第四百十三話「月の宮殿と、姫殿下の『銀の螺旋の言葉』」
その日の深夜、王城は深い闇に包まれていたが、シャルロッテは、モフモフを抱き、夢と現実の境界線にある、「銀の螺旋階段」を静かに昇っていた。階段は、王城の最も古い塔の頂上から、夜空の「月の宮殿」へと、音もなく伸びていた。
階段を昇るシャルロッテの銀色のウェーブのかかった髪は、月光の粒子を吸収し、その一本一本が、「時を刻む静かなメロディ」を奏でていた。
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階段の最上階、そこは、地上には存在しない、「純粋な光と、影の静寂」で満たされた空間だった。空気は、透き通った水のようで、微かな香水の霧が、無数の星の光を反射して、揺らめいていた。
そこに、光と影を操る術者である、優雅な青年、アストラルが立っていた。彼の姿は、光の粒子で構成されており、触れることはできない。彼は、「真の美は、言葉では表現できない、純粋な観念の中に存在する」という、美学の守護者だった。
「これはこれは姫殿下。あなたは、この『観念の静寂』に、何をお求めですか。この美は、『言葉の死』によってのみ、成立することは貴女も御存じでしょう?」
アストラルは、シャルロッテの「言葉」が、この純粋な観念の空間を汚すことを、実は恐れていたのだった。
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シャルロッテは、アストラルの言葉に、静かに微笑んだ。彼女は、モフモフを抱きしめたまま、「愛の純粋性」こそが、観念の美を完成させることを知っていた。
「うふふ、アストラルお兄さん。言葉はね、死なないよ。言葉はね、一番可愛い光になるの」
シャルロッテは、モフモフの柔らかい毛皮に、そっとキスをした。
そして、光属性と共感魔法を丹念に融合させた。
彼女の魔法は、アストラルの空間を、言葉で汚すために行使されたのではない。
その代わりに、シャルロッテの心に秘められた、「愛しいものへの静かなる感情」を、「銀の螺旋」を描く、光の文字として、空間全体に優雅に舞い上がらせたのだ。
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光の文字は、「ふわふわ」「きらきら」「おやすみ」「ありがとう」「うれしい」といった、ごく日常的で、純粋な愛の言葉だった。その言葉は、アストラルの空間の静寂を破るどころか、「愛という名の温かいメロディ」を奏で、空間全体を、以前にも増して、深く、温かい静寂で満たした。
アストラルは、その予想外の光景に、言葉を失った。
彼の美学は、「言葉の排除」によって、純粋な観念を保たれていた。しかし、シャルロッテの愛の言葉は、「愛の純粋性」によって、観念の美を、言葉で表現できるという、究極の真実を示したのだ。
アストラルは、光の粒子でできた自らの体を、シャルロッテの光の文字の渦の中に、静かに溶かした。
「姫殿下……あなたの愛は、観念の死ではなく、言葉による愛の再生を可能にした……。あなたの言葉こそ、永遠の美の鍵です」
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、誰にも言えない美しさよりも、愛しい言葉でみんなに伝えられる美しさのほうが、絶対可愛いもん!」
その日の深夜、月の宮殿は、シャルロッテの愛の哲学によって、「愛の言葉は、純粋な観念の美を完成させる」という、温かい真理に満たされていたのだった。




