↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

430/724

第四百三十一話「強情な雨雲と、王女の『くすぐったい魔法』」

 ある晴れた日の午後のこと。王城の庭園の上空に、ひとつの大きな、真っ黒な雨雲が居座っていました。


 その雨雲は、パンパンに膨れ上がり、今にも泣き出しそうでしたが、意地っ張りなことに、一滴の雨も降らせようとはしませんでした。彼は「俺は誰にも邪魔されず、ここで威張っていたいのだ」と、太陽を隠し、庭園の花々を日陰に震えさせていました。


 そこへ、北から強い風がやってきました。風は、雨雲を邪魔者扱いし、乱暴に吹き飛ばそうとしました。


「おい、どけ! お前がいると、花たちが光を浴びられないではないか!」


 ビュービューと風が吹けば吹くほど、雨雲は「ふん、絶対に動くものか」と、さらに体を固くし、重く、黒くなって、その場に踏ん張りました。これはまるで、古い寓話にある「北風と太陽」のようないがみ合いでした。


 庭園のベンチで、シャルロッテはモフモフを抱き、空を見上げていました。

 彼女の目には、空の上の喧嘩が、ただの自然現象ではなく、二人の巨人の意地の張り合いに見えていました。


「ねえ、モフモフ。あの雲さん、お腹がいっぱいで苦しいのに、頑張って我慢比べをしているみたいだよ」


 シャルロッテは、雨雲が意地悪なのではなく、「泣くタイミング(=雨を降らせるきっかけ)を失って、引くに引けなくなっている」のだと気づきました。そして風は、「力ずくで解決しようとして、逆効果になっている」のです。


「力で押してもだめだよ。こういう時はね、笑わせてあげるのが一番なの」


 シャルロッテは、立ち上がりました。彼女は、この寓話に、新しい結末を書き加えることにしたのです。


 彼女は、風属性魔法と、光属性魔法を、ごく柔らかく融合させました。

 彼女が作ったのは、突風でも、熱線でもありません。それは、空まで届く、巨大な「猫じゃらし」のような、ふわふわとした魔力の羽毛でした。


「えいっ! 雲さん、こちょこちょの刑だよ!」


 シャルロッテが指を動かすと、見えない巨大な猫じゃらしが、空高く舞い上がり、強張っていた雨雲の脇腹(とおぼしき部分)を、優しく、くすぐり始めました。


 最初は、雨雲は無視を決め込んでいました。

 しかし、執拗で、愛らしいくすぐりに、彼の岩のような我慢は、次第に崩れていきました。

 ゴロゴロ……。

 空から、低い雷鳴が聞こえました。それは怒りの音ではなく、こらえきれない忍び笑いの音でした。


「こ、こら、やめろ……ふふ、くすぐったい……!」


 ついに、雨雲は我慢できなくなり、大きく身をよじりました。

 ドッ、ザザーーーッ!

 雨雲の緊張が解けた瞬間、彼が抱え込んでいた大量の水が、一気に、しかし優しく地上へと降り注ぎました。

 それは、暗く冷たい嵐の雨ではなく、太陽の光を浴びてキラキラと輝く、「天気雨」でした。


 雨雲は、体を軽くし、真っ白な軽い雲へと変わりました。そして、「ああ、すっきりした! 笑ったら、体が軽くなったぞ!」と言わんばかりに、風に乗って、軽やかにどこかへ流れていきました。

 後には、濡れて生き生きとした花々と、空にかかる大きな虹だけが残りました。


 庭師のハンスや、窓から見ていたアルベルト王子は、この不思議な天気雨に目を細めました。


「空が笑って、涙を流したようだ。なんと心地よい雨だろう」


 シャルロッテは、モフモフの頭にハンカチを乗せ、虹を見上げました。


「ね、モフモフ。意地っ張りな心もね、くすぐって笑わせてあげれば、綺麗な虹になるんだよ」


 こうして、王城の上空では、「力」でも「我慢」でもなく、「ユーモアと笑顔」が世界を動かすという、新しい寓話が語り継がれることになったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。