表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

520/592

第五百二十三話「噴き出す蒸気と、姫殿下の『からくり仕掛けの神殿』」

 その日の午後、王城の庭園の東屋には、奇妙な銅製の装置が鎮座していた。


 それは、シャルロッテが王城の鍛冶師に特注で作らせた、ミニチュアの「神殿」のような形をした箱だった。神殿の前には、小さな祭壇があり、その横には水が入ったタンクと、複雑なパイプが繋がっている。


 マリアンネ王女が、その装置を興味深そうに観察していた。

「シャル。これは新しい魔導具かしら? 魔石の反応がないけれど」


 シャルロッテは、工学者のような顔つきで、祭壇の下に薪をくべた。

「ううん。これはね、魔法を使わないで動く『自動おもてなしマシン』だよ!」


 シャルロッテは、祭壇に火を点けた。

 メラメラと火が燃え上がる。しかし、神殿はすぐには反応しない。


 見守っていたオスカー執事が、首を傾げた。

「姫殿下。火を焚いただけでは、何も……」


 その時だった。


 シューーーーーッ!


 神殿の裏側から、白い湯気が勢いよく噴き出した。

 タンクの水が沸騰し、蒸気が発生したのだ。

 さらに、祭壇の下の空気が熱で膨張し、見えない力がパイプの中を駆け巡る。


 ギギッ、ガシャン!


 重々しい音と共に、神殿の「石の扉(に見える重い金属板)」が、誰の手も触れていないのに、厳かに、ゆっくりと開き始めた。


「な、なんと! 扉が勝手に!」

 オスカーが驚愕した。


 扉が開くと、中から、真鍮で作られた可愛らしい「機械仕掛けの人形(オートマタ)」が、カタカタとぎこちない動きで滑り出てきた。

 人形の手には、ティーポットが握られている。


 プシューッ!


 蒸気の圧力で、人形の腕が持ち上がる。

 そして、テーブルに置かれていたカップに、正確に(※ほんとはちょっとだけこぼれたが……)紅茶を注いだ。


「どうぞ、召し上がれ!」

 シャルロッテが得意げに言った。


 マリアンネは、目を輝かせて仕組みを見抜いた。

「すごいわ! 熱による空気の膨張で水を押し出し、その重みで滑車を回して扉を開け、さらに蒸気圧でピストンを動かして人形を操作しているのね! 魔力ゼロの、純粋物理演算装置だわ!」


 さらに、シャルロッテは装置の横にある「球体」を指差した。

 その球体からは、二本のノズルが互い違いに突き出している。蒸気がそこから噴き出すと、球体は「シュルルルル!」と高速で回転を始めた。


「これはね、『風のダンス』だよ!」


 回転する球体の上には、色とりどりのリボンが取り付けられており、回転に合わせて美しく舞い踊る。それは、蒸気機関の原初的な姿でありながら、見ているだけで楽しいキネティック・アートだった。


 シュウウウ……。

 辺り一面に、湯気と、機械油の匂いと、紅茶の香りが混ざり合った、不思議な空気が漂う。


 アルベルト王子もやってきて、その光景に目を丸くした。

「魔法を使えば一瞬で済むことを、あえて熱と蒸気と歯車で行う……。この『まどろっこしさ』こそが、逆に優雅であり、知的な遊びだな」


 シャルロッテは、蒸気で少し湿った前髪を払いながら笑った。


「えへへ。だって、魔法でパッて開くより、蒸気で『頑張って動いてます!』って音がするほうが、ワクワクして可愛いでしょう?」


 その日のティータイムは、シュッシュッポッポという蒸気の音と、カタカタ動く人形の給仕によって、かつてないほど賑やかで、少しスチームパンクな冒険の香りがするものとなった。


 魔法全盛のこの世界で、物理法則だけで動くその装置は、逆に「魔法よりも不思議な奇跡」として、皆の目を楽しませたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ