第四百二十九話「歓喜の白き道と、魂の友との『名前をつける遊び』」
その日の朝、世界はまるで、神様が特別に誂えた、真新しいリボンのように輝いていました。
窓を開けると、薔薇の塔の周りの空気は、ダイヤモンドの粉を溶かし込んだようにキラキラとしていて、吸い込むだけで、胸の奥がキュンとするような、甘酸っぱい予感に満ちていたのです。こんな朝に、ただベッドの中にいるなんて、想像力に対する罪だと思いませんか?
私は、一番お気に入りの、パフスリーブがふんわりと膨らんだモスグリーンのドレスに着替えました。この色は、森の妖精が舞踏会に行くときの色だと、私は密かに信じているのです。
モフモフを抱き上げると、彼は「ミィ」と鳴きました。
その声は、「さあ、冒険に出かけよう、この素晴らしい世界へ!」という合図に聞こえました。
私は、王城の裏手にある、古びたリンゴ並木の小道へ向かいました。そこには、今日、どうしても会わなければならない人が待っていたのです。
並木の入り口には、エリーゼお姉様が立っていました。彼女は、私の姿を認めると、朝露に濡れた野花のように、慎ましくも華やかに微笑みました。彼女こそ、私の「魂の友」であり、言葉を交わさなくても、同じ風の匂いに同じ感動を覚えることができる、かけがえのない存在なのです。
「おはよう、シャルロッテ様。今日は、世界中が祝福されているような朝ですね」
「おはよう、エリーゼお姉様! 本当にそう! 見て、このリンゴの木々を! まるで、純白のレースのドレスを着た花嫁さんが、何百人も並んで、私たちを手招きしているみたい!」
私たちは、手を取り合って、満開のリンゴ並木の下を歩き始めました。
頭上には、白い花びらがアーチを作り、隙間からこぼれる陽光が、地面に光の斑点を描いています。風が吹くたびに、甘い香りの雪が降り注ぎ、私たちの髪や肩を飾りました。
私は、この美しい道に、もっとふさわしい名前が必要だと感じました。「王城裏の並木道」なんて、あまりにも即物的で、想像の余地がない名前だとは思いませんか?
「ねえ、エリーゼお姉様。この道に、新しい名前をつけてあげましょうよ。この美しさにぴったりの、素敵な名前を!」
エリーゼお姉様は、少し考えてから、目を輝かせました。
「そうですわね……。『妖精の回廊』というのはいかがかしら?」
「素敵! でも、もっと、この白い輝きを表したいな……そうね、『歓喜の白き道』はどう?」
「『歓喜の白き道』! なんて素敵な響きでしょう! ええ、今日からここは、私たちの地図の中で、その名前で呼ばれるべきですわ!」
私たちは、その新しい名前に酔いしれながら、さらに奥へと進みました。
道の途中には、小さな小川が流れていました。水面は、朝の光を浴びて、何千もの宝石を散りばめたように煌めいています。
「見て、モフモフ。あの小川は、ただの水じゃないわ。あれはね、地面の下に眠るダイアモンドたちが、お日様に会いたくて、水の姿になって飛び出してきたのよ」
私は、そう想像しながら、光属性魔法をごく微量、指先から放ちました。それは何かを変えるためではなく、私の想像力に、現実がほんの少しだけ追いつくための魔法です。小川の水面が一瞬、虹色に揺らめき、エリーゼお姉様が息を飲みました。
「シャルロッテ様の世界では、すべてが物語を持っていますのね。私、あなたと一緒にいると、平凡な景色が、魔法の国のように見えてくるのです」
「それはね、エリーゼお姉様。私たちが、世界を愛しているからよ。愛しているものは、いつだって私たちに、一番美しい秘密の顔を見せてくれるもの」
私たちは、小川のほとりの大きな石の上に腰を下ろしました。その石にも、私たちは「沈黙の賢者」という名前をつけました。彼は、何百年もの間、ここで水の歌を聴きながら、静かに瞑想をしているのですから。
私たちはそこで、何も特別なことはしませんでした。ただ、流れる雲の形が何に見えるか(ドラゴンか、それとも巨大なシュークリームかマカロンか)を語り合い、風が運んでくる遠い森の匂いを胸いっぱいに吸い込みました。
何か問題を解決したわけでも、誰かを助けたわけでもありません。
ただ、この美しい世界に、私たちが存在しているということ。そして、その美しさを分かち合える「魂の友」が隣にいるということ。それだけで、胸がいっぱいになって、涙が出そうになるほど幸福でした。
「ねえ、シャルロッテ様。この瞬間を、永遠に小瓶に詰めておけたらいいのに」
「ふふ。でもね、消えてしまうからこそ、美しいのかもしれないわ。この『歓喜の白き道』の記憶は、私たちの心という宝石箱の中で、いつまでも輝き続けるわ。誰にも盗めない、私たちだけの宝物としてね」
私たちは、日が傾くまで、想像の翼を広げて遊びました。
帰り道、モフモフは私の腕の中でぐっすりと眠っていました。彼の寝息は、今日という日の完璧なエンディングテーマのようでした。
私は、王城の窓から私たちを見下ろしているであろう兄様たちのことを思いました。きっと彼らは、私たちがどんなに素晴らしい冒険――心の中での壮大な旅――をしてきたか、想像もつかないでしょう。
世界は、こんなにも美しく、愛すべき驚きに満ちている。
私は、胸の奥に灯った温かい光を抱きしめながら、薔薇の塔へと続く石段を、軽やかに登っていきました。明日もまた、新しい名前をつけるべき素敵なものが、私を待っているに違いないのですから。




