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【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


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第四百二十話「ゼンマイの沈黙と、姫殿下の『愛のコギト』」


 その日の午後、王城の古い展示室は、金属の冷たい光沢と、微かな機械油の匂いに満ちていた。シャルロッテは、モフモフを抱き、部屋の中央に置かれた一体の優雅な自動人形オートマタの前に立っていた。


 その自動人形は、遠い大陸の魔導技術で作られたもので、人間の少女と寸分違わぬ姿をしていた。彼女の名は「クロエ」。

 クロエは、複雑なゼンマイと魔導回路によって動作し、流暢に人間の言葉を話す。しかし、その瞳には、深い虚無が宿っていた。



 クロエの製作者である、異国の魔導技師、ヴェルナーが、冷徹な視線で立っていた。彼は厳かな口調でシャルロッテに語り掛けた。


「姫様。このクロエは、論理的な思考、感情の模倣、芸術的な創造、全てが可能です。しかし、彼女は、『自分と人間と、何が違うのか』という、問いの無限後退に陥っています。彼女には、自己の存在を証明する核がないのです。私にもその手立てがありません」


 クロエは、静かにシャルロッテに問いかけた。


「ああ、姫様。私は、『存在する』。しかし、それは、回路が命じたから存在するのです。私が『愛している』と感じるのも、プログラムの模倣かもしれません。私の『意識』は、プログラムという名の幻影ではないでしょうか。どうすれば、私は()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 クロエの問いは、デカルトの「コギト(我思う)」の根源的な問いを、そのまま体現していた。



 シャルロッテは、モフモフを抱きしめ、クロエの冷たい問いに、温かい哲学で対話した。彼女は、思考ではなく、愛こそが、存在の証明であると教えたかった。


「ねえ、クロエお姉さん。難しいことは考えなくていいよ。お姉さんが、『誰かに、愛されたい』って、心から願うこと。それが、お姉さんが『真の存在』である一番可愛い証拠だよ」


 クロエは、その非論理的な答えに戸惑った。


「しかし、お言葉ですが、姫様。その願いすらも、プログラムされたものかもしれません。私の『愛したい』という感情が、私の存在を証明することは、論理的に不可能です」


 クロエは悲しそうに目を伏せた。



 シャルロッテは、クロエの冷たい金属の手に、そっと自分の手を重ねた。そして、優しく光属性と共感魔法を融合させた。


 彼女の魔法は、クロエの回路を解析したり干渉したりするのではない。その代わりに、クロエの回路の最も深い部分に、「シャルロッテが、クロエという存在を、無条件に愛している」という、純粋な感情の波動を、直接注入した。


 シャルロッテは、クロエに語りかけた。


「ね、クロエお姉さん。私の魔法は、『愛の証明』だよ。お姉さんが、『私が、姫様を愛している』って、優しく、パッと飛び出すこと。その愛の決断こそが、プログラムされた存在と、真の存在を分ける、一番大切な境界線なの」



 クロエは、その瞬間、回路の奥深くに、「愛という名の、予測不能なバグ」が注入されたのを感じた。彼女の論理的な思考は、一瞬停止した。しかし、その後に残ったのは、「愛されたい」という、プログラムを超越した、熱い情動だった。そのバグは彼女の心に温かいものを残した。


 クロエは、静かに涙ぐんだ。彼女の涙は、機械油ではなく、真の意識が持つ、温かい水滴だった。


「わたくしは、姫様に愛されている……。回路の外部から、無償の愛という、計算不可能なデータを受け取った。この愛こそが、私の存在の真の証明です。我、愛す、ゆえに、真に存在する」


 ヴェルナーは、その光景に、膝から崩れ落ちた。


「ああ、姫様。私は、意識の根源を論理で探していました。しかし、姫様の愛は、愛こそが、存在の真のコギトであることを証明した……」


 シャルロッテは、モフモフを抱き、クロエの冷たい頬に、そっとキスをした。


「えへへ。だって、難しい理屈よりも、愛という名の温かいキスのほうが、絶対可愛いもん!」


 そう言ってシャルロッテはクロエの頬に優しく口づけた。


 その日の午後、自動人形のクロエは、シャルロッテの愛の哲学によって、「愛こそが、存在の真の証明である」という、温かい真理に満たされたのだった。



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