大騒ぎになりました。

 マリアンネの装置が誤作動してスプリンクラーが一斉に放水を開始し、フリードリヒの踊りに呼応したのか(?)一瞬だけ黒雲が湧き、アルベルトが手配した給水車が到着し……。


 執務室の窓の外は、まさに「大雨洪水警報」のようなカオス状態になってしまいました。



 そんな騒ぎの中、シャルロッテがモフモフを連れて、涼しい顔で執務室に入ってきました。

 彼女の手には、ガラスの小瓶が握られています。


「パパ、どうしたの?」


 国王は、窓の外の惨状を見て、呆然としていました。


「いや、余はただ……口の中が寂しかっただけなんじゃが……」


 シャルロッテは、首を傾げ、小瓶のふたを開けました。

 コロン、と出てきたのは、キラキラ光る、水色のソーダ味の飴玉でした。


「パパが欲しかったの、これじゃない?」


 シャルロッテは、その飴を国王の口にポイッと放り込みました。


 ガリッ、ジュワ〜。


 口いっぱいに広がる、冷たくて甘い清涼感。

 国王の顔が、一瞬でとろけました。


「んん〜っ! これだ! この『アメ』だ! 余が求めていたのは、天からの恵みではなく、舌の上の恵みであった!」



 その瞬間、びしょ濡れになって戻ってきた兄姉たちが、部屋に入ってきました。

 髪からは水が滴り、服はぐっしょり。


「父上! 雨を降らせましたぞ!」

「水資源は確保しました!」


 彼らは、玉座で幸せそうに飴を転がしている国王を見て、そしてシャルロッテの手にある小瓶を見て、全てを悟りました。


「「「「そっちのアメかーーーーっ!!!」」」」


 全員がその場に崩れ落ちました。

 フリードリヒが絞り出すように言いました。


「……俺の雨乞いの舞は……」

「……私の最新科学は……」


 気まずい沈黙が流れましたが、シャルロッテはケラケラと笑いました。


「あはは! でも、兄様と姉様のおかげで涼しくなったよ! みんなで『雨宿り』しながら、『飴』を食べようよ! その方が絶対可愛いもんね!」


 結局、その日の午後は、みんなでびしょ濡れの服を乾かしながら、ソーダ味の飴を舐めて過ごしました。

 「雨降って地固まる」とは言いますが、この日は「飴降って口潤う」という、甘くて騒がしい一日となったのでした。


 おあとがよろしいようで。

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