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【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


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第五百四十八話「王様の背中と、家臣たちの『カキの大戦争』」

 秋も深まり、乾燥した風が吹くある日の午後。

 ルードヴィヒ国王は、玉座の間で公務に追われていました。

 しかし、王の集中力を削ぐ、ある重大な問題が発生していました。


 背中が、猛烈に痒いのです。

 よりによって、重厚なマントの下、肩甲骨の間の、自分では絶対に手が届かない絶妙なポイントです。


 王は、謁見の途中でしたが、我慢の限界に達し、苦悶の表情で呻きました。


「うう……背中が……かゆい……カ、『カキ』てが欲しい……」


 王は「き手」あるいは「孫の手」を所望したのです。

 しかし、忠実すぎる(そして早とちりな)子供たちは、その言葉をそれぞれの解釈で受け取りました。



 まず反応したのは、第二王子フリードリヒでした。

 彼は、「カキ」を、秋の味覚「かき」だと判断しました。

(父上は、公務の疲れで糖分を欲しておられるのだ! ならば、滋養強壮に良い、完熟の柿しかない!)


 フリードリヒは風のように退出し、数分後、籠いっぱいの山盛りの柿を抱えて戻ってきました。


「父上! お待たせしました! 採れたての『カキ』です! さあ、皮ごと丸かじりでどうぞ!」


 王は目を剥きました。

「いや、余は今、柿を食べたいわけでは……」

「遠慮は無用! ビタミンが背中の疲れに効きますぞ!」

 フリードリヒは、強引に熟した柿を王の口元へ押し付けます。



 次に進み出たのは、第一王子アルベルトでした。

 彼は、「カキ」を、海のミルク「牡蠣」だと判断しました。

「(フッ、フリードリヒは浅はかだ。父上が求めているのは、より洗練されたミネラル。生牡蠣にレモンを添えた、至高の珍味だ)」


 アルベルトは、氷を敷き詰めた銀の盆に、プリプリの生牡蠣を並べて現れました。


「父上、こちらこそが本物の『カキ』です。ツルッといけば、背筋もシャキッといたします」

「いや、アルベルトよ。余は別に牡蠣をたべたいわけではなくてだな……」

「さあ、レモンを絞って! 一口で!」

 アルベルトも、また強引に生牡蠣を差し出します。



 さらに、マリアンネ王女が書類の束を持って現れました。

 彼女は、「カキ」を、書類の「下記かき」参照、あるいは「書き(かき)」仕事だと判断したのです。

「(お父様は、まだ仕事が足りないとおっしゃっているのね。なんて勤勉な!)」


 マリアンネは、未決裁の書類の山を、王の膝の上に積み上げました。


「お父様! 『カキ(下記)』の案件をご確認ください! そして、こちらの書類にも『カキ(書き)』込みをお願いします!」


 王は、パニックに陥りました。

 右からは熟した柿の甘い匂い、左からは生牡蠣の潮の香り、膝の上には重たい書類の山。

 そして何より、肝心の背中は、まだ猛烈に痒いままなのです。


「ち、違う! 余が欲しいのは……もっとこう、カリカリとした……棒のような……」


 王がうめき声を上げたその時。

 扉が開き、シャルロッテがモフモフを連れて入ってきました。

 彼女は、柿と牡蠣と書類に埋もれて身動きが取れなくなっている父を見て、瞬時に状況(と、父の苦悶の表情の真意)を理解しました。


「パパ! 動かないで!」


 シャルロッテは、庭から拾ってきた、先が孫の手の形に曲がった「木の枝」を持って、王の背後に回り込みました。

 そして、マントの隙間から枝を差し込み、痒いところを、ガリガリガリッ!


「あ、あ、あ、あ~~~~っ……!」


 王の口から、魂が抜けるような、情けない、しかし至福の吐息が漏れました。

 その顔は、柿を食べた時よりも、牡蠣を食べた時よりも、書類を片付けた時よりも、遥かに幸せそうでした。


「……そこだ。シャルよ、そこだ。ああ、生き返った……」


 兄姉たちは、呆然と立ち尽くしました。


「……父上が欲しかったのは、『掻き(かき)』だったのか……」

「物理的なアクションの方でしたか……」

「言葉の定義が曖昧でしたわね……」


 全員がガックリと肩を落としました。

 しかし、シャルロッテは、木の枝(即席の孫の手)を得意げに掲げて言いました。


「でも、せっかくだから、みんなで『カキ・パーティー』をしようよ! 背中を掻きながら、柿と牡蠣を食べて、書類は……モフモフの枕にしよう!」


 その日の午後、王城の玉座の間では、背中をボリボリと掻いてもらいながら、フルーツと海産物を交互に食べるという、世にも奇妙な宴が開催されました。

 ちなみに、モフモフも背中を掻いてもらい、気持ちよさそうに「ミィ〜(極楽~)」と鳴いていたそうです。


 めでたしめでたし。

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