第三百四十二話「失われた銀の匙と、シャルロッテの『愛の誠実さの報い』」
その日の午後、王城のテラスは、心地よい静寂に満ちていた。オスカー執事は、賓客への給仕のために磨き上げた銀の匙を、ふとした不注意から池のほとりの茂みに落としてしまった。
オスカー執事は、動揺した。
その匙は、王家が代々受け継いできたものではないが、彼の細心の注意を象徴する品だったからだ。彼は、誰にも言わず、茂みを必死に探していた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その池のほとりに座り込んだ。彼女の目には、池の底から、ごく小さな、「欲望の影」が、オスカーの心に近づいているのが見えていた。
「ねえ、オスカー。何を探しているの?」
オスカー執事は、苦渋の表情で答えた。
「おお、これは姫様。実は私の不注意で、大切な銀の匙を失くしました。しかし、ご心配なく。必ず見つけ出しますので」
その時、池の水面が揺らぎ、水の中から、奇妙な精霊が現れた。精霊は、オスカーの心の苦悩を試すように、二つの匙を差し出した。一つは、光輝く金の匙。もう一つは、宝石で飾られた銅の匙。
精霊は、厳かに問うた。
「そなたが失くしたのは、この金の匙か、それともこの銅の匙か?」
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オスカー執事は、一瞬、迷った。金の匙を選べば、失態を帳消しにできるだけでなく、王家への貢献にもなる。しかし、それは嘘だった。
オスカー執事は、厳格な姿勢で答えた。
「申し訳ございません。私が失くしたのは、そのどちらでもありません。私の匙は、ただの銀の匙でございます」
精霊は、満足げに笑った。その時、シャルロッテは、オスカーの誠実さに、光の魔法を込めた。
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シャルロッテは、精霊に向かって、にっこり微笑んだ。
「ね、精霊のお兄さん。オスカーが失くしたのは、ただの銀の匙だけど、オスカーが選んだ『正直な心』は、世界で一番強くて美しいよね?」
シャルロッテは、光属性と変化魔法を融合させた。
彼女の魔法は、池の水面を操作し、オスカーの「正直な心」を映し出した。水面に映ったオスカーの姿は、金の匙や銅の匙よりも遥かに強く、「愛と献身」という、揺るぎない光を放っていた。
精霊は、その光に心打たれ、金の匙と銅の匙、そしてオスカーが失くした銀の匙を、全てオスカーに贈った。
「そなたの誠実さは、王族に仕える者の真の誇りである。これらの褒美を受け取るがいい」
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オスカー執事は、その出来事に深く感動した。彼が信じていた「厳格な規律」は、愛の心に裏打ちされた「正直さ」によって、最高の報いをもたらすことを知った。
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、嘘の金ピカよりも、正直な心のほうが、絶対可愛いもん!」
その日の午後、王城のテラスは、シャルロッテの愛の哲学によって、「愛の誠実さは、最高の富と誇りをもたらす」という、温かい真理に満たされたのだった。




