第四十一話「フリルとレースと、パステル色の夢のティーパーティー」
その日の薔薇の塔は、特別な祝祭ムードに包まれていた。シャルロッテは、今日を「パステル・フリル・デイ」と名付け、一日中、女の子の夢を叶えることに決めたのだ。
シャルロッテが選んだのは、これ以上ないほどフリルとレースがたっぷりと使われた、淡いライラック色のドレス。スカートの裾には、小さな真珠のビーズが縫い付けられ、動くたびにきらきらと光る。銀色の髪には、エマが特製のパステルピンクの大きなリボンを結んでくれた。
「わあ、可愛い~! エマ、わたし、今、世界で一番可愛いと思う!」
「もちろんですわ、シャル様。今日は、天使の休息日でございますね」
モフモフも、シャルロッテの足元で、新しい水色のサテンのリボンを首に巻いてもらい、嬉しそうに「ミィ」と鳴いている。
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午後のメインイベントは、テラスでの「パステル・夢色ティーパーティー」だ。
テーブルには、イザベラが選んでくれた、薔薇の模様が入った真っ白なレースのテーブルクロスが敷かれている。ティーセットは、母エレオノーラ王妃が贈ってくれた、縁が金色の、繊細なピンク色の陶器製だ。
そして、シャルロッテが一番こだわったのは、お菓子だ。
三段重ねのケーキスタンドには、マカロン(ラベンダー、ミントグリーン、ベビーピンクの三色)、苺のショートケーキ(クリームと苺が溢れんばかり)、そして金箔がきらきらと輝く小さなカスタードプリンが並んでいる。飲み物は、もちろん温かいホットチョコレートに、ふわふわのクリームとカラフルな小さな星の砂糖菓子をトッピングした。
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パーティーの招待客は、エマ、モフモフ、そして、シャルロッテのお気に入りのぬいぐるみコレクションたちだ。
シャルロッテは、ユニコーンのぬいぐるみにホットチョコレートを飲ませるフリをし、テディベアのぬいぐるみに「このショートケーキは美味しいよ!」と話しかける。
「ね、みんな。このホットチョコレートはね、恋の魔法が入ってるんだよ。飲むと、みーんな優しい気持ちになるの!」
そう言いながら、シャルロッテは、自分の虹色の魔力で、テーブルの周りにシャボン玉のような七色の光の玉をいくつも浮かび上がらせた。光の玉は、パステルカラーのお菓子を反射し、テラス全体を夢のように幻想的に照らした。
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その様子を、王妃エレオノーラが、静かに見守っていた。
「まあ、なんて愛らしいのでしょう。あの子の周りは、いつでも夢の世界になるわね」
彼女は、娘の少女趣味が、誰にも邪魔されず、プレッシャーなく満たされていることに、心からの安堵と喜びを感じていた。
シャルロッテは、お気に入りのパステル色のマカロンを手に取り、一口かじる。甘くて、ふわっとして、幸せな味が口いっぱいに広がる。
彼女の幸せの基準は、ただ一つ。
可愛いものに囲まれて、可愛いものを食べて、可愛い自分でいること。
「ああ、幸せ~!」
小さな幸せの絶頂を噛みしめながら、シャルロッテは、モフモフを優しく抱きしめた。モフモフも、喉をゴロゴロ鳴らして応える。
フリルとレースと、パステルカラーと、きらきらに満たされた、少女の夢がそのまま現実になった一日だった。




