↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

470/724

第四百七十三話「地下の水晶洞窟と、姫殿下の『ぷるぷるスライム・ピクニック』」

 その日の午後、王家の避暑地の裏山で、ちょっとした冒険が始まろうとしていた。

 先日、庭師のハンスが偶然発見した「小さな洞窟」の調査に、シャルロッテと二人の兄が赴くことになったのだ。


 第二王子フリードリヒは、完全武装で剣を構え、鼻息も荒かった。


「シャル、俺の後ろを離れるなよ! 未開のダンジョンだ。どんな魔物が潜んでいるか分からん!」


 第一王子アルベルトは、カンテラと羊皮紙のマッピングセットを手に、知的な興奮を露わにしていた。


「地質学的なサンプル採取の好機だ。未知の鉱脈があるかもしれない」


 しかし、探検隊の隊長であるシャルロッテの装備は、麦わら帽子にリュックサック、そして水筒だけだった。

 彼女にとって、これは「攻略」ではなく「遠足」なのだ。


「出発進行ー! おー!」


 シャルロッテの掛け声と共に、一行は洞窟へと足を踏み入れた。


 中はひんやりとしていて、外の夏の暑さが嘘のようだった。

 少し進むと、壁面には自然に発光する「ヒカリゴケ」が群生しており、カンテラがいらないほど明るく、幻想的な青白い光に満ちていた。


「わあ……! 見て、モフモフ。星空が地面に落ちてきたみたい!」


 シャルロッテは、壁にへばりつく光る苔を、指先でそっと撫でた。

 彼女は、光属性と土属性の魔法を応用し、その苔を傷つけずに、岩のかけらごと綺麗に剥がし取った。


「これは、お部屋に飾る『生きたランプ』にするの。瓶に入れたら、きっと綺麗だよ」


 彼女はリュックからガラス瓶を取り出し、苔を丁寧に詰めていく。即席のテラリウム作りだ。


 さらに奥へ進むと、道がふさがっていた。

 そこには、半透明で、ゼリーのような質感を持つ、一匹の巨大なスライムが道を塞いで寝そべっていたのだ。


 フリードリヒが即座に剣を抜いた。


「魔物だ! シャル、下がっていろ! 俺が一刀両断に……」


「待って、兄様! 切っちゃダメ!」


 シャルロッテは兄の前に飛び出し、両手を広げた。

 そして、あろうことか、その巨大なスライムに向かって、ぽーんとダイブしたのだ。


 ボヨヨン!


 シャルロッテの体は、スライムの弾力で優しく受け止められ、トランポリンのように跳ね返された。


「きゃはは! すごい! これ、ひんやりしてて、すっごく気持ちいいベッドだよ!」


 このスライムは、攻撃性を持たないオヤスミスライムの一種だった。彼らはただ、湿った場所で昼寝をするのが好きなだけの、平和な生き物なのだ。

 モフモフも、シャルロッテに続いてダイブし、スライムの上でボヨンボヨンと跳ね回った。


 フリードリヒは、剣を振り上げたまま固まった。


「……魔物が、遊具になっているだと?」


 アルベルトは、興味深そうにスライムをツンツンとつついた。


「ふむ。この粘性は衝撃吸収材として極めて優秀だ。王城のクッション材に応用できるかもしれない」


 結局、三人と一匹は、スライムの上でしばらく休憩することになった。

 ひんやりとしたスライムの感触は、歩き疲れた足に最高のマッサージ効果をもたらした。シャルロッテは、スライムに「ありがとう、枕さん」と言って、持っていたクッキーをお裾分けした(スライムはそれをゆっくりと体内に取り込み、嬉しそうに震えた)。


 洞窟の最深部は、小さな地底湖になっていた。

 水は驚くほど澄んでいて、底に沈む水晶が、水面からの光を受けて虹色に輝いている。


「ここがゴールだね!」


 シャルロッテは、湖のほとりの平らな岩の上に、チェックのレジャーシートを広げた。

 魔物討伐でも、財宝の奪取でもない。

 今日の目的は、この神秘的な地底湖のほとりで、エマが作ってくれたサンドイッチを食べることだったのだ。


「兄様たち、座って! 洞窟ピクニックの始まりだよ!」


 フリードリヒは、剣を置き、鎧を緩めて座り込んだ。

「……まさか、ダンジョンで茶を飲むことになるとはな」

 そう言いながらも、彼は涼しい洞窟内で食べるサンドイッチの味に、満足そうな顔をした。


 アルベルトは、湖の地図を描きながら、サンドイッチを頬張った。

「この環境は素晴らしい。夏の間、ここを王家の避暑用ラウンジとして整備する計画を立てよう」


 シャルロッテは、水晶が光る水面を眺めながら、冷たい麦茶を飲んだ。


「ねえ、モフモフ。暗くて怖い場所も、こうやってご飯を食べれば、楽しい秘密基地になるんだね」


 帰る頃には、シャルロッテのリュックは、光る苔のテラリウムと、綺麗な石ころ、そして「冒険の思い出」でいっぱいになっていた。


 洞窟を出ると、夕暮れの空が広がっていた。

 シャルロッテは、大きく伸びをした。


「楽しかった! また、あのスライムさんのベッドに遊びに行こうね!」


 それは、剣も魔法も必要としない、ただ「世界を楽しむ心」だけがあれば攻略できる、最高に平和なダンジョン探検だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。