表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

542/593

第五百四十五話「定義の教室と、姫殿下の『言葉の積み木崩し』」

 その日の午後、王城の学習室では、王立学院から招かれた論理学者、ルートヴィヒ博士による特別講義が行われていた。

 博士は、黒板に「椅子」という文字を書き、厳格な顔でシャルロッテに向き直った。


「さて姫殿下。言葉には厳密な定義があります。この物体は『椅子』です。その定義は、『人が座るための、背もたれのある家具』です。それ以外の用途で使うことは、論理的な誤りであり、世界の秩序を乱す行為です」


 ルートヴィヒ博士は、世界を言葉で固定しようとしていた。彼にとって、辞書こそが法であり、物の意味はたった一つしかなかった。



 シャルロッテは、モフモフを抱き、その「椅子」の前に立った。

 彼女の目には、博士の言う「定義」が、窮屈な箱のように見えていた。


「ねえ、ルートヴィヒおじいさん。言葉って、そんなにカチコチなの?」


「もちろんです。定義が揺らげば、私たちは意思疎通ができなくなります」


 シャルロッテは、ニヤリと笑った。

 彼女は、椅子を横に倒した。

 そして、その背もたれの隙間に、モフモフを潜り込ませた。


「見て! これはもう『椅子』じゃないよ。モフモフの『トンネル』だよ!」


「なっ……! 形は椅子ですが……」


「でも、今は座ってないよ? くぐって遊んでいるんだから、これは『トンネル』っていう名前になるの!」


 シャルロッテは、「意味とは使用である」という哲学を、遊びの中で実践し始めた。



 彼女は次に、重厚な辞書を積み上げ、その上に板を渡した。

 博士は叫んだ。

「姫様! それは『本』です! 知識を蓄えるものです!」


 シャルロッテは、その板の上に、おやつのクッキーを並べた。

「ううん。今はね、これ、『お店屋さんのカウンター』だよ! いらっしゃいませ!」


 さらに、彼女は博士が持っていた長い指示棒を借り受け、それをまたに挟んで跨った。

「これはもう『指示棒』じゃないよ! 空飛ぶ『魔女のほうき』なのでーす! ビューン!」


 教室の中にある全ての物が、シャルロッテの遊び(ゲーム)が変わるたびに、次々と新しい名前と意味を獲得していった。

 椅子はトンネルになり、バリケードになり、電車になった。

 本はカウンターになり、ドミノになり、階段になった。



 ルートヴィヒ博士は、混乱の極みにあった。

「あわわ……。定義が……概念が崩壊していく……! 世界が、言葉の檻から逃げ出していく!」


 しかし、シャルロッテは楽しそうに、博士の手を引いた。


「おじいさん、怖くないよ。言葉はね、積み木みたいなものなの。崩しても、また新しい形に積めばいいんだよ」


 シャルロッテは、倒れた椅子(※今は電車ごっこの車両)に、博士を座らせた。

「さあ、乗って! 次は『冒険の旅』に出発進行だよ!」


 博士は、呆然としながらも、その「椅子だったもの」に座った。

 すると、不思議なことに、それはただの家具ではなく、ワクワクする乗り物のように感じられた。

 彼は悟った。物の意味を決めるのは、辞書ではなく、今、ここで、誰と、どう使うかという「文脈コンテクスト」なのだと。


「……なるほど。これが『言語ゲーム』……。定義は固定されたものではなく、遊びの中で流動するものなのですね」


 博士は、震える手でほうきを持ち、シャルロッテの真似をして空を指した。

「では、これは……『未来を指し示す羅針盤』と呼びましょうか」


 シャルロッテは、モフモフと一緒に拍手した。

「うん! その名前、すっごく可愛い!」


 その日の午後、学習室は、辞書の定義から解放された、自由で創造的な「言葉の遊び場」となった。

 シャルロッテの哲学は、堅苦しい言葉の世界を、「使う人の心が決める、自由なパズル」へと変えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ