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【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


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第五百九十話「森の洋館と、姫殿下の『注文の多いエステ』」

 ある霧の深い午後、シャルロッテはモフモフを連れて、王城の狩猟区のさらに奥、誰も立ち入らない森の深部へ迷い込んでいました。

 木々のざわめきが止み、奇妙な静けさの中に、一軒の古びたレンガ造りの洋館が立っていました。


 入り口には、金色の文字でこう書かれています。

『当館は、どなたでも歓迎いたします。ただし、注文の多い店ですので、そこはご承知ください』


 普通の人間なら警戒するところですが、シャルロッテは目を輝かせました。


「わあ! 『注文が多い』ってことは、それだけこだわりのある、素敵なサービスをしてくれるってことだよね!」


 彼女は躊躇なく扉を開けました。


 中に入ると、すぐに次の扉がありました。そこには鏡とブラシが置いてあり、札にはこうあります。

『髪をとかして、泥を落としてください』


 シャルロッテは、モフモフの毛についた枯れ葉を丁寧に取り除き、自分の髪も手櫛で整えました。

「すごい。入る前から身だしなみを整えるなんて、ここはきっと、王城よりも厳しい『マナー教室』か、最高級の『美容室』に違いないよ!」


 次の扉には、こうありました。

『上着を脱いで、身軽になってください』

「はーい!」

 シャルロッテはコートを脱ぎ、ハンガーに掛けました。


 さらに進むと、今度は香水瓶のようなものが置かれています。

『この香水を、耳の後ろと、足の裏にたっぷり塗ってください』

 中身は、甘酸っぱい、少しお酢のような匂いがする液体(実は下味用のソース)でした。


「変わった匂い……。きっと、お肌がツルツルになる特別な美容液なんだわ!」

 シャルロッテは、自分とモフモフに、それをパシャパシャと振りかけました。


 最後の扉の前には、塩の壺が置いてありました。

『仕上げに、この粉を体中によく揉み込んでください』


「ソルトスクラブだ! 最先端のエステだね!」

 シャルロッテは、塩を手に取り、モフモフの背中をゴシゴシとマッサージしました。

「気持ちいい? モフモフ、これでお肌が引き締まるよ」


 準備万端(※美味しくなる準備ですが)整った二人は、期待に胸を膨らませて、最後の重い扉を開けました。


 中には、巨大なナプキンを首に巻いた、二匹の大きな山猫(のような魔物)が、ナイフとフォークを構えて待ち構えていました。

 彼らの目は皿のように丸く、口からは涎が垂れています。


「ようこそ、お客様。ずいぶんと……美味しそうな匂いがしますねぇ」

「さあさあ、こちらへ。中まで火が通るように……いえ、体が温まるように」


 魔物たちは、獲物が自ら味付けをしてやってきたことに舌なめずりをしました。

 しかし、シャルロッテは、彼らのギラギラした目を、「美容への情熱的な眼差し」だと解釈しました。


「わあ! あなたが店長さん? すごい熱気だね! 私も、お返しにマッサージしてあげる!」

「えっ!?」


 シャルロッテは、魔物たちが反応する間もなく、光属性と水属性の魔法を掌に集め、山猫のゴワゴワした毛皮に飛びつきました。


「ここ、凝ってるね! 毛並みがボサボサだよ! エステの基本は、まず清潔感からだよ!」


 シャルロッテは、洗浄魔法とマッサージを同時に繰り出しました。

 シュワワワワ!

 泡立つ魔力が、山猫たちの長年の汚れを洗い流し、硬くなった筋肉を強引にほぐしていきます。


「ギャッ!? な、何をする! 我々は食べる側で……あ、そこ、気持ちいい……」

「待て、話を聞け……ううっ、肩が軽くなる……!」


 魔物たちは、生まれて初めての「極上スパ体験」に、抗うことができませんでした。

 彼らが構えていたナイフとフォークは、床にカランと落ちました。


 シャルロッテは、さらに風魔法で彼らの毛をブローし、フワッフワに仕上げました。


「はい、出来上がり! 見て、二人とも、見違えるように可愛くなったよ!」


 鏡(魔導で作った氷の鏡)に映った自分たちの姿を見て、山猫たちは呆然としました。

 そこには、薄汚れた人食い鬼ではなく、高級な絨毯のように輝く毛並みを持った、立派な紳士のような獣が映っていたのです。


「……こ、これが俺たちか?」

「なんてことだ。こいつらを食べるよりも、自分が綺麗になるほうが、こんなに気持ちいいなんて」


 食欲は、美意識の前に敗北しました。

 山猫たちは、シャルロッテに深々と頭を下げました。


「参りました、お嬢さん。ここの店長は、今日からあなたです」


 シャルロッテは、モフモフを抱いて笑いました。


「ううん。私はお客さんだよ。でもまた体が凝ったら揉みに来てあげるね!」


 二人が館を出る頃には、霧は晴れ、夕日が森を金色に染めていました。

 帰り道、モフモフが自分の腕をペロリと舐めて、「しょっぱい」という顔をしました。


 シャルロッテは、お腹をさすりました。

「変だね。エステに行ったのに、なんだかお腹が空いちゃった。でもあの子たちが可愛くなってとっても良かったね!」


 このあと森の奥の洋館は、その後、「王女様御用達の、幻のビューティーサロン」として、森の動物たちの間で密かな人気スポットになったとか、ならなかったとか。

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