表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

546/595

第五百四十九話「湿地の鬼火と、姫殿下の『真夜中のランタン・パレード』」

 その頃、王城の裏手に広がる「嘆きの湿地」では、夜な夜な不気味な現象が目撃されていました。

 闇の中に、ゆらり、ゆらりと、青白い人魂のような光が浮かび上がり、近づく者を底なし沼へと誘い込むというのです。


 古参の兵士たちは震え上がりました。

「あれは『ウィル・オ・ザ・ウィスプ』だ。迷い込んだ旅人の魂が、仲間を求めて彷徨っているのだ……」

 騎士団は湿地を封鎖し、厳戒態勢を敷いていました。



 しかし、そんな「お化け話」を聞いて、じっとしていられないのがシャルロッテです。

 深夜、彼女はベッドを抜け出し、モフモフを起こしました。


「ねえ、モフモフ。お外で『光のダンス』が始まっているみたいだよ。見に行かなくちゃ!」

「ミィ~…(眠いんだけど……)」


 シャルロッテは、フード付きのマントを羽織り、手に古風な真鍮のランタンを持って、こっそりと城を抜け出しました。


 湿地帯は、腐葉土の匂いと、冷たい霧に包まれていました。

 足元はぬかるみ、カエルの鳴き声だけが響く、寂しい場所です。


 しばらく歩くと、霧の向こうに、青白い光が一つ、また一つと現れました。

 それは、生きているように不規則に揺れ動き、シャルロッテたちの周りを取り囲み始めました。

 ヒュルル……という風の音が、まるで忍び笑いのように聞こえます。


 普通なら悲鳴を上げて逃げ出す場面です。

 しかし、シャルロッテはランタンを高く掲げ、嬉しそうに声をかけました。


「こんばんは! あなたたち、お空から落ちてきちゃったの?」


 シャルロッテの目には、その不気味な鬼火が、「悪意ある霊」ではなく、「帰り道がわからなくて困っている、小さなお星さまの欠片」に見えていたのです。


 鬼火たちは、シャルロッテの恐れを知らぬ声に反応したのか、ピタリと動きを止め、それから興味深そうに近づいてきました。


「わあ、冷たくてきれい。ねえ、私のランタンの火と、どっちが明るいか競争しようよ!」


 シャルロッテは、光属性魔法を、ランタンの灯りに少しだけ混ぜました。

 すると、ランタンの炎が、鬼火と同じ「青白い色」に変わり、優しく明滅し始めました。

 それは、「私はあなたたちの仲間だよ」という、光の合図でした。


 鬼火たちは、大喜びした(ように見えました)。

 彼らはシャルロッテの周りをくるくると回り始め、一つが二つに、二つが四つにと分裂し、湿地帯全体が、青い光の渦に包まれました。


「すごい! メリーゴーランドみたい!」


 シャルロッテは、湿地の上を、光と一緒にスキップしました。

 モフモフも、飛んでくる光の玉を「猫じゃらし」だと思ったのか、パシッ、パシッと前足で捕まえようとして遊んでいます。

 それは、死の誘惑ではなく、真夜中の楽しいパレードでした。



 騒ぎを聞きつけたフリードリヒ王子が、松明を持った騎士たちを引き連れて駆けつけました。

「シャル! 無事か! 悪霊どもめ、我が剣の錆にしてくれる!」


 フリードリヒが剣を抜こうとしたその時、シャルロッテが立ちはだかりました。


「だめだよ、兄様! この子たちはね、ただ『夜のお散歩』をしているだけなの。驚かしたら、消えちゃうよ」


 見れば、鬼火たちはシャルロッテの周りで、楽しそうに(?)ダンスを踊っています。

 フリードリヒは、剣を収め、呆気にとられました。

「……悪霊が、シャルに懐いているだと? いや、浄化されているのか?」


 シャルロッテは、ランタンを空に向けて掲げました。


「さあ、みんな。もうすぐ朝だよ。お空に帰る時間だよ!」


 彼女が風属性魔法で上昇気流を作ると、鬼火たちはそれに乗り、ふわふわと空へ昇っていきました。

 青い光の群れが、夜空に溶けていく様は、まるで逆さまに降る雪のようでした。


 最後のひとつが消えると、湿地には静寂と、夜明け前の清浄な空気が戻ってきました。


「バイバイ! また遊ぼうね!」


 シャルロッテは、見えなくなった光に手を振りました。

 フリードリヒは、妹の頭をポンと撫でました。

「お前には、世界中のどんな恐ろしいものも、ただの遊び相手に見えるんだな」


 その日以来、嘆きの湿地から不気味な噂は消えました。

 代わりに、「満月の夜には、姫殿下と星屑たちがダンス会を開く」という、新しい、少しだけ不思議で楽しい噂が流れるようになったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ